この記事では、WordPressでの運用に課題があり、CMSの移行を検討している方向けに、「CMS移行の7つのステップ」と「実際にWordPressから移行した方法」をお届けします。
■この記事の対象となる人
- オウンドメディアをWordPressで運用しており、現CMSへの課題が顕在化している担当者(編集長・情報システム担当)
■この記事のポイント
- CMS移行のタイミングを見極めよう
- CMS移行の7ステップの紹介
- 実際にWordPressからはてなブログMediaへ移行してみた
目次
CMSを移行すべきタイミングとは
現行のCMSで運用課題が顕在化していても、緊急性が高くない場合は、どのタイミングで移行するのが良いのか迷ってしまうこともあると思います。
課題が顕在化していることに加えて、「変更」が起こるときが移行すべきタイミングになります。
変更の具体例としては
- 運用に携わる担当者の変更がある
- 会社としての期が変わる
- サーバーやシステムの利用期限が迫っている
- 会社で取り決めているセキュリティレベルに変更がある
- 企業戦略の変更(社名やブランド名の変更など)
などがあげられます。
複数の項目が該当する場合は、移行の準備にとりかかるべきでしょう。
システム面をメンテナンスフリーにして、オウンドメディアで本来達成すべき目的にリソースを注げる状態にしましょう。
CMS移行の7ステップ
CMS移行の手順や検討すべき項目は要件によって異なりますが、「サイト全体のリニューアルに伴ってCMS移行をする」ことを想定した7ステップのご紹介です。
1〜3は事前準備、4は進行管理、5〜7は実作業になります。
- 概要資料
- 要件定義書・RFP
- 新旧CMSの機能比較表
- 移行作業一覧・スケジュール
- 既存コンテンツの棚卸し
- 移行作業
- 確認作業
1.概要資料
移行プロジェクトの全体像を可視化する「概要資料」を作成しましょう。プロジェクトにおいて「なぜ移行が必要なのか」「どのように進めるのか」「実際のタスクはなにか」「何を成功と定義するのか」を関係者全員が確認でき、共通認識をもって取り組むことに役立ちます。
2.要件定義書・RFP
概要資料をもとに、具体的なシステム要件にかかわる設計資料である要件定義書を作成しましょう。システムに求める機能やなぜその機能が必要なのかといった認識に齟齬があると、仕様の変更や仕様の追加が発生するため、プロジェクトの進行に影響します。
外部パートナーが関係する場合は、RFP(Request for Proposal:提案依頼書)を準備しておくと、最適な提案内容とパートナー選定に役立ちます。
3.新旧CMSの機能比較表
CMSの移行を伴うリニューアルの場合、まず現行CMSの機能を列挙し、何ができるようになるのか・できなくなるのかを表にしましょう。運用担当者目線でCMSに必須の機能とそうでないものの認識のすり合わせに役立ちます。
新CMSの候補が複数ある場合は社内稟議における判断材料にもなりますし、外部パートナーにCMS選定を依頼する場合の認識の齟齬を防ぐことができます。
4.移行作業一覧・スケジュール
サイトの規模によりますが、移行プロジェクトは一般的に複数部門や外部パートナーなどの多くのステークホルダーが関係します。そのため、想定される作業タスクと役割分担、移行完了までのスケジュールなどがまとまった資料は、プロジェクトの安全な進行管理には必須です。
以下は大規模サイトのリニューアル時に必要な作業項目一覧の例です。
黄色で色付けした部分がCMS移行に関わる箇所になります。
「こんなにやることがあるのか…」と思われるかもしれませんが、リニューアル完了までの道筋が決まっていれば、あとはひとつずつの作業の積み重ねです。一覧に沿って、関係者と協力して進めていきましょう。
★以下より実際の移行作業の洗い出しに便利な「CMS移行作業一覧シート」がダウンロードいただけます。是非ご活用ください。
5.既存コンテンツの棚卸し
移行作業のなかでメインとなる、既存コンテンツの棚卸しについて説明します。
まずはサイト全体から、以下のような必要項目を一覧化しましょう。
- ページ種別(個別記事、一覧ページ、LP)
- URL
- カテゴリ
- タグ
- 公開日
- PV数、CV数、被リンク数
次に、移行すべきページや不要なページの選定を行い、移行の優先度をつけていきます。これは移行後のチェック作業にも役立ちますので、実施しておくことをおすすめします。
最後に、移行すべきページのURL設計を行います。
SEOを考慮するとURLは変更しないほうが望ましい場合が多いです。システムを移行する上で、URLの変更が必要になるケースもありますので301リダイレクトで対応する必要があります。WordPressではリダイレクト関連のプラグインもあるため、.htaccessファイルを使わず、より簡単に301リダイレクトの設定をすることもできます。
参考:https://ja.wordpress.org/plugins/redirection/
旧ページURLと新ページURL対応表(=URLマッピング)も、この一覧をベースに作成します。
6.移行作業
棚卸しができたら移行を進めましょう。WordPressからはてなブログMediaへの移行を簡易的にまとめると以下のステップになります。
- WordPress管理画面から、WXR形式で記事エクスポート
- はてなブログMediaのインポート機能で記事と画像データをインポート
- ドメインの向きを変える
実際は、3行で終わるほど簡単ではありません。
メディアの規模が大きい場合は、事前にテスト移行をしてみることで、実際の移行計画に不備がないかを確認することができます。予実の差分がある場合は、本番移行までに対策を講じる必要があります。
エクスポートしたデータにエラーがありインポートがうまくいかないケースもあります。
その場合のエラーは、プラグインが原因であるケースが場合が多いため、XML検証ツールでチェックすることをおすすめします。また、エクスポート専用のプラグインを活用して、エクスポートデータをそのものを加工することも解決策の1つになります。
7.確認作業
実際に移行が終わったあとは、ツール活用や目視によって正しく移行が完了しているか確認しましょう。
OG:Image設定など、プラグインを用いて設定してた項目が移行前後でどのように設定されているのか、カテゴリーやタグの設定は意図通りになっているかなど、細かく見ていきます。
リンク切れは、ユーザビリティの低下やSEOにも影響がでてきますので、W3C LINK Checkerなどのリンクチェックツールを用て効率的に確認しましょう。
移行完了後の1-2ヶ月は、移行起因によって重要ページにマイナスな影響がでていないかを、Googleアナリティクスやサーチコンソールなどで定期的にチェックをすることをおすすめします。
実際にWordPressからはてなブログMediaへ移行してみた
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実際にWordPressからはてなブログMediaへCMSを移行する手順について、キャプチャも交えながら解説していきます。
どのような状態のWordPressを移行するのか
WordPressで運用されているメディアは、URL構造やプラグインの有無、記事数や固定ページの数など1つとして同じメディアはありません。
今回は、サブディレクトリ運用しており、人気のあるプラグインを8つ導入しているメディアをサンプルにしていきます。
URLマッピング
メディアURL:旧URL → 新URL(変更なし)
個別ページ :旧URL → 新URL(変更なし)
固定ページ :旧URL → 新URL(変更なし)
一覧ページ :旧URL → 新URL(変更あり)
はてなブログMediaのURLの設計ルールについて説明します。
はてなブログMediaでは、サブドメインでもサブディレクトリであってもメディアURLの引き継ぎが可能です。
メディアURL以外のURLに関しては、既存のURLをそのまま引き継げるページと301リダイレクトが必要になるページにわかれるため、上記のURLマッピングとします。
※一覧ページに関しては、はてなブログMedia独自のURL構造となるため、引き継ぐことができません。詳細なURL設計ルールに関しては、以下参照ください。
詳細なURL設計ルールに関しては、以下参照ください。
はてなブログのページ構成
利用しているプラグイン8つ
WordPressでメディア運用をする上で、人気のあるプラグインを設定しました。
- 1.All in One SEO Pack
- はてなブログMediaの管理画面からメタ要素やOGP設定が可能です
- 2.WP Social Bookmarking Light
- はてなブログMediaの管理画面から標準提供のSNSボタンの設定や、カスタマイズ設置も可能です
- 3.WP Super Cache
- はてな側で適切なキャッシュ設定がされています
- 4.EWWW Image Optimizer
- 画像の最適化もはてな側で設定されています
- 5.TinyMCE Advanced
- 管理画面に、編集サイドバー や入力補助ツールバーが標準実装されています
- 6.Akismet
- はてなブログMediaの管理画面から、コメントの管理も設定できます
- 7.Contact Form 7
- はてなブログMediaでは標準実装はありません。ただし、フォームの実装はgoogleフォームなど外部JavaScriptを埋め込むことで対応可能です
- 8.WordPress Popular Posts
- はてなブログMediaの管理画面から、関連記事、注目記事、最新記事のモジュールで簡単に設定ができます
実際に移行してみた
1.WordPress形式で記事エクスポート
まずは、WordPressの管理画面から記事や画像のデータをWXR形式でエクスポートします。
- WordPressの管理画面メニューの「ツール」から「エクスポート」を選択します。
- 「すべてのコンテンツ」にチェックが入っているのを確認し「エクスポートファイルをダウンロード」をクリックします。
2.はてなブログMediaのインポート機能
はてなブログMediaではインポート機能を備えているため、スムーズに記事移行が可能です。
CMSにインポート機能が備わってないと手作業での移行や、手作業が現実的ではない場合はインポート専用にプログラムを書く必要もでてきます。
では、インポートしていきましょう。容量にもよりますが、インポートは数分程度で完了します。
- 管理画面>「インポート」ページを開く
- インポートするブログデータの形式は「WordPress形式」を選択する
- 「ファイルを選択」ボタンを押し、WordPressでエクスポートしたWXR形式のファイルを選択して、「文字コード選択へ進む」をクリックする
- ブログデータがアップロードされ、ファイルの一部がプレビューされる
- 正しく表示されている文字コードを選択する
- 「インポート」をクリックし、インポートを実行する
記事のインポートを完了後に、画像移行をするボタンが表示されます。
クリックすると画像の引越しも簡単に行うことができます。
参考:移行に関する詳細ドキュメント
https://hatenablogmedia.zendesk.com/hc/ja/articles/360030921312
インポートが完了したら、実際に想定通りに移行ができているか管理画面で確認しましょう。
まずは目視で、タイトルや本文や画像、投稿日時などが想定通りかを確認しましょう。
その他、見ておくべきポイントとしては、
- カテゴリは想定通りか
- OG:Image設定は想定通りか
- description記述は想定通りか
というのも重要になります。
記事数が膨大になると全件のチェックは難しいので、重要な記事を中心に10-20記事ほど確かめることをおすすめします。
※WordPressの「タグ」「カテゴリー」は、はてなブログMediaではすべてカテゴリーに含まれます。
※カスタムフィールドを用いて設定した場合は、インポートがうまくいかないケースもあるため、データを再加工してインポートをし直すか、手動で入れる必要があります。
※もしインポートそのものがうまく行かない場合は、プラグインによる可能性があるためXML検証をしていただくことでインポートが成功するケースがあります。
3.公開時にURLの向きを変える
サイトのダウンタイムを発生させずに移行する方法になります。
本番URL、サーバー構成など構築環境によって、最適な手順は異なりますが過去事例をベースに説明していきます。
まずは、移行元と移行先の情報を的確に集約した上で、必要に応じた公開手順を作成しましょう。
次に、テスト環境で実際に疎通ができるかを事前に確認します。
事前テストなしでの移行は事故につながるケースがあるので必ずテスト環境を用意して進める必要があります。
- 公開前
- テスト用のドメイン/URL、プロキシテスト用ブログを用意【クライアント】
- プロキシテスト用ブログに対しテスト用のドメインの受け入れ設定【はてな】
- テスト用ドメインのリバースプロキシ設定【クライアント】
- テスト用ドメインの疎通確認【双方】
- 公開時
- 本番用ブログで、デザイン設定・記事入稿・各種設定など公開準備が全て完了【クライアント】
- 本番用ブログに対し本番URLの受け入れ設定【はてな】
- 本番URLのリバースプロキシ設定 = 公開【クライアント】
- ドメインの切り替え作業(DNS設定)【クライアント】
はてなブログMediaのリバースプロキシの設定手順の詳細は以下にまとまっています。
https://hatenablogmedia.zendesk.com/hc/ja/articles/360034265472
サブドメイン運用の場合は、あらかじめはてなの管理画面でドメインを設定して、AレコードやCNAME設定を変更することで、はてな側の作業は不要なため同期をとる必要がなく、クライアント側のみの作業で完結できます。
WordPressからの移行事例
実際に、WordPressからはてなブログMediaへ移行したメディアの一部をご紹介します。
株式会社ネイティブキャンプ様:ネイティブキャンプ英会話ブログ
株式会社エス・エム・エス様:「安心介護」の基礎知識
ピクシブ株式会社様:pixiv inside
freee株式会社様:経営ハッカー
- https://keiei.freee.co.jp/
- ※経営ハッカーは連携機能の兼ね合いから、現在は「はてなブログMedia」ではなく、別のCMSで運用されています。
freee様の「経営ハッカー」が移行された際の事例インタビューも紹介させてください。
__最初はWordPressで運営されていたと伺いました。4月から「はてなブログMedia」をお使いいただいているわけですが、切り替えたのはなぜでしょう。
人的リソースが一番の理由です。WordPressは社内で運用する分には費用があまりかからないのですが、アップデートが煩雑だったり、バージョンアップのたびに動かなくなるプラグインがあったりして、てんやわんやになりがちでした。お金ではなく、人的リソース面での運用コストが非常にかかっていたのです。これを何とかするために、はてなさんにお願いすることにしました。
最後に
弊社にいただくCMS相談の約20%が既存システムからの移行案件で、その割合は年々増加しているように感じます。
大規模サイトやレガシーなサイトの場合は、移行がスムーズに進むケースのほうが稀です。はてなブログMediaでは、少しでも移行のコストを減らせるように、機能面ではコンテンツのインポート・エクスポートをデフォルト装備しており、また新機能の開発も予定しています。また、サポート面でははてなの専任エキスパートが移行完了まで担当者様と伴走させていただきます。
移行が叶わなかったというケースはこれまで1例もありませんでした。
今回の内容が、より良いオウンドメディアを目指して日々戦っている皆さんの助けになれば嬉しいです。
はてなブログMediaについて
はてなが10年以上のサービス運営で培った技術力・ノウハウが詰まったオウンドメディア専用CMSです。
今回ご紹介したような、編集者・管理者が直面しがちなさまざまな課題を解決できます。
特別な作業は必要なく、かんたんに現在ご利用中のCMSから移行が可能です。
Movable Type(MT)とWordPress(WXR)のファイル形式については記事の一括インポート・エクスポートにもデフォルトで対応しています。
「サイトリニューアルをしたいけど、チェックリストにあるような準備は難しい...」という方はぜひ一度ご相談ください。
【事例付き】オウンドメディア設計シートをダウンロード
オウンドメディアの立ち上げ時や運用中の見直しに役立つ「オウンドメディア設計シート」を無料でダウンロードしていただけます。
設計シートを活用して企業課題やペルソナ、コンテンツの方針などを整理して成功するオウンドメディアを目指しましょう。
空欄のシートの他、はてなビジネスブログの事例も載っておりますので参考にしてください。
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