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CVに直結しない「成果」をどう可視化する? はてな主催オウンドメディアセミナーレポート【外為どっとコム、DNP登壇】

セミナーレポート


はてなでは、2024年10月17日(木)に、企業のWebマーケティング・広告・宣伝・広報ご担当者様を対象にしたオンラインセミナー「マーケティング戦略におけるオウンドメディアの役割と課題」を開催しました。

ゲストに株式会社外為どっとコム、大日本印刷株式会社のオウンドメディア担当者様を迎え、マーケティング戦略におけるオウンドメディアの役割、KPI、運用課題などについて、テーマに沿ったトークセッション形式で事例を紹介いただきました。

本記事では、当日のセミナーレポートをお届けします。

登壇者紹介(画像右上から時計回り)

登壇者紹介

  • 株式会社外為どっとコム 営業部 次長 川崎 成倫 氏
    • 2017年12月に外為どっとコムへ入社。取引ツールの開発推進、CRM、広告プロモーションをはじめとする幅広いサービス企画に従事。2019年8月に「マネ育チャンネル」の立ち上げを実施。現在は事業開発チームへ参画し新規事業を推進している。

<事例を紹介いただいたメディア:マネ育チャンネル

  • 大日本印刷株式会社 コーポレートコミュニケーション本部 Web戦略室 Webメディア推進グループ 高原 一実 氏
    • 1995年、新卒でDNP入社。販促企画8年、編集企画8年、新規事業企画8年を経て、現在はコーポレートメディアをより良くしていくための業務に従事。オウンドメディア「Discover DNP」編集長、公式SNSの管理のほか、Web・SNSにまつわる全社ルールの制定、ツールの提供などを行う。

<事例を紹介いただいたメディア:Discover DNP

  • モデレーター:株式会社はてな 執行役員 コンテンツ本部長 大久保亮太
    • 2011年はてな入社。オウンドメディアCMS「はてなブログMedia」をはじめとする法人向けの「はてなブログ」各種サービスや、企業のオウンドメディアのトータル支援など、はてなのコンテンツマーケティングの支援サービスを統括している。

マーケティング戦略におけるオウンドメディアの「役割」とは?

当日は3つのトークテーマに沿ってそれぞれセッションを展開。

  • Talk Theme1:マーケティング戦略におけるオウンドメディアの役割
  • Talk Theme2:KPI/成果
  • Talk Theme3:運用の課題

トークセッションでは、まず各オウンドメディアの役割について説明いただきました。

オウンドメディアの役割

ターゲットに合わせたコンテンツを展開する「マネ育チャンネル」

外国為替取引サービスを展開する株式会社外為どっとコムが2019年に開設した「マネ育チャンネル」は、外国為替を中心にFX取引の助けになるコンテンツを多数配信しています。開設当初は若年層との接点を持つためのプラットフォームとして設計されていましたが、5年間運用を継続していく中でさまざまなキーワードで流入が見込めるようになってきたことから、現在は為替関連のキーワードを中心に「新規顧客」「既存顧客」それぞれに向けたコンテンツを展開し、自社の接点創出を目指し運用されています。

マネ育チャンネルの役割

川崎氏によると、現在「新規顧客」「既存顧客」向けのコンテンツはおよそ8:2のバランスで配信しているのだそう。

「当社の場合、コンバージョンは『口座開設』になりますが、正直に申し上げると口座開設というのは非常にハードルが高い。そのため、新規のお客様に対してはその前の段階で検索キーワードやニュース検索などから『外為どっとコム』との接点を創出し、いわゆるマイクロコンバージョンにつなげられるかが重要になってきます。

そのため記事として楽しんでいただいたうえで当社の名前を知っていただき、そこから他のコンテンツへ遷移してもらったり、メールアドレスを取得するような仕掛けを作ってみたりして、コンバージョンのきっかけになるようにしています」(川崎氏)

一方で、既存顧客の場合はある程度為替取引に関して意欲的かつ一定の知識を持つ方が多いため「こうした方(既存顧客)のニーズに応えるような即時性の高い情報や限定性のある情報を発信し接点を持ち続けられるようなコンテンツを出している」とのこと。

ターゲットが異なる方に向けたコンテンツを同時に同じメディアで出すとき、メディアの一貫性をどう保つかは気になるところ。川崎氏は「記事本数の多さと情報の鮮度は統一した特徴として意識している」と説明します。

「新規の方にも、既存の方にも『このサイトはいつも新しい情報を配信している、ホットな情報をくれる』と思ってもらえるようなサイトに見えるよう意識しています。

また、既存顧客向けに関しては内部メールマーケティングとして定期配信するなどしており、記事それぞれの目的と使い方をしっかりと切り分けて運用するようにしていますね。当社ではこのオウンドメディアをCRMの一環として使っています」(川崎氏)

DNPの「良さ」を伝えブランド向上につなげる「Discover DNP」

大日本印刷株式会社(略称DNP)はまもなく創業150周年を迎える老舗企業。印刷・情報技術を基盤に、雑誌や書籍から包装、建材、エレクトロニクス、エネルギー分野、ライフサイエンス分野にも進出し、「未来のあたりまえ」をスローガンに国内外の社会や生活者のさまざまな課題解決に取り組まれています。

事業領域が非常に多岐に渡る分「DNPが何をやっている会社なのか」ということが見えづらくなっていることから、DNPの「今」と「これから」を伝えるためのメディアとして2018年に開設されたのが「Discover DNP」。

さまざまなDNPの取り組みや事業のほか、社会貢献に関するトピックなどコーポレートブランディングの役割を担うメディアになっています。

Discover DNPの役割

高原氏が所属するコーポレートコミュニケーション本部のミッションは、あらゆる活動を通し、社内外のブランディングを高めること。

WebサイトやSNSを活用した社外への情報発信、イントラサイトや社内SNSを活用した社内コミュニケーション、各種イベントや企業広告・CM、デジタルサイネージやグループ報など各種メディアとコンテンツを連動させ、社内外の「行動」を活性化させていきます。

当日スライド
ブランディングの全体像を示したもの。どのタイミングで、どういう目的で、どのフェーズにいる人に向けて発信するかを明確にしている(セミナー当日のスライドより)

「さまざまな取り組みの中で、Discover DNPは自社への認知や興味関心を持つ層を増やすことを目的にしたチャネルになります。実は、ちょうど直近はてな様とワークショップを行い、メディアの目的・役割というものを再定義したんです。

DNPはBtoBビジネスが主力となっていますが、そのビジネスパーソンもオンタイムが終われば、当然生活者となります。そのため、『生活者との結節点となって、DNPの良さを伝える』メディアとしてやっていこう、ということになりました。

そのうえで読者に伝えたい『良い』を7つに分類し、その記事の読後感はいずれかに該当するように、という目線合わせをしたところです。なので、コンテンツについてはまさに今検討している状況です」(高原氏)

提案資料抜粋
コンテンツの読後感でおさえる7つの「良い」を可視化したもの
(はてな×DNP様ワークショップの内容を踏まえはてなで制作した実施計画書(戦略設計)より抜粋)

またDiscover DNPは立ち上げのタイミングで5カ年計画を立て、フェーズごとに目指す姿を定義したり、コンテンツの設計書を用意したりしてコンセンサスがとれるようにしていたのだそう。

高原氏がジョインしたのはDiscover DNP開設後でしたが、こうした「中長期を見据えた計画があることで感じたメリット」についてモデレーターの大久保から質問が出ると「設計書があることで、媒体を運用するにあたって見逃してはいけない点をきちんと意識できた」と語ります。

「コーポレートメディアとなると、自らの取り組みを伝えることが主眼となり、どうしてもプロダクト色が強くなりがち。それをいかに読者視点にするか、というコンテンツ設計書が用意されていたことは良かったと思います。

一方で、全てが計画通りにというわけにはいかない。実際に2024年の段階でも認知・集客の面ではまだまだ足りない状況だったため、コンテンツ設計の見直し……それこそはてな様とのワークショップで改めてどんなコンテンツを発信していくか再定義するなど、ピボットもしつつ進めています」(高原氏)

KPIはどうしている?

オウンドメディア運用にあたってどんなKPIを設定するのか、成果はどう図るのかに悩む媒体は少なくありません。トークテーマ2では「KPIと成果」について伺いました。

各オウンドメディアのKPIを記載したもの(セミナー当日のスライドより)
各オウンドメディアのKPIを記載したもの(セミナー当日のスライドより)

マネ育チャンネルでは、大きくPV数、経由CV数、Google Discover、Google Newsの表示回数を指標として見ているとのこと。大久保がそれぞれのKPI達成に向けて効果的だと感じた施策について聞くと、PV増加の要因として「検索流入の最適化」と「サブディレクトリ化」の2点が挙げられました。

「当社としても信頼できる情報をタイムリーに配信しているという自負があり、まずは黙々と記事の本数を増やしていましたが、それに加えて、サジェストをかなり意識していましたね。キーワードに対するサジェストで、どういった意図を持ってユーザーが検索しているのかを常に分析しながらチューニングを図るようにし、Google DiscoverとGoogle Newsの欄にいかに乗るかというのを注力していました」(川崎氏)

サブディレクトリ化も、検索エンジンからの評価を高める要因となったのではないかと川崎氏は説明します。

「もともと当社のコーポレートサイトとマネ育チャンネルは別のURLだったのですが、2022年に本体サイトの配下にするようにしました。それによって、2つのサイトとして評価されていたものが1つのサイトとして評価されるようになり、結果流入の安定化につながったと感じています。

当社のサービスの特性上、ユーザーが興味関心を持つキーワードは、為替相場の変動によってかなり変わるんです。それこそアメリカの大統領選があれば、その時期はドル円で検索をされたり、大統領の名前で検索されたり。そうしたブレのようなものが、サブディレクトリ化したことで安定したのではないかなと感じています」(川崎氏)

※「マネ育チャンネル」は、はてなのCMS「はてなブログMedia」をご利用いただいています。マネ育チャンネルのサブディレクトリ運用に関しては、以下のはてなブログMedia導入企業向け勉強会レポート記事も合わせて参照ください。

マネ育チャンネルのPV数推移(セミナー当日のスライドより)

Discover DNPでは流入元別のPV数、特に直近は社内イントラ経由で社員がどれだけアクセスしているかを見ているそうです。集客を意識すると、どうしても外部からの流入に目が向きがちですが、インナーブランディングの観点からも自社のスタッフがどのくらい訪問しているか、という点はたしかにおさえておきたい指標です。

また、新規公開記事に設定しているアンケート評価を見るようにしている、と説明がありました。これは、アンケート結果に独自の係数をかけてスコア化し、回答率と合わせて評価指標としているのだそう。実施している背景としては「CVに直結しない、コーポレートブランディングを目的としたオウンドメディアの価値」をきちんと可視化するという狙いもある、と高原氏は説明します。

「アンケート結果を元にしたスコアが高ければ高いほど読者からの評価が高いということが言えますし、回答率が高くなればそれだけ多くの方に見てもらえている、ということが言えます。また、アンケートの結果を通し次の施策につなげるといった仮説立案にもつなげられます。

そして、オウンドメディア運営を継続する際に、コンバージョンにつながらないメディアをなぜ続けるの? というクエスチョンは必ず出てきます。そもそもコンバージョンにつなげるようなメディアではない、と言い続けることになるんですけれど、その中でもこういった目的で運営していて、こういったスコアをちゃんと取って、このくらいの結果が出ているよ、といったエビデンスになるようなものは用意しています」(高原氏)

認知向上やブランディングを目的としたオウンドメディア運用の場合、経営層や費用の決済担当者に「売上に直結しない」からとオウンドメディアの必要性を理解してもらえず、志半ばで運用が中断してしまう……というケースは少なくありません。

そうしたとき、定量的な形でオウンドメディアの価値を可視化するというのは非常に重要です。こうしたDNP様の取り組みは多くのオウンドメディアの参考になりそうです。

また、オウンドメディアの成果に関し大久保が聞くと、マネ育チャンネルでも、運用当初なかなかコンバージョンにつながらず厳しい評価になっていた時期があったそう。

川崎氏は続けて、「このとき、『オウンドメディアは意味がない』という結論に至らないよう、既存のユーザーとのエンゲージメント強化につながっていることを示すために既存ユーザーのインタビューコンテンツの実施記事を報告したり、社内のメンバーが見ても楽しめるようなコンテンツを制作したりするなど、オウンドメディアの価値を示すための草の根活動を行っていた」と振り返りました。

オウンドメディア運用課題「あるある」

最後のトークテーマは「運用の課題」について。ここではマネ育チャンネルでの「他施策とのシナジー」に関する事例共有がありました。

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オウンドメディア運用でよくあるお悩み(セミナー当日のスライドより)

マネ育チャンネルの記事流入経路は為替に関連する検索キーワードやニュース検索が中心。ただ、文字の情報だけでは伝えられる内容に限度があるという課題感を持たれていました。そこで、理解度を高めてもらうためにも「記事と動画コンテンツの連携を図り、YouTubeの解説動画を記事に埋め込む形で新たな動線を作ることにした」のだそう。

「たとえば『ドル円相場の変動が気になる』方が検索などでマネ育チャンネルに訪れた際、記事からリアルタイムのライブ放送や関連する解説動画へ誘導できるよう工夫しました。その結果、多くの方がYouTubeにうまく流入をしてもらえただけでなく、今度はYouTubeの動画を経由して口座開設というステップと踏んでいただくというスムーズなコンバージョンルートが実現しています」(川崎氏)


www.youtube.com

外為どっとコム 公式FX動画chで人気を集める外為どっとコム総合研究所 TEAMハロンズ(@TeamHallons)によるライブ配信(平日毎日21時配信)では、ライブ配信中実際にリアルトレードを行い、成功も失敗もその場で共有しているのだそう。チャットが盛り上がるなど、視聴者との交流の場ともなっています


「TEAMハロンズの動画も最初は数名しか見てくれていなかったコンテンツですが、数年の運営を経て、今では同時接続1万人超え、再生回数も平均で2.5万回を超える人気コンテンツへと成長しました。マネ育チャンネルもYouTubeチャンネルも最初は数字作りに苦労しましたが、継続して育てることで成果を実感しています」(川崎氏)

オウンドメディアを運用する中で、気付かないうちに「全てをオウンドメディア上で完結させよう」としてしまうケースは少なくありません。しかし、オウンドメディアはコンテンツマーケティングを実施するための手段の一つです。別施策と連動させることでユーザーの理解度を高めたり一体感を生み出したりした上で、さらにはコンバージョンにも寄与していく、というマネ育チャンネルの取り組みは、施策の相乗効果を感じる好事例として参考になるはずです。

***


トークセッション後、セミナー参加者からのQ&Aにも回答いただきました。

寄せられた質問のうち「企画色を強めたコンテンツだとSEOが弱くなるケースが多く、バランスをとるのが難しい。両立させられるか」に対しては川崎氏、高原氏両名とも「記事ごとに役割を分けて出している」とのこと。

「さまざまな目的を盛り込んだ記事にすると、どっちつかずな形になり、結果的にうまくいかないと感じています。両立できるケースもあるのかもしれませんが、我々の場合は企画系の記事とSEOは切り分けて考えています」(川崎氏)

高原氏は「Discover DNPも、記事の目的に合わせて制作していますね。ただ、流入はセットで考えておかないといけないと思っています」と説明し、続けて「『これは検索向けのコンテンツではない』という場合は、広告活用も行っている」と回答しました。


最後に

ご協力いただきました株式会社外為どっとコム 川崎様、大日本印刷株式会社 高原様、ありがとうございました。

今後も、オウンドメディアやコンテンツマーケティングに取り組む担当者様に向けた無料のセミナーを定期開催しています。本ビジネスブログで開催予定をご紹介してまいりますので、ぜひご覧ください。

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