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オウンドメディア運用でありがちな"やりづらさ"の解消法

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この記事では、オウンドメディアの運用に課題を感じている方向けに、「ガイドラインの整備」「サイトリニューアル」という2種類の課題解決の方法をご紹介します。

オウンドメディアの運用には異なる領域の知識が複合的に求められるため、部署を横断した多人数型のプロジェクトになることが少なくありません。
そして多人数のプロジェクトであるがゆえに、期間の経過にしたがってメンバー間の連携やサイト管理に問題が出やすくなりがちです。

「目立ったトラブルはないけど、なんとなくやりづらい」という悩みは、オウンドメディアの運用体制上避けられないものともいえるでしょう。

こうした「やりづらさ」は、放置しておくとメディア運用全体のボトルネックになりかねません。
長期運用が成果に繋がるオウンドメディアという施策だからこそ特に、ボトルネックの種は早々に解決しましょう。


■ この記事の対象となる人
オウンドメディアを運用していて、メディアの運用に課題感を感じている運用担当者・編集長

■ この記事のポイント
  • ”やりづらさ”は気付きづらい。まずはタスクの振り返りをしよう
  • チームに起因する問題はガイドラインで解決できる
  • システムに起因する問題はサイトリニューアルによる解決も選択肢に



  • 目次

    オウンドメディア運用にまつわるタスクを整理

    実際の”やりづらさ”を考える前に、まずは日々のタスクを振り返ってみましょう。
    オウンドメディアに関する業務といえば、たとえば以下の項目などが一般的です。

  • 原稿チェック
  • 管理画面への入稿
  • 公開前稿後の記事確認
  • アクセス解析/検索順位ウォッチ
  • 記事管理・振り返り
  • KPI改善のためのフロントエンド系施策実行
  • プラグイン追加・外部ツール導入
  • 社内報告・経営陣への説明

  • こういった業務の中で、慣れてしまうと気づかないものの実はボトルネックになっていること、隠れた「やりづらさ」が潜んでいないか考えてみましょう。

    慣れてしまうと気づかない、運用にひそむ”やりづらさ”5例

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    【1】管理画面の機能不足

    SNSの投稿埋め込みや過去記事の引用といった機能がエディタに備わっていない場合、別画面で下準備を行う必要が出てきます。
    特に画像ファイルの一括アップロード機能を持たないエディタを使っていたりすると、1記事の更新にかかる作業時間は相当なものです。

    これらは長期化すると記事更新頻度が落ちたり、コアメンバーのリソースが取られることで他タスクへの滞りが見られたりします。

    【2】事前に記事確認を行うための環境がない、もしくは確認手順が複雑

    公開する記事の事前確認が行えるテスト環境が用意されていないと、誤字に気づかず公開してしまうなどのトラブルにつながります。
    サーバー構成の関係でメディアの更新頻度が決まっている場合、修正版を公開してから反映までにタイムラグが発生することもあります。

    テスト環境の用意がある場合も、例えば本番環境とデザインが異なってしまったり、プレビューURLでの回覧ができず都度キャプチャを撮る必要があると、作業時間を余計に取られることになります。

    【3】スキル・知識の属人化

    不明点が出たとき、特定のメンバーに質問が集中するような体制が続くのは好ましくありません。
    そのメンバーの休職や異動にあたってチーム内にドメイン知識が欠落するリスクもあります。

    加えて特定のメンバーしか行えない作業が増えれば、そのメンバーでタスクがスタックしてしまい、改善施策が素早く回せない要因にもなりえます。

    【4】外部ツールやプラグイン導入を含む、サイト改善施策の準備に時間がかかる

    新たなプラグインやツールを導入したい場合、依存関係の洗い出しや動作安定性の検証に時間がかかるケースも多いでしょう。
    ドメイン知識を持つ一部のエンジニアにしかシステムのアクセス権限がない、といった事情があると更に時間がかかります。
    ささいな変更で1週間、というのも珍しくないのではないでしょうか。

    【5】ステークホルダーへの数値報告業務に時間がかかる

    上長や関係部署へ行う、月次での数値報告に頭を悩ませる方は多いのではないでしょうか。
    売上貢献度がすぐには見えづらいオウンドメディアの特性上、心理的な負担も強くなりがちなポイントです。

    メディアの来訪者データの種類は実に幅広く、Google Analyticsの指標ひとつとっても膨大な数があります。すべてを網羅的に把握しておくことは難しいでしょう。

    数値や結果を適切に報告できることと、メディアの目的が達成されることは必ずしもイコールではありません。不必要にリソースを掛けすぎていないかは気をつけたいところです。

    運用ガイドラインのススメ

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    「知識・スキルの属人化」「手順の煩雑さ」「報告業務の負担」といったチーム内連携に起因するやりづらさへの解決策として、チーム内に運用ガイドラインを用意することをおすすめします。

    ここでいう運用ガイドラインとは、メディア運用にかかわるルール・考え方・作業フローなどを共有文書化したものを指します。

    明文化され、メンバー間によく浸透したガイドラインはチームの共通言語となり、属人化や作業時間・負担増を防ぐ助けとなります。
    また、事前に明文化しておくことでステークホルダーとの合意形成がしやすくなるという効果も期待できます。作成するのはやや手間ではあるものの、長期にわたって役立つツールとなることでしょう。

    以下では実際に作っておくとよい3つのガイドラインを紹介します。

  • 記事制作ガイドライン
  • システム運用ガイドライン
  • 成果測定ガイドライン
  • 記事制作ガイドライン

    入稿ルールやスタイル適用ルールなど、記事の体裁を規定したガイドラインです。これがあることで、サイトの見た目やマークアップが統一されます。

    特にマークアップの統一は、フロントエンド施策や全体のスタイル変更、スクリプト等による要素の一括置換などを行いたい場合に悩みどころを減らしてくれます。
    トラブルの起きがちなカテゴリの付け忘れや埋め込み要素のチェック等もここで定めておけるとより良いでしょう。

    システム運用ガイドライン

    プラグインやCMSのバージョン管理を適切に行うためのフローや体制を規定したガイドラインです。
    「新バージョンが公開されたらn営業日以内にバージョンアップのタスクを開始する」、といったルールを定めておくことで、アップデート漏れによるセキュリティインシデントやプラグインの利用トラブルを避けられます。
    既存のCMSやプラグインを最新の状態に維持できれば、新たなプラグインの追加や、外部ツールの導入時にも悩みどころが減るでしょう。

    成果測定ガイドライン

    成果に関する報告業務や計測する指標に関するガイドラインです。
    定期的に行う報告の中で扱う具体的な内容や体裁などを、ステークホルダーと合意を得た上で定めておくとよいでしょう。数値報告・計測に関する業務が特定メンバーに属人化してしまうことを避けられます。

    加えて、日常的にウォッチしておきたい指標はあらかじめダッシュボード化してしまいましょう。
    多くの指標はGoogle Analyticsから取得するケースが多いため、連携機能を備えているGoogleデータポータルなどを活用すると便利です。

    また、KPIの種類によってはデータの事前処理が必要になるケースもあります。この前処理の作業フローについてもガイドライン化することで、特定のメンバーしか数値を更新できなくなることを避けられます。

    ガイドラインには「読みやすく・アクセスしやすく・編集履歴が追える」という3点が 備わっていることが望ましいです。

    はてなでは、フォーマル寄りな文書は権限を指定できるGoogleDocs、 チーム内のガイドラインやフローはScrapboxという形で使い分けています。

    サイトリニューアルという選択肢もある

    f:id:hatenabusiness:20200608172648p:plain やりづらさを感じる内容のうち、ガイドラインの整備だけでは解決しづらいものもあります。サイト構造やシステムに起因するものです。

    例えばWordPressなら現バージョンのエディタの使いづらさ、管理コストや挙動安定性などの課題がよく挙がります。その他のCMSでは拡張性に課題があり、不足する機能を補完する手立てがないケースなども考えられます。

    軽微な改修を定常的に行うための自社リソースが足りない場合や、外部パートナーへの依頼が都度発生する場合も多く、複数回の個別対応よりも、一度立ち止まって全体整理を行った方がかえって効率的なこともあります。

    そんな場合に有効なのがサイトリニューアルです。コストや考えるべき点は瞬間的に大きくなる可能性もありますが、長期運用を見据えるならば検討してみるのも手です。

    参考まで、はてなのCMS「はてなブログMedia」を利用しているメディアのうち、
    およそ16%がサイトリニューアルを機に他CMSから乗り換えを行ったメディアでした。

    全体からみて過半数を越えるほどでないものの、システムに課題をもつメディアが10社に1社以上の確率というのは比較的多いようにも思えます。


    現行システムに対し課題を持つメディアは多く、その解決策としてサイトリニューアルに踏み切るケースも少なくないということでしょう。

    事例からみるリニューアルのメリット

    実際にはてなブログMediaを利用しているメディアで、サイトリニューアルを経て良好な効果が得られたケースを紹介します。

    ゴルフダイジェスト・オンライン「BRUDER」

    主にエディタを中心とした操作面のやりづらさが顕在化したことをきっかけにリニューアルを実行されました。

    移行に踏み切ったのはメディア立ち上げから2年ほど経過したタイミング。期待した通り、煩雑な入稿作業が大幅に効率化され、後回しにせざるを得なかったタスクに着手できるようになりました。

    business.hatenastaff.com

    更新頻度は大きく変わっていませんが、私が手を動かすことは本当に少なくなりました。
    編集の人と外部スタッフの方でほぼ完結するようになったことが非常に大きいですね。
    最近は一部の外部ライターさんにアカウントを発行して、下書きの状態で入稿してもらえるようにしたので、より効率が良くなりました。
    これまで時間がなくて後回しになっていたデザイン周りのことにも、手が回せるようになりましたね。

    ―"ユーザーを理解したコンテンツが強み、「BRUDER」のコンセプトと2度の移行の舞台裏" より

    リニューアルで失敗しないために用意したいこと

    実際にリニューアルを実行する場合、用意しておきたいことがあります。それは要件や作業内容に関する資料です。

    リニューアルを機に改善したいことというのは長期運営であればあるほど多く出てくるものなので、要望を無秩序に組み込んでいくと膨大な作業になってしまいます。さらに、進行の中で内容が大きく変動することも珍しくありません。
    スムーズなリニューアルを行うために、事前に社内外の関係者向けに資料を用意しておきましょう。例えばはてなでサイトリニューアルのプロジェクトを行うと仮定した場合、準備をする資料は以下のようなものです。

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    概要資料

    まずは「このリニューアルはなぜやるのか」「何をやるのか」を明確に定義しましょう。
    追加要件を検討する際にも迷わずここに立ち戻って考えることができます。ステークホルダーとの合意もここで得ておけば後で齟齬が起きません。

    加えて「どうなったら成功といえるのか」という点も定量的に決めておくとスムーズです。運用負担の軽減を考えるなら、担当者の作業時間の短縮を定量指標に置くとよいでしょう。
    サイトリニューアルは軽微な改修と比べると当然コストが大きくなりがちなため、要件定義とコスト算定を行う中でのフラットな意思決定に役立ちます。

    要件定義書・RFP

    具体的なシステム要件にかかわる設計資料です。
    外部パートナーへの依頼を行う際にはRFP(Request for Proposal。提案依頼書)という形で提示するのが一般的で、おおむね必須となる資料でしょう。
    社内で完結する場合でも、暗黙的に想定された仕様などを排除するために可能な限り作成しておくことをおすすめします。

    新旧CMSの機能比較表

    CMSの移行を伴うリニューアルの場合、まず現行CMSの機能を列挙し、何ができるようになるのか・できなくなるのかを表にして洗い出しておきましょう。
    オープンソースのCMSであればユーザーが項目をまとめてアウトプットしていることがあります。また外部の有償プロダクトを利用する場合、運営元企業が比較表を用意しているケースもあります。

    移行作業一覧・スケジュール

    特に用意しておくことをおすすめします。
    既に公開されているメディアから記事データやドメインを移行する作業は、ミスや入れ違いがあるとアクセス障害になることもあります。
    例えば「テスト環境での表記確認」といった大枠よりも更に細かい粒度で、どの端末で表示させてどの要素が揃っていればクリア、というように定めておくと安心です。
    想定される作業の洗い出しと役割分担、移行完了までのスケジュール(できれば移行作業当日は1時間単位)を決めておきましょう。

    最後に

    この記事では運用しているメディアで「やりづらさ」を感じている方向けに、「ガイドラインの整備」「サイトリニューアル」という課題解決の選択肢をご紹介しました。

    どちらの手法も動き出しには一定の負担はありますが、向こう数年のスパンで考えればやる価値は大いにあるものと思います。

    今回の内容がメディアの担当者・編集長として日々戦っている皆さんの助けになれば嬉しいです。


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