はてなでコンテンツマーケティングサービスのセールス部門に所属する島(id:shi_uma)です。主に企業のオウンドメディアの立ち上げや運用支援を事業とに取り組んでおり、はてなブログのシステムを活用したCMS「はてなブログMedia」やトータル支援サービス「はてな MediaSuite」の提供、はてなブックマークの広告枠を用いた集客支援等をしています。
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オウンドメディア支援をさせていただく企業様からお問い合わせいただく際には「困りごと」を抱えた状態で相談をいただくケースがほとんど。その悩みや課題感は企業様によって異なりますが、共通する部分も多々あります。
そこで今回はBtoB領域でオウンドメディアの立ち上げを検討している、あるいは見直しを考えている企業様からよく相談いただく事例を元に、BtoBオウンドメディア運用をする上でおさえておきたいことや、オウンドメディアと密接な関係を持つコンテンツマーケティングとの関わり、立ち上げ時に意識すべきポイントなどを紹介します。
株式会社はてなのオウンドメディア事例集をまとめた資料「オウンドメディア事例集」を公開中。各企業の運営体制やKPI、成果まで多くの担当者へのインタビューが掲載されています。オウンドメディア運営による効果からKPIなど、これからオウンドメディアを立ち上げたいと思っているご担当者様におすすめの資料です。
- BtoB企業が「オウンドメディア」に注目する理由
- オウンドメディアはコンテンツマーケティングの手段の一つ
- BtoBオウンドメディア=SEOではない
- BtoB企業がオウンドメディアを立ち上げるときに意識したいポイント
BtoB企業が「オウンドメディア」に注目する理由
オウンドメディアの立ち上げを検討するということは、そこには何らかの課題感を持っているケースがほとんどです。
実際にBtoB企業様からのご相談内容で多いものを、いくつか紹介します。
1. リード獲得を目的としたデジタル広告のパフォーマンス低下
まずは、「デジタル広告(Web広告)のパフォーマンスが下がっている」という点が挙げられます。
問い合わせや資料請求といったアクションを起こすリード獲得(リードジェネレーション)施策としてリスティング広告やSNS広告、ディスプレイ広告、リード獲得広告などを行ってきたものの、獲得母数の限界を感じ始め、異なるファネルからのリード獲得施策としてオウンドメディアの運用を検討されるケースが多いです。
2. 従来型の営業・マーケティング活動からの脱却
BtoB商材・サービスを取り扱う企業の相談として、従来型の営業・マーケティング活動に限界を感じているケースも多いです。専門性が高かったり、ニッチな領域であったりすることから長らく顧客アプローチの手段として訪問営業や展示会への出展など主にオフラインでのリード獲得スタイルをとっている企業ほど、こうした課題感を持っている傾向が見られます。
ただ、これはBtoC企業にも言えることですが、情報収集の方法はさまざまな分野でデジタルに移行しています。BtoB商材・サービスを導入する場合も担当者が積極的にWebで関連情報を検索したり比較検討したりした上で、問い合わせに至るケースも増えてきています。
そのため、広告では接触できない層やまだ商材やサービスを具体的に認知する前の段階(ニーズが顕在化していない状態)から、ユーザーと接点を持つ重要性が高まってきています。そういった面でも潜在顧客へのリーチが期待できるオンラインのオウンドメディアに注力する企業が増えてきているのではないでしょうか。
注:オウンドメディアは一般的に「企業が自社で保有するメディア(媒体)」のこと。広義では企業サイトなども含みますが、近年では「ニュースやコラムのような記事を定期的に掲載するメディア」を指すことが主流です。
オウンドメディアと聞くとオンライン上のもののみを指すイメージを持つ方もいるかもしれませんが、自社で所有、管理しているメディアであればオンライン、オフライン問わずオウンドメディアに分類されます。
オウンドメディアはコンテンツマーケティングの手段の一つ
ここで改めて、Web媒体としてのオウンドメディアについて少し深堀りします。
オウンドメディアはコンテンツマーケティングを実施する手段の一つです。
コンテンツマーケティングは「優良なコンテンツを生活者に届け、顧客と信頼関係を築くマーケティング手法」のこと。一方的な情報発信ではなく、ユーザーに関心を持ってもらえるような価値のある情報を発信していくことで、先程もお伝えしたようなユーザーとの関係性構築や、その先のリード獲得が期待できます。
コンテンツマーケティングというマーケティング手法にはオンライン・オフライン両方のコンテンツが含まれ、メールマガジンや自社運用のSNS、自社主催のセミナーやイベントもコンテンツマーケティングに位置づけられます。
また、コンテンツマーケティングと合わせて混同されがちな用語としてデジタルマーケティングがありますが、これは簡単に言うと「デジタル化できるあらゆる情報を活用したマーケティング手法」のことで、コンテンツマーケティングよりも広義の領域を指します。
▼オウンドメディアの基本、コンテンツマーケティングとの関連性を知りたい方はこちらの記事も参照ください
BtoBオウンドメディア=SEOではない
BtoBビジネスでオウンドメディアの活用を検討する企業の相談事例として「オウンドメディア=SEO」「とにかくリードをとるためにオウンドメディアをやりたい」という認識を持たれているケースがあります。ですが、これについては注意が必要です。
分かりやすい例でいうとオウンドメディアを「検索キーワードに紐づいた大量のコラム記事を作成して集客し、CTAボタンなどからリード獲得を行う」という一本軸のみで考えてしまっているケースです。
もちろん検索エンジンからの集客はオウンドメディア運用において重要です。ですが、オウンドメディアを運営する目的や役割はそれだけではありません。
ブランド認知や商品理解の促進
オウンドメディアで展開するコンテンツを通して、自社のブランドやサービス認知、商品理解を深めるといったブランディングの手段として活用できるのも、オウンドメディア運用で期待される成果となります。オウンドメディアとはやや離れますが、サービス名や企業名の認知やブランディングの一環でBtoBビジネスのテレビコマーシャルを見かけるケースも多いのではないでしょうか? オウンドメディア運用によるブランディングや認知拡大と聞くとBtoCのイメージを持つ企業様も多いですが、これはBtoB企業においても当てはまります。
また、特にBtoB領域は専門的な知識やニーズを欲するケースが少なくありません。そうした「ニッチな領域」に対して情報を得たい人に向けたコンテンツを発信することで潜在層との接点を創出しエンゲージメント強化が期待できるほか、信頼性や専門性を際立たせていくことで、業界内でのオピニオンリーダーになる可能性を秘めています。
Content Marketing Instituteの創始者であるJoe Pulizzi氏も、コンテンツマーケティング戦略において「ニッチ」を攻める重要性を指摘しています。
参照:https://contentmarketinginstitute.com/articles/questions-competitive-content/
こうした点からも、BtoBのオウンドメディア=リード獲得、つまりSEOに注力する、という思考に至ってしまっている場合は注意が必要です。
リード獲得の手法としてオウンドメディアの運用はたしかに有効な施策の一つではありますが、企業によっては既存のデジタル広告施策等で十分というケースも考えられます。本質的なコンテンツマーケティングを実践するためにも、闇雲にオウンドメディアを立ち上げようとするのではなく、「課題は何か」「その課題解決のためにどんな施策が有効か」をまずは検討することを強くすすめます。
実際に、BtoBビジネスを展開する企業様からのご相談に対し、課題感を深堀りしていった結果「オウンドメディアの立ち上げではなく広告運用の改善から」「リード獲得を主目的にするのではなく認知拡大を目指したオウンドメディアの立ち上げ」を提案するケースもあります。
BtoB企業がオウンドメディアを立ち上げるときに意識したいポイント
検討を経てオウンドメディアを立ち上げることが決まった場合に、必ずおさえておくべき点は「目的の明確化」。何をゴールに運用するのかを明確にし、社内で合意形成を行うことが重要です。ここではB2BとB2Cのオウンドメディアの差はなく、いずれも目的を明確にし、社内の共通理解を得ることが重要です。
はてなではオウンドメディア支援を行う企業様に対しヒアリングを行い、課題や要望の整理を行います。その後、外部・内部の環境分析からオウンドメディア戦略を立案し実行のスケジュールやKPIなどをまとめた「実施計画書」を作成し、メディアの立ち上げを行っています。
課題や目的を明文化した「実施計画書」は、オウンドメディア実施の際、経営陣(社内の決済者)の説得材料にもなります。
オウンドメディア運用は中長期的な施策であることを理解する
オウンドメディアを立ち上げても、すぐに成果が得られるわけではありません*1。リード獲得を目的とした場合でも、認知拡大を目指した場合でも、「一定の期間が必要」という点は、はてなに相談いただく企業様にもお伝えしています。
成果が出るまでに一定の時間がかかる、ということを踏まえ継続的な運用体制を整えていくことと合わせ、オウンドメディアの立ち上げ段階で、社内でも合意形成をしておくことが重要です。
BtoB企業がオウンドメディア運用を検討する背景(課題感)や、陥りがちな注意点、立ち上げ時におさえておきたい点について、実際に寄せられる相談例をもとに紹介してきました。
もちろん企業が抱く課題感や注意すべきポイントなどは、今回紹介した例に当てはまらないケースも考えられます。ですが、オウンドメディアは適切な運用を行うことでマーケティング課題の解決に寄与する手法でもあります。
はてなでは「はてな MediaSuite」としてオウンドメディアの計画から運用までオウンドメディアのトータル支援サービスを提供しています。オウンドメディアの立ち上げを検討している方はもちろん、運用中メディアの見直しを考えている場合にも、まずはお気軽にご相談ください。
*1:Content Marketing Instituteの創始者、Joe Pulizzi氏は成果を実感できる目安として18ヶ月以上、さらにグロースさせるには24ヶ月以上の継続的な運用を推奨している 参照:https://contentmarketinginstitute.com/articles/success-long-term-content-model/