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デイリーポータルZが広告を作りながら読者から信頼を得ている理由

イッツ・コミュニケーションズ株式会社 メディア事業部 デイリーポータルZ 編集/広告企画の安藤昌教氏に、デイリーポータルZのKPIや収益源をはじめ、メディアとしてのスタンスや企画の考え方などを伺いました。

2002年10月にニフティ株式会社が運営する「@nifty」のいちコンテンツとしてスタートした「デイリーポータルZ」(開始当初のサイト名は「デイリーポータル」)。「納豆を一万回混ぜる」という食べ物・グルメをテーマにした小ネタから、工作ネタ「飛べ! 洗濯物干しドローン」、また「CGで再現すると事件っぽくなる」という意外な発見ネタまで、デイリーポータルZならではのネタを追い続け、多くのファンを抱えています。

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2017年より、運営がニフティ株式会社から東急グループのイッツ・コミュニケーションズ株式会社に変わってからも、スタンスや記事のテイストを変えることなく毎日の更新を続けています。2018年10月7日には16周年を迎え、リニューアルとともに新たな会員制度「デイリーポータルZをはげます会」をスタートさせました。

dailyportalz.jp

新展開を見せるDPZの謎に包まれたKPIや収益源をはじめ、メディアとしてのスタンスや企画の考え方など、デイリーポータルZの運営元であるイッツ・コミュニケーションズ株式会社 メディア事業部 デイリーポータルZ 編集/広告企画の安藤昌教氏にお聞きしました。

くだらないことに全力で取り組むのがデイリーポータルZ

——安藤さんがデイリーポータルZ(以下、DPZ)に関わるようになったのはいつ頃ですか。

安藤 2004年ごろからライターとしてDPZに記事を執筆していましたが、運営元のニフティ株式会社に入社したのは2008年です。その頃ニフティはイベントハウス「東京カルチャーカルチャー」など新しい事業に乗り出しており、積極的に社員採用を行なっていたのかもしれません。そのタイミングでお声がけをいただきました。

——サイトのスタート時から、ずっと一貫して独自の切り口での記事を追求し続けていますね。

安藤 どちらかというと真面目にコンテンツを作っていますよ。でも正直この仕事をあまり「仕事だから」みたいにとらえていなくて、だから関わっている編集部もライターも、逆にすごく真面目にくだらないことにも取り組んでいけるんだと思いますね。わたしを含め、関係者はみんな「実は真面目なんだ」とばれないよう、気をつけているふしがあります。

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イッツ・コミュニケーションズ株式会社 メディア事業部 デイリーポータルZ 編集/広告企画 安藤昌教氏

——真面目じゃないとできないですよね。

安藤 そうですね。記事は無料ですしなんだかみんな楽しそうにやっているし、「それでどうやってビジネスしているんだ」という質問をよくいただくんですが、これまではそのたびに「いや、儲かってないですよ~」なんて答えていたんですよね。でも正直にいうと、いまは有料会員向けのサービス「はげます会」や、企業と一緒に制作している記事広告などで収益を得ているんです。まだまだ試行錯誤する所はあると思いますが、あまり貧乏だ貧乏だって言うのも違う気がして。

——「はてなビジネスブログ」は、企業のオウンドメディアやコンテンツマーケティングのご担当者様に向けた情報発信をしているのですが、今日はDPZの運営ノウハウについて、Webならではの記事広告の作り方、メディアのファンを獲得するヒントなどを伺えればと思います。

リニューアルしたパッケージをDPZに爆破された養命酒

——ではまずは「主な収益源」とお話されていたDPZの記事広告について教えてください。はてなのスポンサードコンテンツもそうですが、DPZでは直接的な販売を目的としたものではなく、ブランディングやソーシャルで話題になるコンテンツ作りといった印象があります。制作にあたってどういった点に気を付けてらっしゃいますか?

安藤 DPZの記事広告は、そもそも私たちも一般的にいう「広告」だと思って作っていないんです。通常記事と同じ熱意で、サイト内のコンテンツを他社と一緒に制作している、という感じでしょうか。商品をとりあげるにしても、よくあるようにクライアントから製品やサービスの話を聞き、その通りに書くのではなく、自分たちで実際にサービスを使ったり商品を食べてみたりして、感じたことをリアルに記事にするようにしています。

たとえばいま養命酒の記事広告を展開していますが、先方の担当者もこのあたりをよく理解してくれていて。2017年7月に制作した「養命酒の新パッケージが地味すぎるので爆誕してもらった」という記事広告、これなんてまさに普通だったらちょっと広告とは言えないですよね。

——養命酒さんからはどういうオファーをいただいた案件だったのでしょうか。

安藤 そもそもは「リニューアルした養命酒のパッケージが地味すぎて伝わらないので、できるだけ華々しく伝えてほしい」という依頼でした。でも「パッケージの赤色が微妙に鮮やかになった」とか「中栓の液だれ防止機能がさらに強化された」とか、普通に説明しただけでは違いに気づかないくらいのリニューアルだったんです。そもそもリニューアル前から液だれしなかったし。

これをどう派手に見せるかということで、「しかたない、じゃあ爆破するか」という話になりまして。この経緯は記事にも書いてあるんですが。

——経緯は書いてありますが、爆破までの流れは「じゃあ仕方ない、爆破するか」以外にないですね。

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「爆破したほうがいい案件」

安藤 地味なものは地味ですからね。そこを正直に言わないと、読者は「これはきっと広告だから大げさに言ってるな」と見抜くんです。何を言っても地味なリニューアルであることは明確ですから、それはちゃんと伝えた上で、それでも読み物として面白い企画になるよう考えました。

いまのWeb広告はストレートに「使いたい、買いたい」と思わせるよりも、「ネタとして面白い」方が話題になる傾向があります。このあたりのネットの文脈を理解してくれている企業の担当者が増えてきている印象ですね。

——養命酒さんはこの企画案に対して何かおっしゃっていましたか。

安藤 DPZでは、契約時に編集部主導で制作を行うことを了承してもらっています。商品の名称などの事実関係についてはクライアントに確認しますけど、原稿の表現や文言はこちらに一任してもらっています。たとえばライターが「この製品を使ってみたけどちょっと合わなかったな」というのなら、たぶんそれも正直に書いちゃうと思います。「その代わりこういう人には合うかもしれないですよ!」とか、もちろんフォローは入れますけどね。

——その場合、一任いただくための信頼獲得や関係性作りが重要になってきますよね。

安藤 はい、制作の前段階でものすごく綿密に打ち合わせをして、NG表現や注意事項などはきちんと認識を合わせています。この時点で「これなら任せてもいいか」と安心してもらえるようにします。あとはこれまでDPZでは変に炎上した記事もないですし、そもそもサイトのポリシーとして誰かが不快な気持ちになるような記事は載せていません。このあたりの実績とサイトのトーンをあらかじめ理解してもらって、ではあとはお任せします、というところまで持っていく感じですかね。

——養命酒さんの事例にあるように、ダイレクトに「この商品いいですよ」というメッセージの記事広告はDPZにはありませんね。

安藤  そうですね。もともとKPIとして販売目標等を設定することはあまりなくて「読者にいい印象をもってもらいたい」「おもしろいことをしている会社と思われたい」という、広い視野で見たブランディングみたいな依頼が多いですね。単に「買ってください」みたいな直接的な記事広告の依頼は、申し訳ないですが断ってしまうこともあります。それはDPZがやらなくてもいいかなと思うので。

—そうしたスタンスはクライアントの理解がないと成立しないと思うのですが、軌道に乗るまでは大変だったのではないでしょうか。

安藤 まだまだずっと手探りでやっていますよ。おもしろいコンテンツが広告になって、それがサイトの収益にもつながるようになってきたのは、ようやくここ5年くらいだと思います。ちょうどステルスマーケティングなんかが問題になって、読者も記事広告に敏感になってきた頃から、そういうことには縁のなかったDPZに引き合いが増え始めて、徐々に成長してきた感じがあります。

―2011年頃は、ソーシャルメディアで話題になるユニークな企画の事例が蓄積されてきた頃ですよね。はてなでも、その時期からスポンサードコンテンツのご相談をいただくことが増えました。

安藤 うちに比べてはてなさんは明確に「かしこい」イメージがありますよね。それはちょっとうらやましいです。ユーザーにエンジニアも多そうですし、そういう方がブログとかでうまく情報収集と発信のサイクルを活性化させて、サロンみたいな仕組みを作っているんじゃないですか。コンテンツを使ったエンジニア向けのブランディングもはてなさんが先駆けて展開している印象が強いですし。そうした動きを見ていると「うまく強みを生かしているなあ」と思いますよ。

——ありがとうございます。DPZの記事広告では、記事への読者獲得施策として「はてなブックマーク ネイティブ広告」もご活用いただいています。ネイティブ広告の効果など、どのように捉えていただいていますか?

安藤 はてなブックマークで記事をシェアしてくれる人は、僕のイメージなんですが、タイトルだけじゃなく、中身までしっかり読んでから一言コメントをつけてシェアしてくれているように思うんですよね。だから煽りみたいなタイトルとも無縁だし、われわれの編集方針と合っているんじゃないかと思って使わせてもらっています。ブックマークがたくさん付いた記事は、いい意味で拡散しているな、と思うようにしています。

オウンドメディアでできないことをDPZがやる

——記事広告の事例を見ていると、自社でオウンドメディアを運営されている企業様もたくさんいらっしゃいますよね。DPZの企画力やオウンドメディアとは異なる読者層へのリーチなどを目的とされるケースが多いのでしょうか。

安藤 それもあると思いますけど、オウンドメディアはやっぱり企業の中にありますから、対外的にも社内的にも、できないことが多々あるみたいなんですよね。レギュレーションが厳しい業界ほど、やはりその傾向は大きいと思います。

だから「自社でできないことは外でやってもらえばいいのでは」ということになるんでしょうね。自分たちでできないことを、初めからサイトパワーのある外のサイト、たとえばDPZにやってもらう、はてなにやってもらう、みたいな。コンテンツマーケティングが根付いてきた背景には、そういう流れがあるように思います。

——記事広告のクオリティを保つために相当の制作工数とコストをかけていらっしゃいますよね?

安藤 正直すごく手間をかけています。大きな声では言えないですが、人件費とかも含めると制作コストは原価を超えているものもあるんじゃないですかね。でもまあ、クオリティを高いところで維持していないと、読者には飽きられてしまいますからね。結局、読者を笑わすために一つ一つのコンテンツにどれだけつぎ込めるかどうか、このあたりがWeb広告やオウンドメディアの成功を左右すると思います。

企画の成功法則「移動距離とアイディアは比例する」

——いま少しお話しされた、Web広告やオウンドメディアの成功のポイントについて、安藤さんはどのように考えてらっしゃいますか?

安藤 そんな大層なことは言えないんですけど……、強いていえば「自分たちが面白いと思うことをしっかりやること」でしょうか。安易に笑いを取りに行くとすべった時に目も当てられないし、そういう意味では面白いからといって芸人さんに出てもらうのではなく「よくある日常なんだけど、考え方を変えるとおもしろいよね」みたいな切り口を見つけてくるのが僕らの役割だと思っています。だからライターとの企画会議でも、流行り物を追うのではなく、本当におもしろいと思っているコトやモノにこだわってもらっています。そういう姿勢は読者にも伝わるんじゃないでしょうか。

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広告も同じで、本当に体験したり感じたりしたことを、正直に、熱意をもって伝えると、きっと読者はおもしろがって読んでくれると思うんですよ。

インターネットって、運営側と読者との距離が近くて、そのために嘘がつけないメディアだと思っています。テレビだとかっこいい俳優さんが出てきて「この製品、いいね!」なんて言ってもらえば宣伝として成り立つんだと思いますが、Webだとなぜかそうじゃない。ユーザー目線で本当に「いい!」と思うポイントを見つけていかないとダメなんです。ここがインターネット広告の難しさでもあり、おもしろさだと思っています。

——広告企画に限らず、おもしろいネタ探しのコツはあるのでしょうか。

安藤 基本的に、何にでも興味を持って、自分の目で見て感じて体験しないといけないと思っています。僕らの仕事は外にあるモノやコトを取材して、記事にして配信することなので、机の前に座っているよりも外に出た方がいいんです。ネットを巡回してネタ探しても、すでにネットにあるものを再利用しているだけだとあまり意味がないですよね。誰かが言っていたんですが「移動距離とアイディアは比例する」というのは本当だと思っています。
だから編集部は必要なければ席に座っていないし、座っていると周りからはサボっていると思われるような雰囲気があります。

DPZはこれからもくだらないことに取り組みます!

——冒頭で「くだらないことに真摯に向き合っている」というお話がありましたが、16年間クオリティを保って「追い続ける」ことはすごいことですよね。

安藤 記事を数本バズらせたり短期で広告収入を上げたりするのはもしかしたら決まったやり方があるのかもしれないですが、ずっと同じペースで継続することは難しいんじゃないかと思います。どんなに熱意を持ってメディアを始めても、2カ月くらい続ければだいたい書きたかったことって書ききっちゃいますからね。やめずに続けていれば、そこからが面白くなってくるのに、と思います。

——ただ、企業のオウンドメディアの場合、売上への貢献度や成果などさまざまなKPIがあって、なかなか自由にできないという背景もあると思います。

安藤 まあそうでしょうね。それなら、KPIを変えちゃうのもいいんじゃないですかね。KPIをできるだけ数字だけで見られないものにするのも手だと思います。SNSでの反応とかコメントの内容、サイト滞在時間など、評価されるべきポイントはたくさんあると思います。そして実はこちらの方が実際は数字よりも大切だったりする。

―DPZはどのようなKPIをお持ちなのでしょうか。

安藤 DPZも一応PV数などの目標値がありますし、さらにいえば僕は広告企画を担当しているので売り上げ目標も立てられています。当然人事査定もありますし。

―気になる話題ですね。

安藤 私は人事査定はあまり高くないんじゃないかな、よくわからないですが。一応、広告売上では貢献していると思うんですけど、ほら、あまり会社にいないし真面目にやっているようには見えないでしょうし。

——PVなどの目に見える定量的な効果以外にもDPZが成し遂げていることはたくさんありますよね。

安藤 おもしろいことやくだらないことって、気持ちにすこし余裕がないとうまく受け入れてもらえないと思うんです。最近、効率化とか無駄の排除が叫ばれていますよね。わたしたち的には「効率化したらその分余計なところに時間を回せるのにな」と思うんですが実際はそうじゃなくて、効率化が進むと真っ先に切られるのがうちみたいなところじゃないかとも思っています。一見無駄だと思うものでも、価値を認め合って、続けてみると互いに知らないところで意味をなしていることもあるんじゃないでしょうか。そんなおおらかな世の中になったらいいですね。

―イッツ・コミュニケーションズさんからは、運営方針やKPIについてリクエストや要望などはありましたか?

安藤 あまり明確なプレッシャーはないですね。むしろこちらから「イベントやるときに会社のロゴ出した方がいいのかな?」とか気を使っているくらいで。いまのところはありがたいことに、好きにやらせてもらっています。

―それもきっとDPZが信頼されているからこそと思います。最後に企業のマーケターやメディアの運営に関わっている担当者になにかあれば。

安藤 とりとめのない話でしたが、僕らの続けてきたことがマーケターの方やオウンドメディア運営担当の課題解決にちょっとでもヒントになればうれしいですね。苦労されている方は多いと思いますが、いったんデイリーポータルZでも読んで力を抜いてもらえたらと思います。メディア運営は大変な仕事なので、脱力した状態で続けていけるくらいがちょうどいいのかなと。僕もこれまでどおり歩き回って面白いものを探していきます。

―ありがとうございました。

オウンドメディアやコンテンツマーケティングの目的は企業によってさまざまです。はてなビジネスブログでは、今後もさまざまなメディアの担当者のお声を紹介していければと思います。

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企画・制作:はてな
執筆・写真:岩崎史絵