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ノオト宮脇氏×徳谷柿次郎氏×はてな – はてなオウンドメディアマーケティングセミナー座談会レポート

2017年10月5日に「はてなオウンドメディアマーケティングセミナー」を開催しました。コンテンツメーカー 有限会社ノオト 代表取締役 宮脇淳氏と、株式会社Huuuu 代表取締役 / どこでも地元メディア「ジモコロ」編集長 徳谷柿次郎氏をゲストにお迎えし、おふたりによる「オウンドメディアのコンテンツ制作」に関するお話のほか、来場者から事前に寄せられた質問をテーマにした座談会を実施しました。

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本レポートでは、ノオト宮脇氏・Huuuu徳谷氏に加え、はてな編集部で企業のオウンドメディアのコンテンツ制作を担当する 初瀬川裕介が参加した座談会の模様をお届けします。座談会のモデレートとレポートは、株式会社ツドイの今井雄紀氏です。

イベント告知

business.hatenastaff.com

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座談会レポート

参加者

  • コンテンツメーカー 有限会社ノオト 代表取締役 宮脇淳氏
  • 株式会社Huuuu 代表取締役 / どこでも地元メディア「ジモコロ]」編集長 徳谷柿次郎氏
  • 株式会社はてな サービス・システム開発本部 編集 初瀬川裕介
  • モデレーター:株式会社ツドイ 代表取締役 今井雄紀氏

「1記事X万円も出しているのに、全然良い記事が上がってこない!」良いライター/良い編集者はどこにいる?

今井 座談会では、イベント応募時にご記入いただいた質問の中からテーマを選んでお話いただきます。アンケートによると、本日お集りの方のほとんどが「オウンドメディアの担当者」とのことです。
いろいろなご質問がありますが、まずは1つ目。「良いライター/良い編集者の見つけ方は?」というもの。「1記事X万円も出しているのに、全然良い記事が上がってこない!結局私が書き直しています。」という印象的なコメントが寄せられています。これ、いろんな問題を内包する質問だなと思うのですが、いかがですか?


宮脇 この方のおっしゃる「良いライター/良い編集者」の定義によると思います。名前や顔を公表していて、ヒット記事を連発しているようなライターさんは、ネットで探せば見つかります。一方で、裏方としてあまり前に出ていくようなことはしないけれども、正確で読みやすい記事を量産しているようなタイプの方の場合は、ちょっと検索したくらいでは簡単に見つからないと思います。

その場合は「見つける」という視点のほかに「育てる」ことが重要になるのではないでしょうか。「ライターを育てる」というのは、ちょっとおこがましいんですけど、特に駆け出しのライターとかは編集者がしっかり見て、何度もチャンス与えて、時に叱って、それでもやっぱりきちんと食らいついて、それで何年かしてようやく一人前になるというのがありますので。企業のオウンドメディアを担当されている方も、そういうことを継続してライター・編集者との関係性を作っていくことも大切です。そういうプロセスを経ないで、「良いライターさんがいない」とか「こいつはダメだ」と判断するのはあまりに失礼なんじゃないかなと思います。良いものを作るために、それだけの関係性を作るっていうのが、まず大事ですよね。


柿次郎 僕も、関係づくりはすごく大事だと思います。「良いライターを見つける」という話でいうと、最近僕がやってるのは、ライター経験はないけど面白い人・何かしらの専門性を持つ人に書いてもらうっていうパターン。「ジモコロ」みたいにメディアカラーがはっきりしていればそういうやり方もありなんです。例えばですが、経営者の方とかってとても文章上手ですよね。そういう、プロのライターじゃない方にお願いしてみるっていうのも、ひとつの方法としてはおもしろいと思ってます。これももちろん、関係性ありきですが。


初瀬川 はてなでコンテンツ制作を支援させていただいている企業様のオウンドメディアでは、プロのライターさんとお仕事するケースだけでなく、はてなブログや他のブログサービスのブロガーさんに、ライターとしてのお仕事をお願いすることが多々あります。お仕事をお願いするブロガーさんは、編集部が日々多くのブログを目視でチェックして見つけています。ブロガーさんにお願いする場合は、プロのライターさんと違って、クライアントとのお仕事に慣れていないこともあるので、そのブロガーさんの良さをしっかり活かしながら、メディアの方針や企画にきちんとフィットするように丁寧に丁寧にコミュニケーションしていくことを大事にしています。おふたりもおっしゃっていた通り、関係性づくりが非常に重要だと思います。

「声のかけ方」の流儀

今井 ちなみに、みなさんどこでスカウトされているんですか? Web上で見つけたらいきなりTwitterで話しかけたり、Facebookで申請したりされるんですか?


宮脇 ネット原稿の署名とかは必ず見てるので。良い原稿があれば、その署名の名前をもとにFacebookやTwitterをやっているかなどはチェックするようにしています。


柿次郎 ぼくも同じように、良い記事を書く方だなと思ったらTwitterとかをフォローして追っかけます。ただ、いきなり声をかけることはないですね。さきほど宮脇さんがおっしゃっていたように、その人も、誰かが手塩にかけて育てたライターだったりするので。

2017年 11月22日 15:01 はてな追記:
編集者・ライター不足に対する課題意識からHuuuu社がスタートした「パラレル親方」については以下

【親方増量】ライター編集者に教育の機会を増やす!弟子をシェアして育て合う「パラレル親方」 - Huuuuの柿次郎ブログ


宮脇 たしかに、筋を通すのは大事ですね。あと私の場合は、「#ライター交流会(@writers_meetup)」というのを全国でやってまして。地方に良いライターさん、いっぱいいるんですよ。特に今は、関西勢の勢いがすごい。そうした場で出会う機会はとても多いです。

初瀬川 我々も、ソーシャルメディアはもちろん、はてなブックマークでの新着を見て、人気の出そうな記事の執筆者の方はチェックしたりしています。あとは、寄稿いただくブロガーさんに関しては、編集部総出で大量のブログをチェックして、企画やメディアにあうブロガーさんを常に探しています。

ゼロから始める場合のやり方

宮脇 出会う方法はいろいろあると思うんですよね。最初にも申し上げた通り、どんなライターさんを求めているのかによりますが、そうした理想のライターさんに出会えるかっていうのはアンテナ張ってるかどうかと、実際につながろうとするかじゃないでしょうか。


柿次郎 あと僕はけっこう「書きたいです」と言われるのを待ちますね。「ジモコロ」だったら書きたい、もしくは「柿次郎さんとなんかやりたい」ってことを言われるまで待つし、その日に備えて自分も強くいるというか。その方が結果的にモチベーションが長続きする印象があります。


今井 それはある程度メディアが回りはじめてからの戦略という気もするのですが、全くのゼロから始める場合は、どうやってチームをつくれば良いと思いますか?


宮脇 それはもう、編プロに相談するのが早いでしょうね(笑)。メディアというのはリソースがないと始まりませんし。編集プロダクションやコンテンツ制作ができる会社に頼むか、社内に編集者を雇うか、ですね。ちゃんとやるんだったら、「編集者を2~3人、入れてください」と経営者に言った方が良いと思います。

上司と戦ってくれる担当者はすばらしい

今井 こういう質問もいくつかありました。「どんな担当者が好きですか?」。クライアント・編集者・ライターなど、いろんな担当者がいると思いますが、いかがでしょうか。


柿次郎 書き手としてどんな担当者が好きかと言えば、まぁ、やっぱ1番は熱量というか、こんなふうにこんなメディアを育てたくて、こんなコンテンツを作ってほしいって具体的に絵が浮かんでる人ですね。かつ、その実現に向けて惜しみなく協力してくれる人。例えば、はてなの編集さんみたいな人ですかね?(媚びた目で)

僕は、はてなさんがコンテンツ制作をお手伝いしている「それどこ」や「Yorimichi AIRDO」などでお仕事いただくこともあるんですけど、例えば旭山動物園の記事なんかは、本当にすごく丁寧に見てくれてありがたかったです。

yorimichi.airdo.jp

「これ書いたらもっと良くなるんじゃないですか」とか、「画像こういう風にやったらどうですか」とか。そこの労力を惜しまない感じで接してくれるとこっちも頑張ろうという気になりますし。僕もそこまでオウンドメディアの寄稿ってやってませんけど、ここまでしっかりやってくれる編集者は、そう数が多くない気がします。


宮脇 書き手からすると、そういう担当者はすばらしい。私はどちらかというと、編集ができないのでお願いできますかと言っていただくことが多いのですが、その場合、やっぱり好きになっちゃう担当者は……上司と戦ってくれる人ですね。


一同 あぁ~。


宮脇 オウンドメディアっていうのは、短期的な売り上げをつくるをのが目的ではなく、ブランディングの側面が強いですよね。なので、なぜこれをやるのか、どういう効果を3年後にもたらすのか、目に見える儲けや成果が出るまでに時間がかかる施策だからこそ、そういう長期的な目線で上司と戦ってくれる人は良いですね。


今井 アンケートによると、今日ご参加いただいている方の多くが、すでにオウンドメディアに取り組まれている企業のご担当者です。その立場から、編集者に発注する際に、気を付けておくと良いポイントなどはありますか?


宮脇 メディアを作っていくプロセスで、ブレない軸をしっかり持ち、こんな風にしたいっていうイメージを伝えていただけるとありがたいですね。すでにあるメディアや記事を共有いただくだけで、だいぶ認識が揃ってくるところがあるので、企画案も考えやすくなります。


柿次郎 予算を作るスキルですね。「ジモコロ」がそうなんですけど、ある程度裁量権とか決定権を持ってる担当者がしっかりいて、こちらは作ることに集中するだけっていう。ここはすごく大事で、予算が少ないと、ライターさんのギャラが減るんです。そうすると、多少の負い目みたいなものがあって、クオリティに多少の不満があってもそれを言えないんですよ。でも、潤沢な予算があると、「もっとやってよ!」と言える。関係性がないライターさんにお願いする時にも「ギャラが良いからやりませんか」は有効ですし。だからわかりやすく予算というのはエネルギーになると思ってます。


初瀬川 コンテンツの制作に関しては、当社を信頼して一緒にコンテンツ作りに取り組める方ですと、成果に結びつきやすいという傾向はあります。コンテンツの品質を重視する際に、企業としての判断に迷われるケースもあると思います。例えば「これはアリ?ナシ?」のような基準も、安全に振ることももちろん重要ですが、我々もこれまでずっとインターネットコンテンツを見てきたノウハウにより「大丈夫」と判断した企画や記事を出しているので、信頼して一緒にチャレンジしたり、惜しまず社内調整をしてくださるような担当者さんに出会えると、とてもうれしい気持ちになります。

KPIは魔物?

今井 みなさんが担当されている各オウンドメディアの目標設定って、どんな風になっているのでしょうか?


柿次郎 僕、最初っからKPIって魔物だよって言うようにしてます。そのうえで、いまの現状これくらいなら達成できるだろうなっていう安全ラインを伝えて、土壌を作りつつめっちゃ良い記事をアップしていく感じですね。


今井 期待値調整をするってことですね。


宮脇 オウンドメディアというのは、オウンドメディアをやること自体が目的じゃなくて、ブランディングやユーザーとの接点づくりに結びつけていくものですよね。商品をより知ってもらいたいとか、あわよくば買ってもらいたい、サービスも知ってもらいたい、好きになってもらいたいっていうのがあると思います。オウンドメディアのKPIを考えたときには、やはり長期的なスパンでファンを増やすって方向しかないと思うんです。

一例を挙げると、「みんなのごはん」っていう、ぐるなびさんのオウンドメディアで、うちの社員ライターが「ミックスナッツのかさまし疑惑っていう記事を書いたんです。

r.gnavi.co.jp

いろんなミックスナッツをいっぱい買ってきて、いちいちその内訳の数を数えてメーカーによる分量の比率の違いを探っているんですよ。さらにアメ横でナッツ売ってるおじさんとかにも取材して、まさに豆知識を散りばめた良い記事に仕上がりました。記事についた、はてなブックマークのコメントもめちゃくちゃよかったんですよ。「良記事だ」とか「ためになった」だとか、そういうポジティブな反応をしてくれていて。「これ凄い良い記事だから、もう1回読み直したいな」とかそういう良い気持ちにさせるっていうのは、オウンドメディアのコンテンツでファンになってもらうには絶対に必要なことですよね。PVみたいな数字的なKPIのほかに、例えば良いコメントしてもらえるようにしましょうというのも大事だと思います。


今井 ソーシャルで拡散されても、半分がネガティブなコメントなんてこと、ザラにありますもんね。ただ、オウンドメディアの担当者の人は、上司に数値を報告しないといけないことも多いと思うんです。そういうのがスムーズに進むよう、やってる事ってありますか?


柿次郎 あります。たとえば「ジモコロ」だと、定例会に向けて良いコメントを常にキャプチャして貯めといて、こんな感じでしたよって見せるとか。あとは、取材した内容が、テレビで取り上げられるという事例もすごく増えてきているので。そういう拡がりとか、制作会社さんからの注目が高まっていることとか、そういうのもきちんとアイデムさんにはお伝えするようにしています。

一方で、数字的なところって意味でも、ちゃんとKPIは見ています。しっかり話題になるような記事定期的に作る気概は絶対大事なので。

参考記事:
www.e-aidem.com


宮脇 オウンドメディアの副次的な効果はいくつもあると思ってます。例えば、採用ですよね。転職希望者や新卒の大学生なら、その会社のオウンドメディアをチェックしますよね。その上で面接を受けてくれるかどうかで本気度が分かるし、初めからわかった状態で入社するわけだからすごい力になる。あとは、オウンドメディアを通じて社員が自社の事業を知るきっかけになること、どんな人がどんな思いで仕事に取り組んでいるのか、自らのメディアでリーチできるメリットは大きいと思います。担当部署以外が把握しているオウンドメディアの反響や効果を、ちゃんとキャッチアップできるようにしておくというのも大事ですよね。


今井 広告費だけじゃなくて人事広報費とか、社内広報費っていうのを一緒にしてオウンドメディアに使うということもできそうですね。


初瀬川 KPIはさまざまですが、我々の場合、やはり「はてなブックマーク数」を求められることは多いです。もちろん、我々がそれを得意としているからというのはあります。

とはいえ、ただブックマークを獲得できればいい、というわけではなく、ポジティブな反応をきちんと引き出すというのは大事にしています。ブックマークは拡散の起点にもなるので、良質なコンテンツを作り、読者さんからいい反応が引き出せれば、定性、定量の両面でKPIに貢献すると思っています。

「オウンドメディア」のこれから

今井 じゃぁ最後ですね、「これからのオウンドメディア」っていうのを聞いてみたいのですが。


柿次郎 適正な予算と社内で孤立しない環境はベースとしてあって、そのうえで、記事が当たってちやほやされるみたいな経験がないとダメだと思うんです。

ちやほやされるっていうのは、社内で「あの記事良かったよ!」とか「面白かった」とか、外からも、友達とか家族が「あの記事良かったやん」みたいな。立ち上げたメディアで、そういう経験をいかに早くつくるか。そういう意味でも編集者は絶対必要です。企画が大事になってきますから。

でも、そこをわかってちゃんとお金も手間もかけているメディアってほとんどないですよね。これからのことを考えると、企業メディアはいっそ「オウンド」って言葉を取ってしまえばいいと思うこともありますね。広義的な「メディア」だという覚悟が宿りそうじゃないですか。。自社の情報だけじゃなくて、もっと普通のメディアとして、イチから文化を作るような気概のある会社が増えるといいですよね。


宮脇 なるほど。ただ将来、「オウンド」を外していけばいいかというと、ちょっと違うと思う部分もあり……。メディアへの広告出稿で商品は買ってもらえるかもしれないけど、その会社のファンになってもらうことは難しいですよね。そういう一過性のモノでない、持続可能なリレーションを考えて、企業はいま「オウンド」という選択をしていると思うんですよね。

たとえば、ノオトはコワーキングスペースを運営してまして、さらに1年ちょい前からコワーキングスナックも経営していますが、これらは店ではなくメディアだと位置づけているんですね。

contentz.jp
snack.contentz.jp

ライターや業界関係者が集まって、ノオトという会社を知ってもらいたい、さらに一緒に仕事したいと思ってもらえればいいな、と。そういう風に、いかに自社のファンをどう作るか、どうファンであり続けていただけるのかを考えると、オウンドメディアはその在り方を変えながら続いていくのではと思っています。


初瀬川 宮脇さんのおっしゃるように、ファンを作ることにオウンドメディアは非常に重要な役割を果たせると考えています。そのためには、どんなメディアであれば企業課題を解決できるのか。どんな企画・コンテンツで、ターゲットに何を伝えていくことが大事なのか。そういったローンチ前のプランニングをしっかりすることで、本来の目的である「事業課題を解決する手段としてのオウンドメディア」が始められる。はてなは、そのお手伝いができると思っています。そんな成功事例が増えていくといいですね。


今井 ありがとうございました。

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次回セミナーのお知らせ

はてなでは、2017年12月6日(水)に次回セミナーを予定しています。特別編と題し、通常より小規模な開催となります。詳細は、告知ページよりご覧ください。
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はてなのコンテンツマーケティングサービス

www.hatena.ne.jp
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