オウンドメディア、コンテンツマーケティングに関する話題をお届け。株式会社はてなが運営しています。

健全なオウンドメディア運営のための体制とは?編集長とビジネスディレクターの役割分担について

はてなの営業部長の高野です。はてなでは、昨年から楽天様の「それどこで買ったの?」(以下それどこ)というオウンドメディアの運用のお手伝いを行っています。

具体的には企画立案から記事制作、分析や報告までをお手伝いしています。


このように、オウンドメディア構築CMS「はてなブログMedia」で企業のオウンドメディアを構築する、記事コンテンツを制作する、ネイティブ広告によって誘導するなど、企業のオウンドメディアに関わってビジネスを行う機会が増えています。
また、オウンドメディアを運用するご担当者様であったり、代理店の方、制作会社の方とお話する機会も増えてきました。

オウンドメディアブームの中で出てきた課題

関係者と話す機会が増えるにつれ、オウンドメディアにおける課題や問題点もよく聞くようになりました。立ち上げたはいいけれども流入がなく、なかなか見てもらえない。運用の仕組みやフローを作ったから制作会社が記事を更新していってくれるけれど、おもしろくない。成果を社内でどう伝えていいかわからない。責任をもってメディアのブランドを作っていく人間がいない、などなど。


このままではオウンドメディア、もっといえば今コンテンツマーケティングと呼ばれる手法は、一時期のソーシャルメディアマーケティングのように、一過性のブームとなってしまうかもしれません。過剰なブームは去っていいと思いますが、おもしろいメディア、おもしろい記事広告(ネイティブアド)はやはり残って欲しい。いろんな企業がコンテンツを作るようになり、少し情報が過剰になってきたかなと思う一方で、それ以上におもしろいコンテンツが増えてきたと思っています。


例えばサイボウズ式が追求しているコンテンツって、もう企業のメディアでなければ取り扱わないジャーナリズムのようだし、これは記事広告(ネイティブアド)だけどヨッピーさんが市長とシムシティ対決するような記事は、クライアントがお金を出してくれなければ予算をかけて実現できない記事だと思います。
omocoro.jp


はてなとしては、企業のオウンドメディアに関わり、そしてインターネットを面白くするというミッションを掲げているので、コンテンツマーケティングブームがどうなろうと、やはり面白いオウンドメディア、ネイティブアドは残っていって欲しい。


ただ、業務の切り分けによって多少スムーズになる課題もありそうです。楽天様のお仕事を手伝っているうちに、オウンドメディアでは媒体のブランドを作る編集長と、数値面を作成するビジネスディレクター的な立場の2名がいたほうが、健全に運営できるのでは?と思うようになってきました。
ちなみにここで言う健全とは、媒体としての健全と、働く人の精神的な健全の2つの意味があります。働く人の精神的な健全さは大事です

このように分担することで、何が健全になるのか?という話の前に、「読者価値」について書いておきたいと思います。

読者価値について

広くWEB上のメディアの運営にあたっては、PVだけ追い求めるのではなく、「読者価値」を追求することも必要です。

ちなみに「読者価値」という言葉はほぼ造語で、これははてな編集部の毛利が、11月のIn-house SEO Meetupで「最近のWEBメディアを見ていて得た気づき」としてお話をさせていただいた概念です。

この時のお話を簡単に要約・意訳します。

少し前までの紙の雑誌媒体では、定期的に購入してくれる固定読者がいたために、編集長が良い記事を作ることを追求すればそれが収益になりました。
しかしWEBメディアでは、ソーシャルメディアや検索経由の流入が伸びるにつれて、次第に固定読者が減っていき、一記事一記事で集客することが求められるようになってきました。
そうすると、良い記事を作ることよりもPVが伸びる記事、ひいては収益に繋がる記事が優先されがちになってしまいます。
例えばPVを伸ばすことだけを考えるなら、炎上させる、ニュースに登場した芸能人の名前や事件の詳細をできるだけ早く上げることが一つの手段になります。
極端な話、これらの方法で、ソーシャルメディアでシェアされる数、どれだけ検索流入数を得られるかを追求することはできます。


極端とはいえ、企業のオウンドメディアにおいても、記事を更新増やすことが目的化し、記事の信憑性や品質が問われていないケースも見受けられるようになりました。


残念なことですが、良い記事を作ることが必ずしも収益に繋がる時代ではなくなってきてしまいました。
そんな時代に良いメディアを作るにはどうしたらよいでしょう。
編集長とビジネスディレクターの2名がいて、それぞれ役割分担することは一つの解決策かもしれません。
ビジネスディレクターがSEO設計やプロモーション方針などを担いつつ社内で必要な報告をまとめ、
編集長は思う存分良い記事、良いメディアを作ることに集中する、このような体制が健全なメディアになるのではないでしょうか。


その時のレポートはこちらにも上がっております。
第一線のウェブ担当者たちは、検索流入をどう考えているのか? | CONTENT MARKETING LAB(コンテンツマーケティングラボ)


それどこの運用にあたっての役割分担

クライアントサイドではありませんが、はてながどのように企業様の編集に関わっているかを参考までに書いておきます。
それどこの運用には、営業のほか、編集部が何人かで携わっています。
そのうち営業と編集、それぞれの責任者の業務を分けていくとこのようになります。

編集責任者
  • 記事企画立案
  • 記事完成までの楽天様とのやり取り
    • 記事の執筆、執筆依頼から校正などの一連の作業は各編集が担当
  • 記事リリースのスケジューリング
  • 品質管理(記事の確認、OGPチェック、スマホでの表示チェックなど)
  • 編集ルール(告知、OGPなど)策定
  • 各編集者のマネジメント
  • デザインなどの制作業務のディレクション
  • 媒体ブランドにおける責任者
営業責任者
  • クライアントへの提案
  • 契約書締結
  • 価格交渉・請求業務
  • 分析レポート作成
  • 営業面・分析結果からの企画立案への参加
  • セミナー企画など、記事運用以外の活動
  • 顧客折衝の責任者


編集が記事の制作、ひいては媒体のブランド作りを行い、営業が数値面の価値を生み出す、というイメージです。
これを運営側に置き換えると、編集責任者は編集長、数字を作るという意味で営業責任者をビジネスディレクターといった呼び方にしてもよいかもしれません。

それどこの方針と分析

「それどこ」では、今はこのメディアによる売上の拡大を狙うのではなく、まずは多くの人にメディアを見てもらい、面白いと思ってもらうこと、好きになってもらうことを目指しています。色々な記事を作っていますが、それはそのような意図です。
ですので、どのような人にどれくらい読んでもらい、どのような感想を得たか、を重視しています。
記事が出たら、はてなブックマーク、その他ソーシャルメディアのコメントのほぼ全てに目を通し、編集方針に活かしています。


一方で、しっかりと数字の分析も行っています。

多くの人に読んでもらうことを目的に様々な方向性の記事を展開しているため、30代女性が多い、10~20代の若年層のスマホユーザーが多いなど、記事ごとに大きく来訪属性が変わってきます。さらにはソーシャルメディアごとにウケる傾向、記事が広まる傾向も違ってまいります。そもそもコンテンツの広まり方も、ソーシャルメディア経由、検索経由、キュレーションメディア経由、そのきっかけとなる手法も速度も多種多様です。


これを分析することで、次はどんな記事を出していこう、という企画につなげることができます。
おかげさまでユーザーに支持される記事も増えてきました。が、もっとそれを増やしていきたいと思っています。


このように、編集とビジネス側を分けることで、お互いに働きやすく効率的に、よいメディアを作って成果につなげていきたいと考えております。

つまり僕なりが、ちゃんと数字の作成はやっておくので、編集は思うように最高の記事を作ることに注力して欲しい。
というわけではてなでは、企業のオウンドメディア運営を手伝う編集者・編集長を募集中です!
hatenacorp.jp