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オウンドメディア担当者が知っておきたい GA4 × BigQuery 前編(寄稿:小川卓)

株式会社HAPPY ANALYTICS小川卓id:ryuka01)です。

今回は、全2回で Google アナリティクス4(以下「GA4」) × BigQuery に関して紹介をしていきます。

第1回は、BigQueryについての基本的なご説明と、GA4連携におけるメリットなどについてご紹介していきます。 GA4 × BigQuery を活用することで、オウンドメディアの分析や効果の可視化に大きく役立つと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。

BigQueryとは?

BigQueryとはGoogleが提供しているクラウドサービス「Google Cloud Platform(GCP)」の製品のひとです。

公式ヘルプでは以下のように説明されています。

機械学習、地理空間分析、ビジネス インテリジェンスなどの組み込み機能を使用してデータの管理と分析を支援する、フルマネージドのエンタープライズ データ ウェアハウスです。BigQuery のサーバーレス アーキテクチャにより、SQL クエリを使用して、インフラストラクチャ管理なしで組織の最も大きな課題に対応できます。BigQuery のスケーラブルな分散型分析エンジンを使用すると、数テラバイト、数ペタバイトのデータに対し、数秒もしくは数分でクエリを完了できます。
"BigQuery とは | Google Cloud より引用)

もう少しわかりやすく内容を整理すると、BigQueryには大きく分けて2つの機能があり、1つが「データを保存する」機能です。今回紹介するGA4 をはじめ、様々なデータをBigQueryに送ることで格納することができます。もう1つがデータを抽出する機能です。SQL クエリ(取得したいデータを指示するためのコマンド)を書いてデータを取得することが可能です。こちらはブラウザ上で書くことも可能ですし、他のサービス(BIツールやGoogle スプレッドシート等)から呼び出すことも可能です。

この「保存」と「抽出」の2つの機能を活用する事によって、データの集計や分析が行いやすくなるのがBigQueryです。

BigQueryの画面

注目される3つの理由とBigQueryの料金体系

GA4はご存知の方も多いGoogleが提供しているアクセス解析ツールです。前バージョンであるGoogle Analyticsは2023年7月1日の計測停止がアナウンスされており、多くのサイトや企業がGA4を導入しています。そしてGA4の登場により、アクセス解析においてBigQueryの注目度が大きく増しました。

理由は3つあると筆者は考えています。

1つは「無料版のGA4でもBigQueryにデータを送ることができる」ということです。

今までは有料版のGAのみBigQueryへのデータエクスポートは対応していたのですが、GA4からはすべてのアカウントでBigQueryに対応しました。これにより誰でもBigQueryが利用できる環境が整ったということです。


2つ目は「BigQueryの利用価格」です。

詳しい料金表はこちらの公式ヘルプに記載されていますが、複雑なのでシンプルにまとめると以下のようなかたちです。

  • 主にストレージ料金(データ保存料金)と分析料金(SQLクエリなどを書いた時に見にいくデータ量)に分けられる
  • 分析は毎月1TBまで無料、保存は毎月10GBまで無料となっている
  • 上記を超えた場合は料金が利用料に応じて発生する

では、この分析と保存はどれくらいの量なのでしょうか。GA4で取得しているデータの量や種類(カスタムでイベントを計測しているなど)によって変わってきますが、手持ちのサイトをいくつか確認してみたところ月10万イベントで50~100MB程度でした。そのため単純計算すると月1000万~2000万イベントで約10GBとなります。あくまでも参考値としてご利用ください。

ここで注意が必要なのはページビュー数とかではなくイベント数です。自社のイベント数はGA4のイベントレポートで確認ができます。

エンゲージメント内にある「イベント」レポートの「イベント合計数」を直近30日で確認

いずにれせよ、BigQueryを利用するためにはGoogle Cloud Platformへの登録、そしてその時にクレジットカード情報の登録が必要となります。自社のイベント数などを確認し課金の可能性があるのかは事前に確認しておきましょう。

これだけの割り当てがあれば小中規模のサイトであれば無償範囲に収まるかと思われます。

もうひとつの「分析」料金は、データを取得するたびに、見に行くデータ量の従量制になっています。SQLの実行画面ではクエリを書くと、実行前に確認をすることが可能です。

右上にある「このクエリを実行すると、1.08MBが処理されます」という部分が該当します

他のサービスを利用して呼び出す場合も、同じように利用量が消費されます。この合計が月1TB以内であれば無料で利用することができます。利用量を節約するためにも「必ずデータの利用期間を設定する(そうしないと全期間見にいってしまう)」「分析に必要なデータを選んで抽出する(出しても使わないデータは取得する必要ない)」といったことに気をつけましょう。


3つ目の注目される理由は「アクセス解析ツール内で分析が完結しなくなってきている」になります。

利用者は皆さんの会社やサービスの様々なプラットフォームを利用することで、それぞれにデータが蓄積されていきます。ウェブサイトを始め、ソーシャルメディアや広告、マーケティングオートメーションツール、営業支援ツール、自社データバース、メール配信ツールなどがほんの一例です。

アクセス解析ツールはウェブサイトのみのデータを取得してくれますが、それはユーザー行動の一部です。他のデータも見ないとユーザーの情報としては不完全になります。今までは簡単なデータインポート機能やGoogleの広告ツールとの連携がGoogle Analyticsには用意されていましたが、その範囲は極めて限定的でした。無料版のGA4でもデータを外に出すことができるようになったことで分析の幅が大きく広がりました。例えばGA4でお問い合わせ時にお問い合わせ番号を取得しておき、その後に商談データを紐づけて分析することも可能です。これによりサイトのどのような行動をしていた人が商談に繋がったのかを把握することができます。こちらの例は、次のメリット・デメリットで紹介をいたします。


GA4と連携するメリット・デメリット

ではGA4と連携することでどのような恩恵をうけることができるのか?主なメリット・デメリットを列挙していきます。

主なメリット

GA4のデータを集計前の状態で恒久的に保存することができる

GA4の集計された数値である「レポート」はGA4内でも永続保存となりますが、分析に利用するための「探索」機能では無料版は最大14ヶ月、有償版は最大50ヶ月までしか保存ができません。長期間のデータ保存と分析を行いたい時はBigQueryとGA4を連携をしておくことが必要です。


GA4の画面だけでは出しにくい(出せないあるいは出すのに手間がかかる)データを簡単に出せる

GA4内では用意されたレポートや項目の掛け合わせでしかデータを出すことができず、自由にデータを集計して出すことはできません。しかしSQL クエリを書くことによりその制限を無視して自由にデータを出すことができます。例えば閲覧したページの前後の閲覧ページをまとめて出すことなども可能です。

pageのprevious page(前のページ)と(次のページ)を一括で取得

GA4のデータを他のサービスと連携することが可能になる

BigQueryにデータを格納しておくことで、例えばGoogleの他プロダクト(Google スプレッドシートやLooker Studioなど)そして分析を行うためのBIツール(Tableau, PowerBIなど)でデータを利用することができます。

これによりGA4画面では行いにくかったビジュアリゼーションや集計・分析などが可能となります。またこれらのツールと連携することでSQL クエリを書かなくてもデータを選択して選ぶことが可能なので利用難易度も若干下がります。

上記に伴い自社の他データと連携をして分析を行うことができる

以下はGA4のBigQueryデータと商談データを組み合わせて作成したレポートです。

左側はオフラインでの最終申込をした人、右側は未申込の人です。申し込む人のほうがお問い合わせ(図では「CV」のことを)前に閲覧している時間が長いことがわかり、しっかり検討をしてからお問い合わせする人のほうが成約に繋がりやすいという気づきを得ることができます。

他にもこのようなデータを使うことで「成約した人はお問い合わせ前にどのようなページを見ていたのか」「お問い合わせあとにサイト訪問回数や見ているコンテンツは申込に影響をするのか」「申込時の属性情報(年代・性別など)とウェブサイトの閲覧行動の関係を見る」など顧客理解に役立つ分析をたくさん行うことができます。

主なデメリット

規模の大きいサイトだと料金がかかる

無償枠を超えた範囲は有償となります。例えば分析料金は1TBあたり$7.50、ストレージ料金は100GBあたり$2.30(2023年7月時点での料金。必ず最新の料金プランを公式ヘルプ等で確認してください)と金額的には高くないものの、企業であれば事前の承認などが必要となるでしょうし、SQLをあまり理解せずに意味なく大量のデータを毎日取得していたらコストが膨れ上がってしまいます。

事前の見積もりや利用人数を徐々に増やす、そして利用者への育成などが必要となってきますので注意が必要です。

SQL クエリに慣れる必要がある

他ツールと連携して取得する場合はあまり気にする必要はありませんが、BigQuery上からデータを取得する場合はSQL クエリを書く必要があります。マーケターには敷居が高い内容にはなっており、勉強やまずは用意されたクエリをコピー&ペーストして使ってみるところがスタートとなります。

他ツールと連携して直接SQL クエリを書かない場合も、データ構造を理解しておくことは必要ですし、他ツールとの連携をそもそも設定とメンテナンスをする必要があります。GA4画面だけを利用するよりは難易度が高いことがわかるかと思います。

GA4の画面数値とは必ずも一致しない

データの集計方法や、GA4画面側で設定したGA4内でのデータ取得に影響を与える設定などにより数値がズレます。どちらもそれぞれの定義においては正しいのですが、両方の数値を利用すると混乱につながるおそれがあります。

それぞれ違うことを理解して利用するのか、どちらかにデータ取得や分析を統一する必要があります。

まとめ

今回はBigQueryについての紹介とGA4連携によるメリット・デメリットを紹介してきました。筆者は扱い切れるのであればメリットが非常に大きいと考えており、特に他データと組み合わせて分析を行いたい企業にとっては必須の機能だと考えています。

規模が小さいサイトにとっても無料範囲内で収まると思われるので、データのバックアップ先としてまずはストレージを始めておいても良いでしょう。次回はGA4とBigQueryをどのように連携するのかという手順、そしてどのような形でデータを取得できるかを具体的に見ていきます。お楽しみに!

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今回、寄稿いただいた小川卓氏による過去の連載記事もあわせてご覧ください。

business.hatenastaff.com

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また、Googleアナリティクス4のオンライン勉強会のレポートもご覧いただけます。

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本勉強会の資料は以下よりダウンロードしていただけます。参考資料なども含めて、GA4の理解や移行に役立つ情報をおまとめいただいておりますので、ご希望の方は必要情報をお送りください。(はてなからオウンドメディアに関するセミナーや商品のご連絡をさせていただきますので、あらかじめご了承ください。)

【全66ページ】GA4オンライン勉強会資料ダウンロード

GA4オンライン勉強会の資料をご希望の方は以下より必要情報をお送りください。参考資料なども含めて、GA4の理解や移行に役立つ情報を全66ページにおまとめいただいております。
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著者名:小川卓 株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。ウェブアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてウェブ解析の啓蒙・浸透に従事。