オウンドメディアの戦略策定において、頭を悩ませるのがKPIの設定です。
どのような指標をKPIにして運用・改善につなげていくのか。また、現在自社で設定しているKPIが妥当なものなのか、なかなか方針に自信が持てないことも多いと思います。
そこで本記事では、KPIの設定方法やポイント、設定事例を紹介します。
目次
KPIの理解にはKGIの理解も必須
まず、KPIについて解説する前に、KGIを理解しておきましょう。
KGIとは
KGIとは「Key Goal Indicator」の頭文字をとったものであり、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。KGIは、ビジネスの最終目標を指標化したもので、具体的な数値で表せるものとなります。例えば、
- オンラインショップの月の売上高を1,000万にする
- 営業の商談成約数を月20件にする
- メルマガ登録数を1万人にする
などです。ブランド認知度、購入意向など、数値化しにくいものであっても、定期的にアンケート調査などを実施して計測し、必ず数値で評価できるようにします。
達成する数値とともに、「いつまでに」という期限も定めておきます。KGIは、目標の最上位にあたるものなので、1つだけ設定します。
KGIは、ビジネスモデルやビジネスのステージ、経営計画などによって変わってきます。KGIは会社や部門の目標なども踏まえて、オウンドメディアが貢献できるものを設定します。
KPIとは
KPIは「Key Performance Indicator」の略称であり、日本語では「重要業績評価指標」となります。KPIは、KGIを達成するための中間指標にあたるもので、複数あってもかまいません。KPIの数値を上げれば、KGIの数値も上がるように関連性があることが重要です。
そこで、KGIがどういう要素から成り立っているか分解して、その数値からオウンドメディアのKPIを設定するとよいでしょう。オウンドメディアの場合、売上や商談数などのKGIに直接影響する数字が出しにくい傾向があるので、関連する数値を探して設定しましょう。
例えば、オンラインショップの売上がKGIであれば、売上を構成する要素を分解していきます。分解しててできた要素をさらに分解していくこともできます。この要素分解の図はKPIツリーと呼ばれます。
このように数値の要素を分解していくことで、自分たちの施策によって増加、減少できる数値が見つかります。
KPI設定方法
オウンドメディアの設定にあたって、KPIをどのように設定するか、具体的な方法やアイデアを紹介します。
KPI設定をする際のポイント
KPIは、以下の条件が満たされている指標を設定します。
1.KGIに影響する数値に設定する
前項でも述べたように、KPIはKGI達成のための中間目標である必要があります。KPIが改善すれば、KGIにも影響するような指標にします。
2.日単位、週単位など、短期間での計測ができ、すぐに結果を確認できるようにする
日単位、週単位、月単位など定期的にデータを取得できるものを設定します。ただし、他部署の人に依頼して数値を出してもらわないといけない、結果を確認するのに10日かかる、というものは避けてください。できれば、リアルタイムで数値を確認でき、自分たちで扱えるツールなどで計測するか、簡単に計算できるような仕組みを用意しておきましょう。
3.自分たちの施策が、直接的に影響する数値に設定する
KPIは、自分たちの施策で改善できることが重要です。自分たちの施策が、直接的に影響しない数値、しにくい数値は、KPIには設定しないでください(例:検索ボリューム、Androidからの閲覧者数など)。
KPI設定をする際に洗い出しておきたいこと
KPIを設定するには、まずはKGIをどのように分解できるかを様々な視点から洗い出してみる必要があります。
オウンドメディアのゴールやKGIによっても異なりますが、KPIツリーで分解してみて、現状の数値がどうなっているか検証してみましょう。なお、必ずしも計算式で表さないといけないわけではありません。
資料ダウンロード数=訪問者数× 資料ダウンロード率
KGI:人材採用数
採用応募者数=訪問者数×応募率
KGI:ブランド認知度数
閲覧数=訪問者数×一人あたりの閲覧数
最適な数値をKPIに選定するためには、過去のデータを分析して、それぞれ分解した指標が現状どんな数値になっているのかを明らかにします。その上で、足を引っ張っている数値、改善の見込みが大きい数値は対応すべき優先度が高いと判断します。優先度の高い数値のうち2~4個ほどをKPIに選定します。
しかし、オウンドメディアを開始した当初はデータがありません。その場合はこの数値を上げればKGIにも影響するという仮説をたててKPIを設定し、運用状況をみながらチューニングしていくことになります。
もちろん、KPIツリー、影響が大きいKPIの選定も、あくまで仮説です。KPIを改善したのに、結果につながらない場合は、仮説に誤りがある可能性があります。その場合は新たな仮説でKPIを設計し直します。
重要なのは、どういう仮説に基づいて、KPIを設定したかを明確にし、その過程をチーム内で共通認識として持つことです。これにより、なぜ今その数値を目標としているのか、が明確になり、方針がぶれません。
オウンドメディアの最終的なゴールからKPIを考える
KGIからKPIを設定する以外に、オウンドメディアを始めるときに決めた、オウンドメディアの目的からKPIを設定することもできます。その目的にそった運用ができているかを計測するためにもKPIは活用できます。
オウンドメディアの目的は企業によって異なりますが、その目的が達成できたかどうかを判断できるようなKPIを設定しましょう。
Contents Marketing Instituteの調査レポート「B2C Content Marketing Benchmarks, Budgets, and Trends: Insights for 2021」(pdf)によれば、B2Cのオウンドメディア運営企業では、次のようなゴールを達成しているとしています。
- ブランド認知度 81%
- ブランドの信頼性 76%
- 啓蒙 71%
- 既存顧客のロイヤリティ育成 70%
- 購読者の増加 55%
- 売上、収益 54%
- リード獲得 52%
これらを達成できたと判断するためには、成果が計測できる必要がありますし、その進捗を測るためのKPIも必要です。
ちなみに、同レポートでは、コンテンツマーケティングを実践する企業が計測している数値として、次のようなものが上げられています。
- Webサイトトラフィック(ページビュー、被リンク数) 87%
- ソーシャルメディア分析(滞在時間、閲覧数、シェア数) 81%
- Eメールエンゲージメント(開封、クリック、ダウンロード) 79%
- Webサイトエンゲージメント(滞在時間、直帰率、フォーム完了率) 79%
- コンバージョン率(購読者登録、リード獲得) 78%
- 検索ランキング 57%
- Eメール購読者数(成長、購読解除)56%
- リード、購読者、顧客獲得単価 40%
- PRのメンション数、メディア掲載 33%
KPIの数値を決める
KPIとする指標を決定したら、次はKPIの具体的な数値を決めます。どうなったら成功といえるのか、どこを目指して予算を投資するのかを判断するために、数値目標を決めましょう。
数値を決めるのには、まずは過去のデータでどのくらいで推移しているかを分析し、今期かけられるリソースから予測できる数値を計算します。
オウンドメディアの場合、理論上は記事の本数が増えるほどに、訪問者数、閲覧数は増えるはずです。(ただし、季節要因、競合の動向、関心度合い、広告の投資などによって、必ずしもそうとはいえないこともあります。)
目標をたてるときは、達成するのがやや難しいくらいの数値にするのがおすすめです。目標が簡単すぎると、成長の可能性を制限してしまうことになりかねませんし、目標が高すぎても、達成できずにモチベーションが下がってしまうからです。
オウンドメディアを始めたばかりの時は、数値の判断ができないので、まずはこれくらいとおおよその数値をたてて、運用状況を見ながら具体的な数値を設定していくようにしてください。
KPIの設定で失敗するパターン
目標設定が失敗しているがために目標が達成できないと、「成果が出ていない」と判断されることがあります。オウンドメディアは継続してこそ意味がある取り組みですが、成果が出ていないと継続そのものができなくなることがあります。
KPIの設定に失敗するパターンをいくつか紹介します。
期待値を過剰に大きくしてしまう/小さくしてしまう
目標数値の設定でも解説しましたが、目標が高すぎても低すぎても運営によい影響を与えません。達成するのがやや難しいくらいの数値を目標にしましょう。
目標値が現実とかけ離れていると感じれば、変更してもかまいません。変更する場合は、なぜ変更するのか、新しい目標値を何を根拠に決めたのかを記録して振り返りができるようにします。
リソースを無視した目標設定
予算や人員が増えないのに、「月20本記事を公開する」「検索広告で流入を500%増やす」など、無理な目標をたててしまうのも、現実に達成が困難でモチベーションが下がります。担当者の負荷が高くなりすぎても、継続が難しくなります。現実のリソースで達成可能な目標をたてるか、目標を達成するためにリソースを増やすようにします。
仮説のない目標設定
これまで説明してきたようなKPIの仮説設計なしに、目的があいまいなまま、これといった理由もなく、閲覧数や訪問者数を目標にしてしまうと、メンバーがなぜその目標を達成しないといけないのか、でしたり、成果に結びついていなかったりと、自分たちの活動の意味が見いだせなくなり、モチベーションが下がってしまうことがあります。 どういう仮説のもとKPIを選定したのか、チームメンバーで共有できるようにします。
KPI設定方法まとめ
さて、ここでKPIの設定方法の流れをまとめてみました。まずは、KGI、ゴールを明確にして、そのゴールを分解して関連する指標を見つけ出し、その指標のうち優先度の高いものをピックアップします。さらに選定した指標について、過去のデータや他社のデータなどから、具体的な目標値を決めていきます。
オウンドメディアのKPI設定事例
ここで、他社ではどんなKPIを設定しているのかを見てみましょう。過去の記事で、オウンドメディア運用事例を紹介するなかで、KPI設定について取り上げているものを紹介します。
オウンドメディアの成功事例11選。目的やKPI、運用体制を紹介 - はてなビジネスブログ
オウンドメディアの運用に成功している6企業について、公開データから運用方針や編集体制、集客方法などの情報をまとめています。KPI設定についても取り上げています。
【改善事例】オウンドメディア運用で悩みがちなポイント3選 - はてなビジネスブログ
さまざまなオウンドメディア運用の悩みのなかから「集客」「KPI」「理解促進」をテーマに、オウンドメディア担当者が取り組んでいる事例をまとめています。KPIについては、3社の情報を整理しています。
採用オウンドメディアの始め方について、はてなとCINRAでセミナー開催 - はてなビジネスブログ
はてなとCINRAが、2020年6月18日(木)に開催したオンラインセミナー「採用に効くオウンドメディア活用」のレポートです。ファンベース採用のためのオウンドメディアをテーマにしており、採用オウンドメディアのKPIの設定についても触れています。
KPI設定後の運用と見直しも重要
KPIを設定したら、どのくらいの周期で計測し、改善をするのかということについても決めてください。オウンドメディアの目的、設定したKPIによっても望ましい周期は異なりますが、オウンドメディアは短期的、即時的に見直しをするものではないので、週間または1ヶ月単位で見直すのがよいでしょう。
レポート化したままで終わってしまうこともよくありますが、目標に近づいていないなら何が原因なのか、どうすれば改善できるのか、これも仮説を持って次の施策に活かしていきます。
目標が達成できなくても、なぜ想定通りにいかないのか、その理由を考えることが重要です。達成できた場合でも成功した理由をみつけておきましょう。データを踏まえて仮説を検証する取り組みを繰り返すことで、仮説の精度が上がり、目標達成がしやすくなります。
KGIの効果測定
KGIはKPIよりも長期的な周期(四半期、半年、1年など)で評価するのが一般的です。KPIの達成に連動して、KGIも改善できているか検証してみましょう。KPIが達成できているのに、KGIに影響がない場合は、仮説が間違っている場合がありますので、こちらも今一度見直して、再度仮説設計からやり直すことになります。
まとめ:KPIはKGIと目的から仮説をもって設計しよう
オウンドメディアのKPIの考え方について解説しました。オウンドメディアを運用していると、定期的にアクセス解析をしているだけで、その数値を実際の運用に活かしきれないことがあります。漠然と数値を見るのではなく、なぜその数値を目標とする必要があるのか、達成することで何が起こるのか、ということに立ち返りながら検証していきましょう。また最初に決めたKPIに縛られすぎずに、結果数値を見ながら、実情に即したKPIに修正し、仮説の精度を上げていくという姿勢も重要です。
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