オウンドメディアに力を入れる企業が増えています。ここでは、オウンドメディアの定義、その位置づけ、メリットについて解説します。
オウンドメディアの定義は、自社で所有、管理しているメディア(媒体)です。自社で所有、管理しているメディアであれば、オンライン、オフライン問わず、オウンドメディアに含まれます。広義のオウンドメディアには、以下のようなものが含まれます。
オンラインのオウンドメディアの例
- 自社メディア
- コーポレートサイト、Webサイト
- ブログ
- メールマガジン
- スマホアプリ
オフラインのオウンドメディアの例
- 自社発行の月刊誌・季刊誌
- カタログ・パンフレット
- 自社主催のセミナー、イベント
上記を見れば、どの会社でもすでにオウンドメディアを持っているはずです。では、なぜ今オウンドメディアが注目されているのでしょうか?
それを理解するために、メディア分類のモデルである「PESO」について解説します。
PESO(ペソ)の一つのオウンドメディア
PESOとは、Paid Media(ペイドメディア)、Earned Media(アーンドメディア)、Shared Media(シェアードメディア)、それにOwned Media(オウンドメディア)の頭文字を合わせた言葉です。

出典:The Digitization of Research And Measurement In Public Relations
PESOを提唱したのは、当時グローバルなPR会社であるフライシュマン・ヒラードのリサーチャーだったドン・バーソロミュー氏です。PR活動を通して得られるマスメディアの露出と消費者の自主的なSNS発信をアーンドメディア一つにまとめるのではなく、分けて考えるべきという視点からこのモデルが発表されました。
オウンドメディア以外の3つについて見てみましょう。
ペイドメディア
外部のメディアなどに費用を支払って(pay)コンテンツを掲載するもので、広告が該当します。テレビ、新聞、雑誌などのいわゆるトラディショナルメディアの広告に加え、オンラインのバナー広告、ディスプレイ広告、検索連動型広告(リスティング広告)などが一例です。
アーンドメディア
Earnedは獲得されたという意味で、ここでは信頼、情報などを獲得することを意味しています。アーンドメディアでは、主にPR、広報などの活動を通して、費用を支払わずに企業や製品、サービスをマスメディアに取り上げられることを指しています。
シェアードメディア
シェアードメディアは、SNSなどで消費者によりシェアされるオンライン/オフラインの口コミを指します。レビューもシェアードメディアになりますし、はてなブックマークもシェアードメディアの一つです。
なお、メディアをペイドメディア、アーンドメディア、オウンドメディアの3つに分類する「トリプルメディア」のモデルもあります。トリプルメディアでは、シェアードメディアはアーンドメディアの一つに分類されます。
PESOのどのメディアも重要な顧客接点であり、どれか一つだけに注力するのではなく、それぞれの特性を踏まえて全体的なコミュニケーションを考えることが重要です。
オウンドメディアが注目される理由1:ユーザー行動の変化
従来、企業のメッセージを届けるためには、ペイドメディア、つまり広告が主要な手段でした。新聞・雑誌、テレビ、ラジオなどのマスメディアは視聴者、読者が多いため、大勢の人に情報を伝えるのに最適な手段です。しかし、近年ユーザーのメディア接触時間が大きく変化しており、この前提が変わりつつあります。
次の図は、2018年の情報通信メディアの利用時間の調査データです。10代、20代では、テレビのリアルタイム視聴の時間は、ネット行為の時間よりも少なくなっています。
また10代〜40代までの世代で、テレビのリアルタイム視聴行為者率よりもネット行為者率のほうが高くなっていることがわかります。特に若い世代のテレビ離れがうかがえ、情報の届け方の手段としてテレビは徐々に影響力が弱まっていることがうかがえます。
出典:平成30年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(PDF)
人々がオンラインの情報に長く接触するようになったことで、オウンドメディアの中でも特にオンラインのオウンドメディアでの情報発信が企業にとって大きなチャンスになっています。企業による一方的な宣伝では、人々の関心をつかむことは難しいですが、ターゲットとするユーザーに関心のある情報、価値のある情報を継続的にオウンドメディアで発信することで、ユーザーとのエンゲージメントを高めることができるのです。
オウンドメディアが注目される理由2:広告予算の最適化
ペイドメディアは、費用を支払うことが前提なので、広告を配信し続ける限り費用がかかります。テレビ、新聞などは、一度に多くの人に情報を届けられる分、1回あたりの広告費用は高額です。テレビCMは繰り返し放送することで、認知度を上げることに大きな効果がありますが、広告予算に大きな投資ができない企業にとっては、ハードルが高い施策です。
一方、オンラインの利用時間が長くなったことで、オンライン広告の存在感が増しています。オンライン広告は、マスメディアの広告に比べて格段に価格が安いですし、一度に大量の人に情報を届けるマスメディアの広告と異なり、ユーザーの行動や属性に応じてターゲティングできるなどの特徴があります。しかし、それでも継続的に広告を配信するには、費用がかさみます。
オウンドメディアの場合は、継続的にコンテンツを制作すれば、その情報がどんどん蓄積されていくので、自社でしっかりとコンテンツが書ける場合は費用をかけなくても、ユーザーの方から検索エンジン経由、SNS経由などで見に来てくれる可能性があります。しかも自社が発信するコンテンツに関心を持つユーザーを集められるため、取り組みを強化する企業が増えているのです。
オウンドメディアのメリット
オウンドメディアで、ユーザーにとって価値のあるコンテンツを配信することで、ユーザーの関心を高め、自社やブランドを認知してもらったり、好感を持ってもらうことができます。中長期的にコンテンツを通してユーザーとのエンゲージメントを高め、見込客を獲得する手法は、コンテンツマーケティングとも呼ばれています。
アメリカの調査・教育機関であるコンテンツマーケティングインスティテュートによる北米企業を対象とした調査レポートでは、過去12ヶ月でコンテンツマーケティングで達成したゴールについての次の調査データが紹介されています。
B2Bでは、次のような項目を達成したと回答がありました。
- ブランド認知向上 86%
- 読者の啓蒙 79%
- 信用、信頼の構築 75%
- リード、案件の創出 70%
- 購読者、聴衆、リードの育成 68%
- リアルイベントの参加促進 52%
- 売上、収益の創出 53%
- 購読者を増やす 45%
- 新製品のローンチの支援 45%
出典:2020 Content Marketing Benchmarks, Budgets, and Trends - North America (P.33)
B2Cの場合は、次のゴールが達成されたという回答がありました。
- ブランド認知向上 84%
- 読者の啓蒙 75%
- 信用、信頼の構築 65%
- リード、案件の創出 61%
- 既存顧客のロイヤリティ 55%
- 新製品のローンチの支援 51%
- 購読者、聴衆、リードの育成 49%
- 売上、収益の創出 48%
- 購読者を増やす 38%
- リアルイベントの参加促進 36%
出典:B2C Content Marketing 2020 - Benchmarks, Budgets and Trends (P.31)
オウンドメディアを活用したコンテンツマーケティングは、上記のような目的を達成できることがデータからわかります。
まとめ:オウンドメディアは中長期的な施策
オウンドメディアの定義、メリットについて、PESOを踏まえて解説しました。オウンドメディアは、短期的な施策ではなく、長期的に実施してコンテンツを蓄積していくことで、効果が発揮されます。
手軽に始めることもできる一方で、オウンドメディアを通したリード獲得、育成などを目的とする場合は、しっかりとした計画や予算の確保、体制の整備なども必要になります。オウンドメディアの目的は企業によってさまざまであり、その達成に必要なものもそれぞれ異なります。オウンドメディアを始める際のポイントは以下記事でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
【事例付き】オウンドメディア設計シートをダウンロード

オウンドメディアの立ち上げ時や運用中の見直しに役立つ「オウンドメディア設計シート」を無料でダウンロードしていただけます。
設計シートを活用して企業課題やペルソナ、コンテンツの方針などを整理して成功するオウンドメディアを目指しましょう。
空欄のシートの他、はてなビジネスブログと、弊社が運用協力をしている楽天株式会社のソレドコの例も載っておりますので参考にしてください。
はてなのオウンドメディア支援について
はてなでは、ブログサービスやメディア運営のノウハウを活かし多くの企業のオウンドメディア支援を行っております。オウンドメディアの計画から記事制作、システム、集客、分析まですべてをサポートいたします。
オウンドメディア立ち上げをお考えの担当者様や、運営中でお悩みを抱えている担当者様は是非一度ご相談ください。
株式会社 深谷歩事務所 代表取締役。 ソーシャルメディアやブロクを活用したコンテンツマーケティング支援を行う。Webメディア、雑誌の執筆に加え、オウンドメディア制作、運用支援も行う。
深谷歩事務所公式サイト