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Google Analytics 4 以外でウェブサイトを分析・改善するための無料ツール群とオウンドメディアでの活用法(寄稿:小川卓)

株式会社HAPPY ANALYTICS小川卓id:ryuka01)です。

Google Analytics 4はアクセス解析ツールのスタンダードとして、多くの企業やサイトに導入されています。しかし利用ハードルが高いのもまた事実です。数多くあるレポートや、自由度が高すぎて迷ってしまう探索レポート、独自の用語なども沢山あり、利用に苦労されている方も多いのではないでしょうか。

そこで、GA4以外でウェブサイトのユーザー行動を理解し、サイト改善するためのツールを厳選して紹介します。今回紹介するツールは無料で利用できるものをピックアップしています。無料プランと有料プランの両方があるサービスの場合は、その旨を記載しています。また、無料でも期間限定のサービスは追加していません。

数多く紹介することを目的とせず、全て筆者が利用している(あるいは利用経験があるもの)に絞り込み、その中で良かったと思うツール紹介となります。そのため見逃したツールなどあるかもしれませんが、その際はぜひX(@ryuka01)などで教えていただければ嬉しいです!

※ 記事中のスクリーンショットや機能紹介は、記事執筆時点(24年2月)のものです。

1.アクセス解析ツール

例:Matomo

Google Analytics 4以外にも無料のアクセス解析ツールはいくつか選択肢があります。まず紹介するのは「Matomo」です。こちらはGoogle Analyticsと違い自社サーバーにインストールを行いデータをためる方式となります。メリットとしては、データが自社内で完結するため第三者が活用することが無いという事。デメリットとしては、自社サーバーへの設定が必要であるということです。

機能としてはGA4よりシンプルですが、サイトの現況把握には十分ですし本格的に分析を行いたい場合はログデータが保存されているので、ログを自ら分析するといったことも可能です。

なお、自社サーバーに設置が難しい場合は、クラウド版が用意されています。この場合は有料となり50,000ヒットで2,790円/月からとなります。最新の数値は料金表をご覧ください。

他にも特徴的な情報のまとめ方でデータを表示してくれる「Juicer」はアクセス解析ツール機能を無料で提供しており、特に制限等はありません。

Juicerのレポート例

オウンドメディアならではの活用例

GA4がオーバースペックだったり、用語がわかりづらい方にとって、紹介したツールはわかりやすい日本語や機能が整理されているおかげで使いやすいツールとなっています。編集者やデザイナーにとってもGA4より学習コストは低く、自分たちの取り組みの評価が行いやすいのではないでしょうか。


2.ヒートマップツール

例:Microsoft Clarity

ヒートマップツールはアクセス解析が不得意とする、サイト内の細かい動きを視覚的に見ることができるツールです。主な機能としては、スクロールヒートマップ・クリックヒートマップ・ユーザーごとの行動リプレイ機能・注目度が高い箇所などが備わっています。

そんなヒートマップの代表的なツールが「[Microsoft Clarity」です。計測できるデータ量に制限もなく完全に無料で利用することが出来ます。無料の理由として匿名データとしてデータを取得し、このデータを他のMicrosoftサービスの商品強化に利用しているためです(詳しくはこちら)。個人的にも利用する機会が多いツールです。

良い点は機能が豊富であること、どんどん進化していること。そして積極的に(精度はまだ改善の余地があるとはいえ)AI機能の搭載を進めていることです。

例:ユーザー行動10名のAI要約情報

機能が豊富なため初めてヒートマップツールを使う方にとっては少し敷居が高いですが、おすすめのツールではあります。

他にもPV制限はありますが、国産ツールで使いやすいヒートマップツールとして、「ミエルカヒートマップ」(月間3,000PVまで無料)、「User Heat」(期間設定などの制限あり)、「Ptengine」(月間3,000PVまで無料)などがあります。

例:ミエルカヒートマップ

(Disclamer:筆者はミエルカヒートマップを提供しているFaber Companyの取締役です)

オウンドメディアならではの活用例

長文記事やコンバージョンを狙うランディングページの分析にはヒートマップツールは欠かせません。

代表的な使い方としては

  • 1)注目度が高いけど該当コンテンツまでの到達率が低い情報を上に持ってくる
  • 2)成果に繋がっているコンテンツを充実させて、掲載位置を見直す
  • 3)コンバージョンへの導線強化を行うために、ボタンの文言や掲載位置などを変えながら、効果が出るかを確認する

といった用途で流入が多いページを中心に活用して、改善案を反映・評価しましょう。


3.ABテストツール

例:Optimize Next

2023年9月でGoogleが提供していた無料ABテストツール「Google Optimize」が終了しました。そんな中で様々なABテストツールが改めて注目されています。

Google Optimizeと似たインターフェースで無料で利用できるツールの1つが「Optimize Next」になります。PV制限もなくリダイレクトテストとABテストの両方に対応しています。また配信対象を細かく設定したり、結果も同ツール内で確認できるためGoogle Optimizeを利用されていた方にとっては使いやすいツールなのではないでしょうか。

他にも「SiTest」は3,000PV/月という制限がありますが、ABテスト以外にもヒートマップツールやポップアップ機能、フォーム最適化機能などもあわせて利用することができるため、小規模のサイトで1つのツール内で完結したい場合は便利です。

また前述の「Ptengine」(月間3,000PVまで無料)や「Juicer」もABテスト機能を備えていますので、同じように1つのツールで完結したい場合に活用すると良いでしょう。

例:Juicer のABテスト設定画面

オウンドメディアならではの活用例

アクセス解析ツールやヒートマップツールでページの課題を見つけた後は、施策を反映する必要があります。しかし施策は実行してみないと結果が分かりませんし、複数パターンやアイデアが出た時にどれが良いか事前に決めきれないことも多いでしょう。

ABテストツールを使うことで、ブラウザ上でレイアウトや文言、掲載位置などを変更してすぐにユーザーに対して検証を行うことが出来ます。施策実行の難易度を下げ、実行数を増やし評価するためにぜひ積極的に活用したいツールです。

4.EFOツール

例:MouseFlow

EFOツールとはEntry Form Optimizationツールの略で、入力フォームを最適化するために利用する分析及びフォーム作成ツールです。各項目の入力率やどこで離脱したのかなどを確認することが可能です。

大半のEFOツールは有償になります。「EasyMail」はEFOを考慮した無料のフォーム作成ツールになります。自社サーバーに導入して利用することが前提となるため、少し敷居は高いのですが機能制限や作成できるフォーム数に制限はありません。ただ分析機能に関しては限られたものしかありません。

分析機能が充実しているのは「MouseFlow」になりますが、月500件までしか無料プランでは分析できません。「MouseFlow」はヒートマップ関連の機能も備えていますが、無料の範囲で使う場合はフォーム部分に導入するというも1つの選択肢でしょう。

SiTest」は3,000PV/月という制限がありますがEFO機能を備えており、入力開始数・中断数・削除数などを項目ごとに確認できます。

オウンドメディアならではの活用例

オウンドメディアの目的は読んでもらうだけで終わるとは限りません、例えば資料請求やお問い合わせ、セミナー申し込みなどユーザーに情報を入力していただきコンバージョンを獲得することが必要な場合が多いのではないでしょうか。

フォームに来てくれた方は、興味を持ってくれた方なので、使いやすい適切なフォームを作成する事で、入力完了率を改善できます。最後の最後でのがしてしまえば、ユーザーにとってもがっかりですし、企業側にとっても機会損失となります。ぜひEFOツールを使って、最後の導線をスムースにしましょう。


5.キーワード分析ツール

例:SEO順位チェッカー

キーワード分析(SEO分析)ツールは多種多様です。無料から有料まで幅広く、統合的なツールもあれば、単一機能のツールもあります。その中からいくつかピックアップして紹介します。

ツールを使ってみて自社の状況に合うものを選択してみましょう。そのうえで、足りない機能を補うために複数ツールを組み合わせて使うか、統合的なツール(有料ツールが中心)を検討しても良いでしょう。

初期設定が必要で、自社が管理しているサイトのみが対象ですが、やはり欠かせないのはGoogleが提供している「サーチコンソール」ですね。Google検索に正しく情報を伝えたり、エラーを発見したり、自社の検索キーワードやURLごとの表示回数、検索順位、クリック率、流入数を見ることが出来ます。

検索流入を必要としているサイト(ほぼ全てのサイトですね)に関しては欠かせないツールの1つとすでになっており、利用されているかたも多いのではないでしょうか。

例:Googleサーチコンソールのレポート画面

ラッコキーワード」は有料プランもありますが、無料でも利用できる機能が多いツールとなっています。無料でできる範囲は「AIによるタイトル提案(1日10回・それぞれ5タイトルずつ)、キーワード調査、見出し抽出、共起語取得などがあります。

例:ラッコキーワードの上位サイトの見出しch抽出

他にもピンポイントあるいは単一機能で便利な無料サービスもいくつかあります。

SEO 検索順位チェッカー」は無料で利用できるキーワード順位チェックツールです。任意のドメインとキーワード5つを入れると、Google及びYahooで検索順位のチェックを行ってくれます。利用回数などに制限はないのでサクッと利用するのには良いでしょう。

Lynxの「被リンクチェックツール」は、自社サイトがどこからリンクされているかを確認するのに便利です。アクセス解析ツールでも流入があった場合には確認できますが、ドメイン単位までしか見ることが出来ません。しかし被リンクチェックツールを利用することで、どのURLから、サイト内のどのURLにリンクが貼られているか。そして該当ページやドメインの「強さ」がざっくりわかります。

オウンドメディアならではの活用例

何はともあれ大切なのはサイトに人を集めることです。せっかく良いコンテンツでも、その書き方や内容によっては検索からの流入の機会を失ってしまう可能性があります。ユーザーにとって価値があるコンテンツを提供する事は前提とし、その上でチューニングできる部分が無いか、技術的なミスにより損をしていないか。しっかり確認して、直せる範囲で対応を行いましょう。

せっかく用意したコンテンツ、なるべく多くの方に観ていただけるようにチェックを忘れないようにしてください。

6.ページパフォーマンス分析ツール

例:PageSpeed Insights

ページの表示速度はサイトの離脱やコンバージョンに影響してくる重要な要素です。表示速度の結果を確認し、どうすれば改善できるか。この2つの情報を知るためのツールをいくつか紹介いたします。

代表的なツールはGoogleが提供している「PageSpeed Insights」です。URLを入れるだけど、パフォーマンス評価と改善ポイントを教えてくれます。

改善ポイントに関しては技術的に難しい部分もありますので、必要であれば制作会社や社内のエンジニアと相談し、実現可能か(あるいはユーザーにクオリティを下げたコンテンツを提供することにならないか)を確認した上で、対策を行っていきましょう。

例:PageSpeed Insightsの改善提案画面

好きなタイミングでこれらの結果を見たい場合は、Chromeの拡張機能である「Lighthouse」を入れてしまうのも良いでしょう。任意のページで「PageSpeed Insights」の結果を確認できます。

より詳細なデータやアウトプットを求める方は英語ですが、catchpoint社が提供している「WebPageTest」を利用しても良いでしょう。こちらも任意のURLを入力して、検証を行うツールとなっています。

結果画面の詳細ページでは本当に沢山の情報が表示され、改善案も具体的です。ただ要英語力となっていますので、翻訳するか英語ができる方が利用すると良いでしょう。

例:結果画面

オウンドメディアならではの活用例

どんなに良いページを作成しても、ページ表示に時間がかかったり、技術的に表示されないという課題があれば、意味がありません。画像の保存設定で不必要なくらい大きなサイズになっていた、使わないJavaScriptのせいでエラーが出てしまう。こういったミスはユーザーがコンテンツを読む前に離脱してしまう一因となります。

一番最初にユーザーがストレスを感じるポイントなので、表示時間が大きく増やしてしまっていて、短時間で直せそうなものであれば、ぜひ公開後にチェックして改善を行いましょう。これだけで読んでくれる人数が劇的に改善することもあります。

最後に

今回はGA4以外に利用できるウェブサイト改善のための無料ツール群を紹介してきました。数を絞ったつもりですが、それでも沢山のツールがあり大変そうだなと思った方もいるかと思います。

無理に全てを使う必要は無く、「自社の優先して解決するべき課題は何なのか」そして「それらの解決に紹介したツール群は役立つのか」ということを先に考えてみましょう。その上で(無料だからこそ)まずは試してみて、フィーリングが合うかをチェックしてみると良いでしょう。

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今回、寄稿いただいた小川卓氏による過去の連載記事もあわせてご覧ください。

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Google Analytics 4 でミスされやすい・誤解されやすい「設定」7選 - はてなビジネスブログ

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また、Googleアナリティクス4のオンライン勉強会のレポートもご覧いただけます。

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本勉強会の資料は以下よりダウンロードしていただけます。参考資料なども含めて、GA4の理解や移行に役立つ情報をおまとめいただいておりますので、ご希望の方は必要情報をお送りください。(はてなからオウンドメディアに関するセミナーや商品のご連絡をさせていただきますので、あらかじめご了承ください。)

【全66ページ】GA4オンライン勉強会資料ダウンロード

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著者名:小川卓 株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。ウェブアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてウェブ解析の啓蒙・浸透に従事。