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Xの仕様変更とオウンドメディア活用の考え方(寄稿:森田謙太郎)

Talkbackという会社で代表をしている、森田謙太郎(@motaro)です。

2015年から2023年までの8年間、Twitter社の企業向けマーケティング担当者として、企業向けのビジネス活用セミナーを行っていました。現在は独立してリサーチやコンサルタント業を営んでいます。

今回は、Xの最近の仕様変更をキャッチアップした形で、Xをオウンドメディアと組み合わせて使うための考え方について再整理していきます。

はじめに

2022年10月、イーロン・マスク氏によるTwitter社の買収がありました。

矢継ぎ早になされている仕様変更に関して、漠然とした不安をお持ちの方が多いのではないかと思います。

Twitterとオウンドメディアの組み合わせに関して、「そもそも、これまでうまく使いこなせていたとは言えていなかったし、以前よりも増してXに対してポジティブなイメージを持てない」このような印象になるのも無理はありません。

しかし、これらの仕様変更の1つ1つを、新しいオーナーやCEO、また現場で開発に関わるスタッフのコメントと照らし合わせながら丁寧に紐解いてみると、買収以前から存在していたTwitterの本来の価値の実現、そして新たな付加価値を加える方向性に向かってまっすぐ前進している姿が浮き彫りになってきます。

このプラットフォームが進もうとしている大枠の方向性、そして個々の仕様変更が意味するものを正しく理解することで、オウンドメディアとの効果的な併用のためにすべきこと、すべきでないことが明確になります。

改めて本稿の目的は、

1.Twitter時代から現在のX、そして今後予測される変遷を理解する。
2.その変化を踏まえ、オウンドメディアという観点でXをどう活用するか理解する。

この2点です。


Xが進めている3つのアップデート

X社の公式ブログや、オーナー・CEO・現場社員が日々発信するXでのポストを日々追っていくことで、買収から1年の間に、大きく分けて3つの軸でアップデートが加えられていることが読み取れます。
                         

1.健全な会話の場の提供

立場を超えて自由な発言ができるプラットフォーム。Twitterには「健全な会話(Healthy Conversations)」というキャッチフレーズが、かなり以前から存在していました。

about.twitter.com

買収後、そのキャッチフレーズは「グローバルタウンスクエア(Global Town Square)」という言葉に代わりましたが、向いている大枠の方向性に、変わりはないものとされています

Xでの「会話」とは、投稿(ポスト)に返信(リプライ)がつくだけでなく、いいねやリポストなども含め、情報の発信側と受信側とのリアクションやコミュニケーションがなんらか発生していることを指します。そしてこれらの基本理念をプラットフォーム上で体現するために、会話が多く生まれている投稿は、より多くの利用者に表示されるようになっています。

この傾向は特に最近顕著なものになっており、これまでの活用の基本とされてきた「フォロワー数を増やして、一方通行に自分たちの情報を拡げる」という意識をアップデートさせる必要があります。

2.スーパーアプリ化

これまでの「日々起きるニュースや会話の場」としてだけではなく、よりリッチなエンターテイメントコンテンツを楽しめる場になっていきます。既に一部の機能を通じて、長文の投稿や長尺の映像の投稿ができるようになっています。

さらに、金銭のやり取りや、新しい仕事を見つける場、人と人との出会いを見つける場、YouTuberのようにコンテンツ発信者が利益を生み出す場など、X単体で行えることや、完結できることが増え、多用途化をしていきます。

blog.twitter.com

これが「スーパーアプリ(Everything App)」と呼ばれているもので、X社の収益改善策としても注目されています。

大切なのは、これまでの「自由な会話の場である」という立ち位置はそのまま活かした上でさまざまな機能が追加され多様化する点です。元々はメッセージングやチャットの機能単体のアプリであったLINEやWeChatに、様々な機能が加わりスーパーアプリとなったのと同様のアプローチといえます。

3.機械学習による投稿表示のさらなる最適化

タイムラインに並ぶ投稿の順序は、以前から時系列が標準ではなくなっています。利用者1人1人の興味関心の好みを、普段の利用傾向から学習して、フォローしている人からの投稿でなくとも、その好みに沿った投稿が表示されています。

blog.twitter.com

これに加え、世の中で今まさに盛り上がっている話題に関する投稿も優先して表示されます。

この仕組み(アルゴリズム)によって、利用者自身が想像できる興味関心の範囲外からも、自分の好みに沿った新しい発見を得られやすくなりました。その結果、Xの利用頻度や利用時間が飛躍的に増えたと言われています。

書店でたまたま良い本に出会ったり、推しのアーティストを見るために参戦した音楽フェスで、別のアーティストにも関心が高まる、といった新しい発見をすることがありますが、これと同じことがXでも起きています。


オウンドメディアと組み合わせて使うための新しい考え方

これらのアップデートを踏まえて、オウンドメディアとの組み合わせ、共生のために考え、実践すべきテーマを5つ挙げます。

1.反応やリアクションが生まれやすいテーマを選ぶ

上記で述べた「健全な会話の場の提供」に対応する形で、発信したポストが優先して表示されることを目指すのであれば、自分たちが伝えたいことだけをを発信するのではなく、情報の受け取り手が会話を生み出したり参加する、すなわちリアクションやコメントをしたくなるテーマ選びが肝要です。

Xでは一般的に「これまで見たことがなかった初めての事象」に注目や反応が集まりやすい傾向があります。

たとえば企業が情報発信するのであれば、今まさに起きた出来事を発信するのはもちろん、自身の立場にとっては既知のものであっても、これまで世に知られることのなかった情報は貴重な存在です。

商品やサービスの開発過程や製造の現場、普段は表に出ることのないスタッフの姿やコメントにクローズアップすることは、現在も変わらず注目が集まりやすいものになっています。

2.情報接触頻度を増やす

Xのタイムラインには、フォローしている相手からの投稿だけではなく、フォローしていないアカウントから発信される投稿も併せて表示がされています。この比率は、投稿の表示順序を決めるプロセスの初期段階では1:1という高い割合となっています。

このため、自分たちが発信する投稿の頻度の高さがフォロー解除の直接的な原因になるリスクは以前よりも減っていると考えることができます。一方、自分たちの投稿した際、その投稿がフォローされている相手のタイムラインの上位に表示されているとは限りません。投稿数をこれまでより増やし、情報接触の打席数を上げていく必要があります。

3.コンテンツ誘導の訴求パターンを増やす

1つのコンテンツをリリースした際、X上での告知を1回のみに留める必要は全くありません。その1つのコンテンツが持つ特徴を様々な角度から捉えて、複数の投稿によってコンテンツを紹介します。

例えば起承転結が存在するコンテンツへの誘導をはかる場合、起承転結の4要素を一部切り出した形で、投稿文のバリエーションを作ることができます。「起」だけを切り出して、テーマそのものや読み手が持っている疑問をX上で展開し、その先の構成を読むためにオウンドメディアに誘導を図ります。また、「起と結」といった、頭と最後だけを切り出してX上に展開することで、その結論に至った背景である中間部分を詳しく読むためにオウンドメディアに誘導するといったアプローチをとることもできます。

4. リンクの存在を強調する

OGP設定が正しくされているウェブページのURLをTwitterに貼って投稿した場合、これまではサムネイル画像の下に見出しやURLが自動的に表示され、ウェブサイトへの導線があることが明確になっていました。

現在はこの見出しが画像内に小さく表示される仕様になっており、リンクのない一般的な添付画像との見分けがつきにくくなっています。この仕様は今後さらに変更される可能性があると言われていますが、現状では、投稿の本文中に「詳しくは下の画像をタップ」などの文言を入れたり、OGPのサムネイル画像内でも同様の訴求を行うことで、画像のタップで次への遷移がある旨をこれまでより強くアピールする必要があります。

余談ですが、日本ではXは9割がスマートフォンから利用されていますので、「クリック」より「タップ」と表現するのが適切でしょう。

5.Xからウェブサイトとの導線を「並列化」する

上記4で述べたような、「ツイートにリンクURLを貼って、自社オウンドメディアに誘導する」という、直列で人を運ぶ手段に対する工夫を盛り込む方法についてご紹介しましたが、読み物のコンテンツを通読してもらうことが発信の本来の目的なのであれば、Xのポストにコンテンツの全文を投稿する方法もあります。

これにより、ウェブサイト訪問のステップがを省略され、通読率を高めることにつながる可能性があります。

長文投稿はX Premiumをご利用のアカウントで全角5000文字まで可能で、文章中に画像を入れることもできます。

一方で、Xへの投稿だけでは、Xを利用していない層への接触は行われず、発信して時間が経過してからのアーカイブ性や検索性が大きく制限されることも確かです。

そこで今後は、Xの利用者はXにいながらコンテンツに直接接触できるようにし、検索経由など他の手段による流入をオウンドメディアのウェブサイトでカバーするといった、並列での展開を行うことが理想的でしょう。

商品販売や会員登録が最終ゴールであるため、自社サイトへの誘導が必須であったとしても、その訪問モチベーションを高めるためには、X上でより充実したコンテンツを訴求していく必要がこれまで以上に高まっていることは言うまでもありません。

まとめ

  1. Xは、「自由な会話の場」としての価値をより高めるとともに、価値の多角化に向けた仕様変更が急ピッチで行われている。
  2. 反応の多い投稿は、自由な会話の機会を増やすものとしてポジティブに解釈され、より多くの人に表示される。このため、より受け手の反応が出やすいコンテンツを検討する必要がある。
  3. 機械学習を活用した投稿表示のパーソナライゼーションが進むため、1つのコンテンツや事象に対して様々な切り口をもって投稿の頻度を増やし、情報の受け手との接触頻度を増やす必要がある。
  4. X単体での行動完結を目指すプラットフォーム側の戦略や仕様変更を理解し、Xとウェブサイトの関係性や、それぞれの役割を見直し、並列で情報発信する。

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