2022年10月27日、世界最大級のコンテンツマーケティングカンファレンス「Content Marketing World 2022」で語られた最新動向を共有するイベント「コンテンツマーケティングワールド2022 ミニ報告会 powered by Content Marketing Podcast」が開催されました。
はてなビジネスブログでは、印象的だったセッションを共有した株式会社JADE 代表取締役 伊東周晃氏(@noriaky)の発表「Bye, Bye Buyer's Journey」の一部をレポートします。
Content Marketing World とは
「Content Marketing World」は、毎年アメリカのクリーブランドで開催される世界最大級のコンテンツマーケティングカンファレンスです。コンテンツマーケティングに関する情報発信やイベント開催などに取り組む団体「Content Marketing Institute(CMI)」が主催しています。著名なマーケターや専門家による100以上のセッションを聞くため、世界中から数千名の参加者が集まる、注目のイベントです。
「Content Marketing World 2022」(9月13日-9月16日開催)
www.contentmarketingworld.com
Content Marketing Podcast とは
「ミニ報告会」を主催した「Content Marketing Podcast(CMP)」は、JADE伊東氏を含むコンテンツマーケティング好きの4人が、コンテンツマーケティングにまつわる様々なトピックをお届けするポッドキャストです。
open.spotify.com
セッションレポート「Bye, Bye Buyer's Journey」
伊東氏は、自身が注目しているというQlik社のDirector of Content Strategyを務めるAli Orlando Wert氏によるセッション「Bye, Bye Buyer's Journey: Five Frameworks to Create a Killer Content Strategy」を紹介しました。
schedule.contentmarketingworld.com
見込み客が製品やサービスを知り、購入に至るまでのプロセスは、以下のバイヤーズジャーニーやセールスファネルのように線形で表現されがちです。
しかしながら、本来バイヤーズジャーニーはとても複雑なものであり、一直線で表現されるようなものではありません。
Ali氏は、ファネルで考えることの問題点を以下のように説明しました。
- 線形のジャーニー(またはファネル)によって作られた戦略では、長期的なオーディエンス構築の視点が抜けがちになってしまう
- ファン構築の視点がない
- 購買プロセスにフォーカスしすぎる
- ペルソナの興味関心にあわないプロダクト訴求中心のコンテンツが作られる
- リード獲得の有無のみによった評価がなされ、エンゲージメント評価の視点がない
また、コンテンツにおいても、戦略性・フレームワーク・一貫性がなく行き当たりばったりなものが作成されてしまう問題を指摘しました。
こうした線形のジャーニーにとらわれない、オーディエンスを中心とした優れたコンテンツ戦略には「一貫性・つながり・再現性のある」ロードマップが必要になります。
ロードマップ策定のための5つのフレームワーク
Ali氏はそのようなロードマップ策定を可能にする、メッセージングのための「Storybrand」「Marketecture」、メッセージングとコンテンツプランをつなげる「Job to Be Done」、コンテンツプランのための「Audience Needs」「Content Playground」という5つのフレームワークを紹介しました。
Storybrand
ハイレベル(抽象性)にメッセージ戦略を考えるツールが「Storybrand」です。
映画や小説などにも用いられるヒーローズジャーニー理論(参考:小説を書くときに知っておきたい「ヒーローズジャーニー理論」とは | 自費出版の幻冬舎ルネッサンス - 自費出版の幻冬舎ルネッサンス)のビジネス版のようなもので、ドナルド・ミラー氏によって作られたフレームワークです。
以下のテンプレートに沿って整理していくことで、ブランドや製品、ペルソナレベルでのメッセージング戦略、コピーの策定に落とし込むことができます。
- A CHARACTER(主人公。ターゲットペルソナに相当。)
- HAS A PROGLEM(さまざまな課題や対立)
- AND MEETS A GUIDE(ガイド・メンター。企業が提供するサービスや製品に相当。)
- WHO GIVES THEM A PLAN(計画を与えるもの)
- AND CALL THEM ACTION(次のアクション)
- THAT ENDS IN A SCCESS(成功裏に終わること)
- THAT HELPS THEM AVOID FAILTURE(失敗回避を助けるもの)
- CHARACTER TRANSFORMATION(ストーリー前後での主人公の変化)
Marketecture
Storybrandよりも具体的なメッセージング構築を行うためのフレームワークです。
市場の課題(Why)を定義し、次に製品・サービスの特徴(How)を列記し、その二つからメッセージングを抽出するというシステマチックなアプローチです。
元となるフレームワークは Pragmatic Instituteが作成しています。
Job to Be Done
StorybrandとMarketectureのフレームワークによって行われたメッセージング構築と、コンテンツプランをつなげるものが「Job to Be Done(ジョブ理論)」のフレームワークです。
対象のPain Pointに機能的/感情的双方の側面から迫ることで、ペルソナを磨いていきます。
ジョブ理論では、ミルクシェイクの売上を伸ばすために調査を行ったところ、顧客は退屈しのぎのためにミルクシェイクを買っていたことがわかったというエピソードが有名です。
その製品やサービスが欲しいのは、製品の表面的な機能的価値ではなく、別の感情的な側面のニーズを満たすためであるという考え方で、マーケティングの「ドリルの穴」の話に近いものです。ミルクシェイクの味の改良やフレーバーを増やすことが売り上げに影響しなかったのは、こうした理由によるものと言えます。
Audience Needs
ここからはコンテンツプランのためのフレームワークです。
Ali氏が考案した、ペルソナにタイムリーで価値ある情報を届ける5タイプのコンテンツ分類です。
- Best Practices
- 成果の達成などに役立つ学習を支援するもの(例:ウェビナーなど)
- Enjoyment
- おろどきやよろこびを与えてくれるもの(例:マンガやビデオなど)
- Information
- 知りたかったことを教えてくれるもの(例:製品紹介ページなど)
- Answers
- 最善策を教えてくれるもの(例:ケーススタディーなど)
- Heps
- サービスや製品の活用を支援するもの(例:ユーザーグループなど)
上記のようなフレームワークは、線形のバイヤーズジャーニー(Awareness/Consideration/Decision)で考えるセールスサイドの担当者とは目線が合わないことがある、とAli氏は言います。
バイヤーズジャーニーをベースに作られたコンテンツ群を、Audience Needsのフレームワークに当てはめてリマッピングすることで、セールス担当者との認識合わせや合意形成に活用できます。
- リマッピングの効用
- ファネルベースで整理されたコンテンツをAudience Needsベースで再整理すると、抜けているもの、偏りが発見できる
- Enjoymentはアフィニティ形成に役立つが、それがないことで長期でのオーディエンス構築にはマイナス
- ファネルベースで整理されたコンテンツをAudience Needsベースで再整理すると、抜けているもの、偏りが発見できる
- 購買ステップのみではなく、Pre-funnel, Post-funnelにまで視点が及んでいることで、俯瞰的にコンテンツプランを見ることができる
Content Playground
Ali氏は、アトラシアン社(jiraの提供会社)のDirector of Integrated Product Marketing を務めるAshley Faus氏の記事を紹介し「バイヤーズジャーニーは、公園で遊ぶ子どもの様子」という考え方を共有しました。
「Content Playground」では以下の観点でコンテンツの深さを考えていきます。
- Conceptual
- 大きな課題、「What」や「Why」を考える。自社には紐づけない。
- Strategic
- 課題の解決を助ける考え方や枠組みを提供する。自社には紐づけない。
- Tactical
- より詳細な解決に向けてノウハウなどを提供する。
Audience NeedsとContent Playground(コンテンツの深さ)を軸にエディトリアルカレンダーを作成し、これを俯瞰しながらギャップや不足を意識してコンテンツ計画を策定、運用していきます。
Buyer’s journeyの使いどころ
Ali氏は5つのフレームワークの最後に「バイヤーズジャーニー」も活用できると言います。
線形のバイヤーズジャーニーは、CTA設計の目安に有効です。特定の購入プロセスにいる顧客の期待に合わせたCTA((トライアル・デモ)の設計に役立ちます。
また、セールスファネルはセールスサイドとの共通言語、認識合わせに有効です。過去のパフォーマンスがどうだったのかの把握にも活用できます。
さいごに
コンテンツワールド2022 ミニ報告会で語られたJADE伊東氏のセッションの一部をご紹介しました。他セッションを含む、本イベントのレポートは、株式会社クマベイスのメールマガジンや、株式会社JADEのブログでも紹介予定です。
はてなでは、本イベントの趣旨に賛同し、イベントのサポートをさせていただきました。引き続き、コンテンツマーケティングに関する役立つ情報を発信するセミナー、イベントの主催・協賛・参加に取り組んでまいります。
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