ブランディングや採用、見込み顧客の獲得などを目指しオウンドメディアの運用を検討中のWebマーケティング、採用、広報担当者の中には、情報収集段階で「オウンドメディア 意味ない」という言葉が目に留まったことがある方も多いかもしれません。
実際に、オウンドメディアを立ち上げてもなかなか効果が感じられず、短期間で運営を中断するケースも存在します。そのため、オウンドメディアの導入を検討している企業の中には、「オウンドメディアは本当に効果があるのか?」と不安を感じることもあるでしょう。
オウンドメディアの運用に直接携わらない経営陣や決済者側としても、どんな成果があるのか共有されなければ「意味のない施策」と判断するのは致し方ないとも言えます。
しかし、適切な運用ができれば、オウンドメディアは意味のある施策となります。
本記事では、オウンドメディアは「意味がない」となってしまう理由を掘り下げ、それを回避するためのポイントを詳しく解説。オウンドメディアの運営に対して抱く疑念を払拭し、前向きに運営を進められるヒントをお届けします。
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オウンドメディアとは
そもそもオウンドメディアとは、一般的に「企業が自社で保有するメディア(媒体)」のこと。特に近年では「ニュースやコラムのような記事を定期的に掲載するメディア」を指すことが主流です。
代表的な例として、自社の商品やサービスに関連したテーマでコラムやお役立ち情報などを発信するメディアやブログ、SNSのアカウントなどがあります。オウンドメディアの特徴は、自社の商品やサービス、または自社が大事にしている価値観などを第三者を介さずに直接ユーザーに届けられるという点。
ユーザー(消費者)が接触するメディアには他に「アーンドメディア」「ペイドメディア」がありますが、これらは企業が直接コントロールできなかったり、都度費用を払ったりする必要があるため、自社でコントロールできるかつ、継続的にユーザーと接点が持てるオウンドメディア運用は企業のマーケティング戦略において重要なポイントとなります。
オウンドメディアとは? の詳細は以下記事も合わせてご覧ください。
オウンドメディアは意味がない、と言われる理由
オウンドメディアは適切な運用を行うことで継続的なユーザーとの接点創出、リード獲得、中長期的には広告に依存しない体制構築が実現できるなどさまざまなメリットがあります。
では、なぜ「オウンドメディアは意味がない」と言われることがあるのでしょうか? その背景には、いくつかの共通した失敗ケースがあります。ここでは、いくつかの代表的な失敗例を紹介します。
1. オウンドメディアの目的やゴールが決まっていない
オウンドメディアを始める際に、最も重要なのはその目的やゴールを明確に設定することです。例えば、オウンドメディアを使って自社製品の認知度を高めたいのか、それとも顧客とのエンゲージメントを深めたいのか。これを決めずに運営を始めてしまうと、どの方向に進むべきかが不明確になり、結果として効果が見えづらくなります。
例として失敗しやすいケースでは、ただ単に「とりあえずブログを立ち上げたから更新する」「オウンドメディアを立ち上げている企業が増えているから、自社も始めよう」と、「オウンドメディアを始めること」自体が目的になってしまい、具体的な成果が見えないまま運営を続けてしまうことがあります。このようなケースでは、初めに明確な目標設定がなかったため、何をもって成功とするかが判断できず、結果的に「意味がない」と感じてしまうのです。
2. 短期的な成果を求めてしまっている
オウンドメディアは、広告のように即時的なリターンが期待できる施策ではありません。成功するためには、長期的な視点が必要です。
Content Marketing Institute(CMI)の創始者であるJoe Pulizzi氏は、成果を実感できる目安として18ヶ月以上、さらにグロースさせるには24ヶ月以上の継続的な運用を推奨しています。このことからも、短期的な売上向上を目指すことを前提としたオウンドメディアは、期待に応えにくいということが言えます。
この共通認識が担当者-経営陣間で持てないままオウンドメディア運営を行ってしまうと、短期間での直接的な売上向上(CV)が求められ、思うような結果が出ずに「効果がない」と結論付けられてしまうことがあります。オウンドメディア運用では、短期・中期・後期などフェーズ毎に沿った評価指標を持ち、関係者間で合意形成をしておくことが重要です。
参照:https://contentmarketinginstitute.com/articles/success-long-term-content-model/
例えば、1〜2ヶ月の運用で急激なアクセスやコンバージョンの増加を期待することは現実的ではありません。SEOがしっかりと施され、検索エンジンでの評価が安定してくるまでには時間がかかりますし、ユーザーとの信頼関係を築くためにも、継続的なコンテンツ提供が不可欠です。
さらに、リソース面でも失敗するケースが見られます。オウンドメディアの運営には、時間、費用、人的リソースが必要です。記事の執筆や編集、公開後のデータ分析など、単にコンテンツを作るだけでなく、その運用全体にわたる中長期的な運用を見据えたリソース配分が成功の鍵となります。もしこれらを想定したリソース確保ができていない場合、結果として短期的な結果が見込めず、「意味がない」と感じることが多くなるでしょう。
3. 運営体制が定まっていない
オウンドメディアを成功させるためには、適切な運営体制が重要です。しかし、多くの企業がこの点で失敗してしまいます。例えば、運営担当者が固定されていなかったり、社内での連携が不十分であったりすると、メディアの更新が途絶えてしまうことがよくあります。
特にオウンドメディアの運営が担当者の負担になるケースも多く、他の業務と兼任していると優先度が下がってしまうことがあります。その結果、メディアの更新が滞り、せっかくのコンテンツが見てもらえなくなるという事態に陥りがちです。
また、外部パートナーとのコミュニケーション不足も失敗の原因になります。例えば、コンテンツ制作を外部に依頼している場合、企業側のビジョンがうまく伝わらず、結果としてターゲットに響かないコンテンツが量産されることがあります。このような問題を回避するためには、運営体制をしっかり整え、社内外での連携を強化することが必要です。
オウンドメディア運営のポイント
オウンドメディアの運営で失敗しがちなポイントを理解した上で、どのように運営を進めれば成功に繋がるのでしょうか。ここでは、オウンドメディアを効果的に運営し、成果を上げるための具体的なポイントをいくつか紹介します。
1. 目的と目標を明確にする
まず、明確な目的と目標を設定することが不可欠です。例えば、認知度を上げることが目的ならば、立ち上げ直後の段階ではアクセス数やSNSでのシェア数などを主要なKPIに設定できます。一方、リード獲得が目的であれば、集客のためのコンテンツを発信しつつ、サイト内フォーム送信数やメルマガ登録数といったコンバージョン指標も中長期では重要になります。目的に応じたKPIを設定することで、運営の進捗を定量的に評価できるようになります。
また、オウンドメディア運用はマーケティングや採用計画全体の施策の一部として実施されることがほとんど。そのため、施策全体で達成したい目標のうち、オウンドメディアはどの部分を担うのか、最終的にオウンドメディア上で達成したいゴールに向けて、短期・中期・長期でどの指標を追うべきか、という点は計画段階で考えておくようにしましょう。
2. 長期的な視点を持つ
前述の通り、オウンドメディアは短期間での成果を求めるものではなく、長期的な視点で取り組むべき施策です。SEOの効果が現れるには時間がかかりますし、コンテンツの信頼性を高めるためにも、定期的で質の高い情報発信が必要です。
そのため、オウンドメディア運営を成功させるためには、運営スケジュールを長期的に見据えた計画を立てることが重要です。例えば、1年間でどのようなテーマの記事を発信していくのか、どの時期にどのコンテンツを重点的に公開するのかをあらかじめ計画しておくことで、運営のブレを防ぐことができます。さらに、定期的にコンテンツの見直しを行い、最新のトレンドやユーザーのニーズに合わせた改善を加えていくことで、常に価値のあるメディア運営を維持できます。
3. 適切な運営体制を整える
オウンドメディアを安定的に運営するためには、適切な運営体制の構築が必要です。特に、記事の企画から執筆、編集、公開、そしてデータ分析までの一連のフローをスムーズに回すためには、社内外のリソースをうまく活用することが鍵となります。
例えば、記事の執筆は社内の担当者だけでなく、外部のライターや専門家に依頼することも有効です。これにより、内部のリソースを節約しながら、専門性の高いコンテンツを提供できるメリットがあります。また、運営管理ツールやコンテンツ管理システム(CMS)を活用して、スケジュール管理や進捗管理を効率化することもおすすめです。
運営におけるコミュニケーションの円滑化も忘れてはなりません。社内の担当者と外部パートナーが円滑に連携することで、運営フローの停滞を防ぎ、質の高いコンテンツが継続的に生み出される環境を整えることができます。
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オウンドメディアの「成果」とは
ここまでオウンドメディア運用でよくある失敗例と、おさえておきたいポイントについて見てきました。ここで改めてオウンドメディアを意味あるものにするために考えておきたい、オウンドメディアの「成果」について考えていきましょう。
運営目的や目標によって異なるケースもありますが、一般的にオウンドメディアの成果は、フェーズ毎に注視すべき点が変化していきます。
運用初期
運用開始直後は、まず集客に注目するのが基本です。どれだけ多くのユーザーがメディアに訪れているか、記事が検索結果で上位に表示されているか、SNSなどでシェアされているか、といった指標を見ていきます。KPIとしてPV数やセッション数、UU数などを見ているメディアも多いでしょう。この時期は、SEOやSNS活用が重要な施策となります。
例えばSEOとしては、キーワード選定や内部リンクの最適化をしつつ、定期的にコンテンツを公開することが効果的です。また、SNSを活用した拡散戦略も集客に貢献します。特に、ターゲット層が集まるプラットフォームで積極的に発信することで、集客効果を高めることができます。
また、Googleをはじめとした検索エンジンからの流入ではなく、SNSなどで話題になるような企画性のあるコンテンツを発信することも有効です。長期的に読まれにくいというデメリットはありますが、検索以外の瞬発的な集客が期待できたり、そのメディアに「また来たい」と思ってもらえる可能性が高まったりします。シリーズ形式で展開した場合、中長期的にオウンドメディア自体のファン化を促すような関係性の構築も期待できます。
はてなでは、「読まれる」コンテンツ制作事例も多数あります。はてなの制作するオウンドメディアのコンテンツに関しては、以下の記事も合わせてご覧ください。
運用中期〜後期
集客を担保しつつ、訪問者に訴求したい商材・サービスへの理解を深めるようなコンテンツを並行して発信できているかは意識しておきたいところです。ユーザーがオウンドメディアを訪問しても、メディア自体の認知や商材・サービスに関する情報が全くない状態だと、最終的にオウンドメディアで達成したいゴールまで一向にたどり着かない……なんてことになりかねません。
そのため、商材・サービスへの理解を促すような深堀りコンテンツや導入事例コンテンツなどを用意しておくことをおすすめします。特にリード獲得を目指すオウンドメディアの場合は、運用初期から準備できるとベターです。
運用が安定し、ある程度の集客が見込めるようになったら、コンバージョン(CV)に目を向けるフェーズになってきます。この段階では、メディアに訪れたユーザーがどのような行動を取っているか、具体的にはどれだけリードが獲得できているか、商品購入や問い合わせが増えているかをチェックしていく必要があります。
この時期には、CTA(コール・トゥ・アクション)の導線設計も重要になってきます。GA4などで滞在時間や読了率、回遊率などを見つつ、ヒートマップツールも組み合わせて、メディア内の適切な位置にCTAボタンを配置できているか、コンテンツ内に設定しているCTAの場合、コンテンツの内容とCVポイントが適切なものになっているか、などを見ていきましょう。また、誘導した先のLPの内容やフォームの簡素化、UX向上などもコンバージョン率を高めるための有効な施策です。
また、フェーズ毎にどんなテーマでどんなコンテンツを出すべきか? という点においては、オウンドメディアの計画段階でペルソナとカスタマージャーニー設定が重要になります。コンテンツ戦略に落とし込むための指針になるため、必ず設定しておくようにしましょう。
メディアの目的によっては数値化できない成果も
オウンドメディアの運営目的によっては、定量化が難しい成果も存在します。例えば、ブランドの認知度向上やユーザーとの信頼関係構築といった、数値では測りづらい成果も重要です。この場合は、定性的な指標も含めて評価を行います。
具体的な定性的指標としては、ユーザーからのフィードバックやSNS上での反響、メディアに対するポジティブなコメントや口コミなどが挙げられます。これらは直接的な数値には現れないものの、企業のブランディングに大きく寄与するため、長期的な成功に向けて重要な要素となります。ユーザーアンケートなどを実施し、オウンドメディアが商材やサービス、企業を知るきっかけとなったかどうか、オウンドメディアの接触前と接触後で企業やブランド、サービスに対する印象に変化があったか、といった調査を定期的に行うことも有効です。
「オウンドメディアは意味がない」「オウンドメディアはオワコン」といった言葉は度々見かけます。しかし、しっかりと目的を設定し、長期的な視点で運営を進め、適切な運営体制を整えれば、オウンドメディアは大きな成果・効果をもたらす可能性を秘めています。
意味のある施策にするためにも、オウンドメディアの立ち上げ段階からしっかりとした目標設定と、それに基づいた運営計画の立案は欠かせません。さらに、定量的な成果だけでなく、ブランド力や信頼性向上などの定性的な効果も評価しながら、PDCAサイクルを回していくことで、オウンドメディア運営は期待した成果が見られ、成功の評価へと繋がります。
「とりあえずメディアを開設しよう」と闇雲に始めようとしてしまっている場合は、まずは一度立ち止まって、改めてオウンドメディア運用の目的と、達成したいゴールを再確認するようにしましょう。自社でオウンドメディアの運用ノウハウがない場合は、外部パートナーを活用することも視野に入れてみてください。
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