初めまして。ビジネス開発本部の大久保亮太です。
2011年にはてなに営業として転職し、現在は事業開発部のマネージャーも兼務し、「BrandSafe はてな」やオーディエンス情報を活用した広告配信の仕組みをエンジニアと一緒に開発しています。
今回は、はてなでも新しい取り組みとなる広告配信システム「BrandSafe はてな」についてご紹介します。
僕らが「BrandSafe はてな」を作るきっかけとなった考えや経緯、そこに至るまでの道のりを本エントリで発信したいと思います。
最近のインターネット広告における問題点
ここ数年で、インターネット広告の中でもバナー広告の出稿の仕方は大きく変わっています。
はてなを例に考えてみると、以前は「30~40代の男性でIT企業に勤めているユーザーが多く含まれるからターゲットに合致している」という理由ではてなのバナー広告をお買い求め頂くことが多かったように思います。もちろんありがたいことに、今もそのような買い方をして頂くクライアント様は多くいらっしゃいますが、最近ではDSPを使った個々の「人」をターゲティングする買い方が主流になってきています。
仮に「30代前半でIT企業に勤めるエンジニア」にプロモーションしたい商品があるとします。このターゲットに対し「人」ベースでターゲティングして、はてなに限らずインターネット上の様々なメディアや掲載枠でリーチをすることが可能です。そうなった時にクライアント様側が気をつけるべき事は掲載面です。
DSPやアドネットワークなどで広く配信をすると、どこに自社のバナー広告が出ているのかが全くわからない、もしくはわかったとしても配信後になってしまいます。知らないうちに、アダルトサイトや違法アップロードサイトにバナー広告が掲載されて、商品のブランドを毀損しているかもしれません。同時に、違法サイトの運営者に対して意図せずお金を支払ってしまっている可能性もあるのです。この状態は決して健全とは言えません。
広告主と媒体社のブランド毀損を避ける
はてなに掲載される広告バナーに関して、はてなでは掲載基準を設けて精査しております。
その結果、お引き合いを頂いたとしても「掲載できません」とお断りすることもあります。掲載基準を設けずに広告を全て載せてしまえば、より売上はあげやすくなるのかもしれません。
しかし、不適切な広告をむやみやたらに掲載してしまうことは、はてなに掲載料を支払って下さるクライアント様の広告価値を下げてしまいますし、はてなを使って下さるユーザー様を傷つけてしまいます。
このように適切な広告を適切なところに掲載することを行っていかなければ、広告主、媒体社の両社にとってブランド毀損につながる残念な結果となりますので、前述したような取り組みは必須です。
近年はDSPやアドネットワークで不特定多数のメディアに広告をご出稿されるクライアント様が増えています。どのようなコンテンツと一緒に自社の広告が掲載されているのかについては、クライアント様側でも、もっと気にしていくべきポイントだと思います。
アドベリフィケーションとは
このような流れの中で、近年「アドベリフィケーション」という言葉が生まれました。さて、どのような意味でしょうか。
アドベリフィケーションとは、DSPなどを使って配信した広告が、広告主のイメージ低下を招くようなサイトに配信されていないか、ユーザーが認識できる場所にちゃんと掲載されているかなどを確認して配信をコントロールするためのツールのことです。
出典:アドベリフィケーションの仕組みと役割|デジタルマーケティングラボ
要するに、広告主のブランド保護という観点から、DSPやアドネットワークに配信する広告枠の中で不適切な場所に自社のバナー広告が出ないようにすることです。「不適切な場所」と一口に言ってもわかりづらいですね。たとえばWeb担当者Forumでアドベリフィケーションを解説した記事では、次のような例を示しています。
画像は以下記事よりお借りしました。
うわっ…ウチの広告、こんなサイトに出てたらブランド毀損じゃん! を防ぐアドベリフィケーションとは? | 編集長ブログ―安田英久 | Web担当者Forum
近年、違法サイトの広告収入に対し警察がメスを入れ始めています。こういった社会的背景もあり、今後アドベリフィケーションというツールがより求められることになるでしょう。
有名企業の広告料、違法サイトに流入 警察庁、対策強化:朝日新聞デジタル
はてなが考えるアドベリフィケーション
私たちは、アドベリフィケーションを「ブランド毀損を避けるだけでなく、無駄なく効率的に広告配信できるもの」と位置づけています。
アドベリフィケーションとは、ブランド保護の観点からアダルト面や違法サイトへの広告の買い付けを行わないようにするだけではありません。一部の2ちゃんねるまとめや違法サイト等でよくみられる、誤クリックを誘発するような掲載面には広告を配信しないようにすることで、自社のブランドを保護しつつ、広告効果を最大化させることができるのです。実際にフリークアウト様と共同で開発した「BrandSafe はてな for フリークアウト」をご利用頂いた結果、広告効果(CPA)が約50%も改善された事例もあります。
BrandSafe はてなの仕組み
日々の出来事を綴っているブログに、ひとつだけアダルトな記事が投稿されたとします。だからといってそのブログ自体への広告掲載を停止してしまうのは、広告配信の観点からすると非効率です。
そこでBrandSafe はてなでは、URL毎にアドベリフィケーション判定をしています。判定方法については、はてなブックマークでユーザー様が任意で付けたタグの情報やコメントのほか、ページの本文内解析、発リンクなどの情報を活用して総合的に判断しています。他のアドベリフィケーションツールに多い、機械的に本文を抽出してきた情報だけでなく、人の目で実際に見て付けられた情報であるはてなブックマーク上のタグ情報も判定アルゴリズムに活用しておりますので、さらに高い精度でページ内容を判定することができます。これははてなでしか出来ない自社データを使った取り組みです。
技術的な詳細は以下のURLからご覧ください。
『BrandSafe はてな』のアドベリフィケーションのしくみについてアドテク系勉強会で発表しました - 貳佰伍拾陸夜日記
これからのBrandSafe はてな
現在は違法サイトや公序良俗に反するページへの掲載停止だけではなく、ネガティブな情報が掲載されたページでも掲載停止できるよう鋭意開発中です。
例えば、交通事故のニュースの横に車の広告が出ないようにしたり、航空機事故のニュースの横に航空会社の広告が出ないようにするといったことが可能になります。「人」のターゲティングだけでなく「感情」を加味することで、より精度の高い広告掲載が実現でき、無駄なく効率的に広告配信を行うことができます。
BrandSafe はてなに込めた想い
現在のインターネットメディアの多くは、広告によるマネタイズをメインの収入源としています。コンテンツを作っている人々や流通を促すプラットフォームには、適切に広告費が還元されるべきだと考えています。ただ、現在のような、まっとうなメディアにも違法サイトにもいっしょくたに広告が配信されてしまう玉石混交の状態ですと、クライアント様は安心して広告を出稿する事ができません。そうなるとインターネット広告のマーケット自体が縮小してしまい、まっとうな媒体社ほど、どんどん疲弊してしまいます。
大手クライアント様も安心してインターネット広告に大きく予算を割けるようにするには、掲載面をしっかりと把握して、適切な広告が適切な面に出るように仕組みを作っていくことが必要であると僕は思います。弊社では、はてなブックマークというCGMサービスを10年かけて運営してきており、ユーザー様の力もお借りしながら蓄積してきた多くのデータがあります。長年かけて培った大事なデータです。
「みだりに自社の利益を立てるためだけではなく、インターネットと広告という観点から広く還元できることはないだろうか。」
「よりクライアント様や媒体社様、インターネットユーザーに喜んでもらえること、はてなでしか出来ない事は何だろう?」
そう考えた時に、この仕組みは絶対にあるべきだと考えBrandSafeはてなを開発・リリースいたしました。そういった僕たちの想いもあり、ぜひ多くのクライアント様、媒体社様にBrandSafeはてなをご利用頂きたいと思っています。