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コンテンツマーケティングのKPIの視点は「オーディエンスを作り、温められているか」(寄稿:いちしま泰樹)

こんにちは、株式会社真摯のいちしま泰樹(@makitani)です。

計測や分析、コンテンツマーケティング領域で企業とその顧客の関係性をより良いものにするための伴走支援をしております。

皆さんはコンテンツマーケティングに取り組む中で、KPI設計の難しさを感じていませんか?

ここではWebサイト(オウンドメディア)でのコンテンツマーケティングを例に、どのような視点でKPIを設けて向き合えば良いのか、そのヒントを紹介いたします。

KPIが「PV」では機能しない

皆さんがWebサイトでコンテンツマーケティングを展開している場合、KPIとしてどのような指標を追っているでしょうか?

聞いてみると、多くのケースで「ページビュー数」「ユーザー数」「コンバージョン数」「検索エンジンの順位」といった「ありがちな指標」が挙がります。指標や項目だけを見れば、通常のWebサイトと視点にほとんど差がありません。

ページビュー数やコンテンツ経由のコンバージョン数、検索エンジンの状況などはもちろん基礎指標として積極的に把握した方が良い指標です。しかしそれらはKPIとして適切ではありません。

例えば、ページビュー数はコンテンツの質やユーザーの質を担保しません。注目を集めたか、集客できたかなどを示すだけです。コンバージョン数も、コンテンツ閲覧直後のコンバージョンであればコンテンツ単体の成果を見ているだけです。どちらも「コンテンツマーケティングが良い方向に向かっているか」を示していません。

コンテンツマーケティングが向かうべきは「オーディエンスを作り、温めること」

改めて、コンテンツマーケティングの定義を再確認してみましょう。アメリカのコンテンツマーケティングの権威ある団体「Content Marketing Institute (CMI)」の定義を引用します。



コンテンツマーケティングとは、明確に定義されたオーディエンスを魅了して関係性を持つために、価値ある興味関心に沿ったコンテンツを制作し配信する戦略的なマーケティングアプローチのことである。その最終的な目的は収益性の高い顧客行動の促進である。

What is Content Marketing? - Content Marketing Institute より

この定義に沿えば、コンテンツマーケティングは「明確に定義されたオーディエンスを魅了して関係性を持つこと」を目指さなければいけません。多くの運営者はコンテンツそのものに着目しがちです。そのため「コンテンツの注目を集める(=ページビュー数の増加や検索エンジン上位を狙う)」という視点になってしまいます。それとは大きく方向が異なります。

コンテンツマーケティングが向かうべきは「思い描くオーディエンスを魅了して関係性を持つこと」、言い換えれば「オーディエンスを作り、温めること」です。その媒介を担うのがコンテンツです。

ではKPIはどのような視点で考えればよいでしょうか?

  • 思い描くオーディエンスを作れているか
  • オーディエンスのエンゲージメントを獲得できているか


「コンテンツマーケティング」という用語から「取り組みの中心はコンテンツ」と捉えがちですが、それは違います。皆さんが中心に捉えなければいけないのは「オーディエンス」なのです。従ってKPIもオーディエンスを中心に据えて設計することになります。

コンテンツマーケティングの戦略の中心に置かなければいけないのは
「コンテンツ」ではなく「オーディエンス」

ではここから「オーディエンスを作れているか」「エンゲージメントを獲得できているか」をどう捉えるかを説明していきます。

オーディエンスを捉えよ

オーディエンスは「自分たちの次のメッセージを届けられる購読者やフォロワー」とも言えます。「再アプローチ可能なユーザーとの関係性構築」がコンテンツマーケティングに必要な要素です。人は、コミュニケーションを取ったことのある人からの方がモノを買いやすいとも言われます。

Content Marketing Instituteを設立したジョー・ピュリッジ氏は、書籍の中でコンテンツマーケティングをこのようにも表現しています。

コンテンツマーケティングは「あなたが何を売るか」ではなく「あなたが何を象徴するか」である。
ジョー・ピュリッジ著『エピック・コンテンツマーケティング』日本経済新聞出版社 2014年より

コンテンツを媒介にして、企業が特定領域を象徴する存在として望むオーディエンスに認識されることが、コンテンツマーケティングの一つのあり方です。

なにより、オーディエンスがいれば安定したトラフィックを期待できます。

オーディエンスがいれば安定したトラフィックを期待できる


オーディエンスを捉える目的は3つあると考えます。

  • 「どれだけ関係性のあるユーザーを作れたか」の把握のため
  • ユーザーの興味関心やライフステージを把握するため
  • 信頼を獲得できているかの把握のため


特に1つめと2つめは具体的な数値把握として取り組みやすい項目です。Webサイトであればアクセス解析ツールを利用することになります。

最初に、然るべきオーディエンスの定義が必要です。運営者が思い描く「明確に定義されたオーディエンス」です。「こういった行動の/属性の/条件のユーザー」を自由な文章で定義してから、ではどうやったらそれを計測可能なものとして近づけられるかを考えるのが良いでしょう。

計測可能なものとしてオーディエンスを捉える視点のヒントを挙げてみます。

  • 通算n回目以上訪問のユーザー、会員ユーザー
  • 特定領域ページを閲覧したユーザー
  • 特定のエンゲージメントアクションをしたユーザー
  • コンバージョン履歴のあるユーザー
  • これらの組み合わせ


まず、「関係性のあるユーザー」として「何度も訪問してくれる常連層」というのはどうでしょうか。「通算n回以上訪問したユーザー」というものです。会員サイトであれば会員ユーザーを軸に設けることもできます。

Webサイトの中の特定領域をオーディエンスに向けたコンテンツとして更新していれば、その特定領域ページの閲覧ユーザーというのも必要な視点です。コンテンツ内の特定アクションを実行したユーザーをより注目したければ、その視点も加えて良いでしょう。

これらの視点の組み合わせで、オーディエンスをレベル別に2~3つほど計測可能なものとして定義します。

計測可能な条件が揃えば、アクセス解析ツールでどうやってそれを捉えられるかを考えていきます。

Googleアナリティクス(GA4)には、その名も「オーディエンス機能」というものがあります。特定条件のユーザーをグルーピングできる機能です。ユーザーのライフステージの把握や「関係性のあるユーザーをどれだけ作れたか」の把握に役立ちます。

Googleアナリティクス(GA4)の「オーディエンス機能」

コンテンツマーケティングに活用できる良い機能なのですが、あまり活用されていない印象です。導入時に設定するよりも、普段の運用の中で気付きを元に設定するタイプの機能だからかもしれません。

オーディエンス機能では柔軟な設定が可能です。例えば以下は「通算4回以上訪問し、ブログなどの更新コンテンツを閲覧したことのあるユーザー」の設定例です。

「通算4回以上訪問し、ブログなどの更新コンテンツを
閲覧したことのあるユーザー」の設定例

少し説明が必要そうです。「ga_session_number」というのが登場しますが、これはユーザーのこれまでのセッション数、通算訪問回数のことです。イベント session_start の発生時に標準で収集するパラメータですが、設定やレポートで利用するには事前にカスタムディメンションの設定が必要です。

このようにして「指定回数以上の通算訪問があり、特定領域の閲覧履歴を持つユーザー」をオーディエンスの一つに指定できます。

この条件のオーディエンスだけではボリュームが小さくなりがちで、取り組みのモチベーションが上がりにくいです。例えばコンテンツ閲覧軸だけのオーディエンスなども設定した方が良いでしょう。ユーザーのライフステージ別に複数のオーディエンスを設けるのです。

いくつかの軸でオーディエンスを準備してデータを蓄積すれば、オーディエンスの状況を可視化できます。「そのオーディエンスはどれぐらいのボリュームか」「その後どれだけコンバージョンに至っているか」「他のオーディエンスとの行動の違いは」といった把握に役立ちます。

「オーディエンス」の状況を可視化

このGoogleアナリティクスのオーディエンスは「次のメッセージを届けられる購読者やフォロワー」ではありません。しかし「コンテンツマーケティングによるオーディエンス構築」の状況把握として非常に有益です。

一方、昨今のアクセス解析が抱える課題を考慮する必要があります。Cookie規制をはじめとしたユーザー識別周辺の事象です。

現在のアクセス解析の領域では、ユーザーの識別や計測は年々難しくなっています。

  • Cookie分散
    • 複数ドメインでの運用
    • ユーザーの複数端末利用
    • アプリ内ブラウザー表示
    • ITP
  • Cookie不同意
  • 広告ブロッカーによる計測ブロック


これらは「コンテンツマーケティングの状況把握」よりも手前の「Webサイトの計測」「ユーザー識別」が抱える課題です。とはいえそのような中でも「オーディエンスの規模と状況把握」の重要性は変わりません。

  • オーディエンスはアクティブか、成長しているか
  • オーディエンスはどのステージか
  • コンテンツは受け入れられているか


これらを把握して、コンテンツマーケティングの取り組みに反映していきます。コンテンツマーケティングの状況把握はそもそも容易ではない中、運用上の大きなヒントになるはずです。

数値としてオーディエンスを捉えられるようになれば、ビジネス側面での成果を評価しやすくなります。

ビジネス視点での評価例。オーディエンスを数値で捉えられれば、
ビジネス側面の評価も可能になる

上記の評価は一例です。上層部からの「コンテンツマーケティングは顧客獲得に対して効果を上げているのか?」という問いにこれまで具体的な数字を提示できなかったのであれば、それまでよりも納得感のある成果として提示しやすくなります。社内におけるコンテンツマーケティングの取り組みへの評価も変わるはずです。

エンゲージメント獲得を捉えよ

コンテンツマーケティングが向き合うべきことの後半にある「オーディエンスを温めること」とは、ユーザーのエンゲージメントを獲得していくことを意味します。エンゲージメントはユーザーによる「関与」の意味です。コンテンツマーケティングの側面では「ユーザーに次のアクションとして何を期待するか」「そのアクションを誘発できているか」を考えていきます。

ユーザーが自発的に関与することもありますが、企業による「アクションの誘発」がエンゲージメント獲得には有効です。

期待するアクションにはいくつか種類があります。「購入」「お問い合わせ」「資料請求」といったコンバージョンを求めるもの、ニュースレター登録、関連記事への誘導、ソーシャルメディアシェアなど、さまざまです。

アクション要素は無計画に置くべきではありません。以下の2つの視点を意識して優先度決定や選択をします。

  • まだ関係性のできていないユーザーにどうすれば「次のメッセージ」を届けられるかを意識する
  • 「短絡的なコンバージョン獲得」ではなく「段階的に受け入れてもらう設計」が必要


アクション要素を分類すると、そのグラデーションの中に「関係性の分岐点」があることに気が付きます。

期待するアクションの種類と「関係性の分岐点」

この「関係性の分岐点」を意識して、アクション要素の優先度や順序を考えます。ソーシャルメディアのアカウントフォローやメール登録といったアクションを誘発できれば、それまでのぼんやりとした関係から少し輪郭を伴った関係へと移り、その関係性に熱を伴わせることができるようになります。

このようなアクション要素をきちんと捉え、指標化することです。Googleアナリティクスのイベントでアクションを計測し、カスタム指標を使えば指標化できます。

Googleアナリティクスのイベント計測にて任意のイベントパラメータで値「1」を取得し、
そのイベントパラメータをカスタム指標で指定することで指標として扱える

主要なアクションを指標化できれば、コンテンツごとのエンゲージメントの状況把握が可能になります。

コンテンツごとのエンゲージメントの把握の例。Looker Studioなどでも展開できる。

ここまで整えば、「どのようなタイプのコンテンツがどのレベルのエンゲージメントを獲得しているか」がわかります。オーディエンスと組み合わせれば、単なる「ページビュー数とシェア数」などよりもはるかに立体的にコンテンツへの反応を把握できます。

コンテンツマーケティングが推し進めるべきはオーディエンスビルディング

コンテンツマーケティングが取り組むべきは「オーディエンスを作り、温めること」と前半に申し上げました。それを分解して、「オーディエンスを捉えること」「エンゲージメント獲得を捉えること」の具体的な手法を説明しました。

ここまで来れば、WebサイトでのコンテンツマーケティングのKPIが「ページビュー数」だけでは足りないこと、視点も適切ではないことを理解できるはずです。コンテンツマーケティングが推し進めるべきは、コンテンツを媒介としたオーディエンス作り(=オーディエンスビルディング)なのです。

コンテンツマーケティングが推し進めるべきはオーディエンスビルディング

コンテンツをオーディエンスに届けてエンゲージメントを獲得し、それを積み重ねてオーディエンスとの関係を温めていく。そして少し先の将来に収益性の高いアクションを期待する(=コンバージョン)。

コンテンツマーケティングの中心に据えるべきはオーディエンスです。これはWebサイトでのコンテンツマーケティングに限ったものではなく、さまざまな領域でのコンテンツマーケティングに当てはまります。

まとめ

コンテンツマーケティングとは「オーディエンスを作り、温めること」であり、その状況把握に必要なKPIの視点は以下の2つである。

  • 思い描くオーディエンスを作れているか
  • オーディエンスのエンゲージメントを獲得できているか

いちしま泰樹 株式会社真摯 代表取締役 コンサルタント
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、Webサイトの分析改善やKPI設計など企業のデジタル領域のビジネス改善を支援している。

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