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はてなと一緒に書き手を巻き込んで成長 オウンドメディア「SUUMOタウン」の狙いとは

株式会社リクルート住まいカンパニー様が運営されているオウンドメディア「SUUMOタウン」。はてなではCMSのご提供と、一部のコンテンツの制作、広告掲載を行っています。

SUUMOタウンではたくさんのブロガーやライターの方々が「街」をテーマにした記事を執筆されています。

リクルート住まいカンパニー様は、他にも「SUUMOジャーナル」を始めとするオウンドメディアを以前から運営されていました。そうした既存メディアを持ちながらも、SUUMOタウンを立ち上げた狙いはどこにあったのでしょうか。

SUUMOタウンを立ち上げた横関崇志様と、SUUMOタウン編集担当の岡武樹様にお話を伺いました。

■寄稿がきっかけで、はてなブロガーからSUUMOタウン編集へ

__本日はSUUMOタウンの運営に携わっていらっしゃるお二人にお話を伺うわけですが……。そもそも岡さんはいつも弊社のサービスをご利用されているんですよね。

横関 そうなんですよ。5月に入社してSUUMOタウンの編集を担当している岡なんですが、実ははてなブロガーなんです。

 そうなんです。はてなではTakiという名前で「ウォーキングと美味しいもの」という食べ歩きの記録を目的としたブログを約2年半書いています。

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横関様(左)と岡様(右)。岡様のお顔の上に被せているのは普段ブログで利用されているご自身のアイコンです。

__この記事を読んでTakiさんのブログを知っている方は驚かれるかもしれませんね。「ウォーキングと美味しいもの」のTakiさんといえば、はてなブログでも比較的読者の多いブロガーさんの1人ですし、SUUMOタウンでも以前記事を執筆されています。

 順番としては、SUUMOタウンへの寄稿が先で、入社したのはその後です。SUUMOタウンに記事を書いたことで、やっぱり自分は「街」が好きなんだなと強く思ったんです。あとは、ちょうど自身の長期的なキャリアを考えはじめていたタイミングで、たまたまSUUMOで編集者を募集しているのを知り、まずは話を聞いてみよう、と応募してみました。

__まさにSUUMOタウンがきっかけでの入社だったというわけですね。

横関 当時のマネージャーからTakiさんが応募してきたという話を聞いて、絶対に採用するべきです!って猛プッシュしました(笑)。リクルート住まいカンパニーって、紙のメディアに関わっていた人は多いのですが、ネットっぽい人は意外と少ないんです。岡が入社してくれて、SUUMOタウンを任せるならこの人しかいないと思いましたね。

 最終面接でも自分が執筆したSUUMOタウンの記事のことを聞かれました。どのような狙いでこういう企画にしたのか、どのようなブログ書いているのか、とか。自分のはてなブログの記事を面接官と一緒に見る、というのは新鮮でした。

__打ち合わせ中に、同席している岡さんがTakiさんであると紹介されたときは私たちも大変驚きました……。はてなの仕事を通して、ユーザーさんの人生の後押しができたことは大変光栄ですね。「Takiさん」こと岡さんが入社し、現在のSUUMOタウン編集部は、どのような体制で運営されているのでしょう。

 基本的には私が一人で担当しています。SUUMOの記事全体を見ているデスクがいて最終チェックなどはしてくれますが、ライターの選定や声がけなどは、はてなの担当者とも連携し、私が行っています。

横関 最初に立ち上げたのは私ですが、SUUMOタウンについては現在メイン担当ではなく、サポートとして関わっています。現在は事業開発室企画グループで新規事業を担当しています。7つの部署を兼務しているので、コンテンツマーケティングについて考える部署の業務の一環として、SUUMOタウンにも関わっています。

■SUUMOジャーナルとは別にSUUMOタウンを立ち上げた理由

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__では、ここからはSUUMOタウン立ち上げのお話をお聞きしたいと思います。リクルート住まいカンパニーさんでは、SUUMOタウン以前から「SUUMOジャーナル」などのオウンドメディアを運営されていました。それらの既存メディアを持ちながらもSUUMOタウンを立ち上げた理由は何だったのでしょう。

横関 集客のために考えたことを実験する場所が、新たに欲しいと考えたからです。SUUMOジャーナルは提携先のメディアがいくつかあり、記事を配信しています。そうなると、あまり実験的なことができないんですね。SUUMOジャーナルにはSUUMOジャーナルの方針がすでにあり、それをいきなり変えてしまうのは違うと思ったのです。

また、単発ではない、連続性のある企画を立てていきたかったんです。以前、SUUMOタウンのリリースの前の年にはてなさんとの記事広告で、ブロガーの方とSUUMOの副編集長の対談記事を作ってSUUMO本体に掲載したことがありました。

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横関 よい企画になりましたが、記事広告毎にページを作ると、連続性が持たせにくいんですね。そういった課題を解決して、コンテンツが載せられる場がSUUMOタウンなんです。

■「街への思い」に焦点をあて差別化

__オウンドメディアの中には、SEOを目的とし、クラウドソーシングを活用して記事の量や網羅性を重視するものもあります。一方、SUUMOタウンは「街」をテーマに、著名なブロガーさんの個性を重視した記事を公開されています。独自のスタイルを築かれていますね。

横関 誤解されるといけないので、2つ訂正させてください。Webメディアである以上、SUUMOタウンもSEOを気にしていないわけではありません。ただ、SUUMOとしては別のページで重要なキーワードは対策しているので、SUUMOタウンでは無理に特定のキーワードを狙わなくてもいいかなと考えています。

それから、最初の数記事はクラウドソーシングを使ったこともあります。東京や大阪といった大都市に仕事が集中する中で、クラウドソーシングなら地方の方にも簡単に仕事がお願いできますから、さまざまな街に住んでいる人に記事をお願いできるならと思って、最初の方はクラウドソーシングで発注しました。

ただ、たくさんの人にお願いすると記事の本数も多くなるし、ライターの方のスキルもそれぞれ異なるため、クオリティ・コントロールが難しいんです。ある程度のクオリティの記事を出すとなると編集が目を通さないといけませんし、チェックのコストが膨大になります。これでは業務が回らないと考えて、はてなさんに記事制作をお願いするようになり、並行して自分たちでも書き手を探していく、今のスタイルに落ち着きました。

SUUMOタウンでは、書き手の幅を広げたいという思いがあります。通常の不動産や住宅系の記事だと、不動産や住宅系についてある程度詳しいライターにしかお願いできないんですね。でも「街」への思いについて書いてもらうなら、いろいろな方に書いてもらえるんじゃないかと思ったのです。そこが差別化のポイントにもなるだろうと考えました。

__はてなブックマークコメントでも「次は誰が書くんだろう」と期待するコメントも見られます。

横関 読者のコメントはすごく参考になりますし、チェックして次の企画にいかすようにしています。

私はSUUMO全体のSEOも見ていましたが、SEOの効果で来てくれるユーザーは、なかなかメディア自体のファンにはなってくれません。私にとってSUUMOタウンは、SEOではアプローチしにくい、SUUMOというメディアのファンを増やすという挑戦でもあります。SUUMOタウンでは、SUUMOがこういうこともやっているんだ、ということをもっと多くの人に知ってもらいたいですね。

■メディアとしての軸がブレたらKPIを達成しても意味がない

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__SUUMOタウンのKPIは?

横関 KPIは難しいですね……。SNSでのシェアやはてなブックマークなどは見ていますが、それをKPIにはしたくないんです。被リンクやはてブを狙うなら、まとめ記事を書いたりするのが費用対効果はいいのかもしれないですが、そうやって狙いすぎるとメディアとしての軸がブレるんですね。私や岡が媒体を離れた後、SUUMOタウンの編集担当が「はてブつけばいいんでしょ」ってなると悲しいじゃないですか。

 ネットメディアは流動的で人が変わりやすいので、メディアとしてのしっかりした方針は必須ですね。

メディアとしての軸がブレたらKPIを達成しても意味がないと思っています。ただ、やはり社内からはKPIを求められはします。

横関 他のメディアもそうですが、あまりPVだけを評価するという感じではなくなってきていますね。私は所属している部署の1つでは広告を出す側でもあるのですが、PVだけのサイトに広告を出しても効果は薄いのではと感じています。

__ではSUUMOタウンの軸となるのは?

横関 街と出会うきっかけを作りたい、というのが一つ。もう一つは書き手を大事にすることです。書き手がいないとメディアは成り立ちませんから。

■コンテンツ制作をはてなに依頼する理由

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__SUUMOタウンでは、はてながCMS、コンテンツ制作、誘導枠の提供までを行う「はてなブログMedia寄稿プラン」をご利用いただいています。コンテンツ制作を依頼する上で、はてなに魅力を感じる点があれば教えてください。

横関 はてなは私たちと目線が近いなと思いますね。変な記事は出してこないという信頼があります。SUUMOタウンを一人でやっていたときは、他の業務の余力でやっていたので、できるだけお任せできるのがありがたかったです。

 私がTakiとして、はてなから寄稿のお仕事を依頼いただいた時に、編集を担当してくださった方が、丁寧で妥協しない印象でした。はてなは編集のレベルが他社とくらべても圧倒的に高くて、いい加減なことをしないという信頼感は、その経験からもあります。

編集の立場としては、はてなブロガーの方にアプローチしやすいという利点も感じます。はてなの方々はインターネットに対する感度が高いですし、SUUMOタウンというメディアに関しては、はてなはすごく合っていると思います。

横関 広告、編集、システムを一社でできるのもいいですね。全てバラバラでやるとやりにくいことも多いです。

__具体的にどういった点でしょうか。

横関 たとえば編プロと広告代理店が別々だと、記事を作るのと広告を出すタイミングをそろえるのも難しいですよね。それから、編プロから納品された原稿が、はてブを意識したタイトルやコンテンツになっていないということもあります。はてなはそのへんも考えてくれますし、納品で終わらず流通まで含めて考えてくれる。それが広告・システム・記事作成まですべてやっている強みなんだと思います。

■街はスペックではなくエピソードだと教えてくれた

__今まではてなと制作した記事の中で特に印象に残っているものはなんですか?

横関 すべての記事がお気に入りなのですが、私個人としてはphaさんの京都の記事と、雨宮まみさんの西新宿の記事かなぁ。この2つの記事は、SUUMOタウンの他の書き手に影響を与えたんじゃないかと思っています。

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 街の魅力はスペックだけじゃなくてエピソードでも伝わるんだってことを教えてくれた記事だと思います。

横関 西新宿の記事なんかは、実は西新宿そのものについてはあまり語られていないんです。だけど、書き手が語る日常のエピソードを通して、不思議とその街に行ってみたくなるんですよね。

 それって街というテーマだからこそできることだと思います。

2016年度のSUUMOタウン人気記事はこちら

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■書くことに専念できるのが、はてなブログMediaの魅力

__はてなブログMediaを採択された理由を教えてください。構築や運用にあたり、既存のCMSと比べてよかった点や便利だと感じる点はありますか?

横関 書くことに専念できるというのは大きいですね。CMSによっては、保守とかセキュリティとか大変じゃないですか。はてなブログMediaならインフラはお任せして、自分たちは何も考えなくていい。ブロガーさんに書いていただくのも、はてなブログMediaだと、はてなIDを使って複数人での運用も、セキュアにやれますし、アカウント管理の面でも助かってます。

 自社でシステムを組むと人が変わったときに対応できなくなる恐れがありますが、はてなブログMediaなら人が変わってもマニュアルいらずで運用できるのがいいですね。うちは人の入れ替わりや配置換えも多いので。

■社内外でもSUUMOタウンは好評

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__SUUMOタウンを初めて、社内外からどのような反響がありましたか?

横関 上層部や編集長が集まる場に持っていくと好評ですね。

 社内でも、ユニークで、先取りしているサイトって感じがします。新卒の内定者とかに話を聞くと、たまたまTwitterで流れてきたのを見てめっちゃよかったです!って言われることもあり嬉しいです。

横関 Twitterでエゴサーチはけっこうするのですが、社外の反響も概ね良いですね。記事自体が広告だと思われることもあるようですが……。

 街からお金をもらって書いてるんじゃないか、といったコメントが時々ありますが、街はライターの方と相談して決めていて、あくまで記事はコンテンツで、広告じゃないんですよね。作った記事を、はてなブックマークのネイティブ広告に掲載はしていますが。ただ、そうやってはてなブックマークをフックにSUUMOタウンを多くの人に知ってもらえるというのは魅力的だと思っています。

■新たな取り組みも始めたい

__今後の展望について教えてください。

横関 取材記事なんかもやってみたいですね。若手のネット好き編集者なんかも社内にはたくさんいるので、岡のように活躍できる場を作っていきたいと考えています。

 単に街の「情報」を出すだけでなく、ある書き手の思いやエピソードから今まで知らなかった街を知る・行ってみる・住もう、と思うようなきっかけになるような記事を出していきたいですね。自分に合った街に出会って、そこに住むというのは本当良いことだと思うので。

__ありがとうございました!

街の魅力を伝えるオウンドメディアとして、独自のスタイルを確立しているSUUMOタウン。その背景にあったのは、街を愛する気持ちとメディアとしてのブレない軸でした。今後、どんなブロガーさんが登場するのか、引き続き更新が楽しみです。

はてなブログMediaを利用したオウンドメディア構築をお考えの企業様は、以下よりお気軽にお問い合わせください。

企画・制作:はてな
執筆・写真:山田井ユウキ