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セミナーレポート:デイリーポータルZとはてなが設計するオウンドメディア戦略

はてなでは、企業向けオウンドメディア支援サービスの新しい取り組みとして「デイリーポータルZ」と連携した「はてな MediaSuite Z(以下、MSZ)」の提供を開始します。

2021年8月25日にMSZの取り組みについてご紹介したセミナー「デイリーポータルZとはてなが設計するオウンドメディア戦略」を開催しました。本記事では、セミナーの様子を一部ご紹介します。

はてなとデイリーポータルZによる共同メニュー「はてな MediaSuite Z」とは

はてなでは、オウンドメディアの戦略設計から日々の運営までの総合支援サービス「はてな MediaSuite」を提供しています。

デイリーポータルZとの共同メニューである「はてな MediaSuite Z」は、オウンドメディアコンテンツ企画・制作を、デイリーポータルZ編集部とのパートナーシップによって提供する特別プランです。

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はてな MediaSuite Z 全体像

セミナーレポート

1部:オウンドメディアの戦略設計と事例(はてな)

はてな 執行役員 ビジネス開発本部長の大久保より、当社が提供するオウンドメディア支援サービスにおける「オウンドメディアの戦略設計」についてご紹介しました。

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はてなでは、オウンドメディアの計画と運用の全体像を「オウンドメディアのタスクリスト」として上記のように簡単にまとめています。

その中で最も重要なのは「① 計画」です。戦略を可視化することで、関わるメンバーの目線合わせや合意形成に役立ち、目的やゴールが明確になることで成果につながりやすくなります。

セミナーでは、計画に含まれる「ペルソナ」「カスタマージャーニー」「KPI、KGI」について、「Xカード」を提供するクレジットカード会社のオウンドメディア事例を用いてご紹介しました。


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Xカードの持つ「新規クレジットカード発行全体のシェアは獲得できているものの、10代・20代などの若い世代のファーストカードとして選択されていない」という課題に対して、新規オウンドメディアのターゲットを「新卒〜3年目までの新社会人」とし、ペルソナの詳細を設定していきました。


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カスタマージャーニーを使って、ペルソナとオウンドメディアのタッチポイントを明確にしたり、そのタッチポイントでどんな体験を提供し次のフェーズに進んでもらうかなどを決めていきます。

このオウンドメディアの事例では、設定したペルソナの状態(ニーズが顕在化していない状態 / 顕在化した状態)に合わせて、提供するコンテンツを大きく3つ(A・B・C)に分類しています。

まだニーズが顕在化していない状態のペルソナに向けて「A. クレジットカード・オウンドメディアの認知や消費の魅力を伝えて共感を獲得するコンテンツ」「B. クレジットカードを使った消費スタイルや具体的な利用シーンをイメージして興味喚起できるようなコンテンツ」を提供し、ニーズが顕在化した段階では「C. 自社ブランドのカードであるXカードの特徴や具体的なメリットを訴求したり、疑問を解決するコンテンツ」でXカードの会員登録LPに進んでいくという設計です。

A・Bの記事については、ソーシャルメディアでの拡がりを意識したコンテンツ企画を実行します。一方Cの記事については、ペルソナが具体的に知りたいことや、比較検討に役立つことを狙った企画を行うなど、カスタマージャーニーとタッチポイントに即したコンテンツ企画・制作に取り組みます。


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カスタマージャーニーで設定した狙いに即したKGI・KPIを設計・計測し、数字や状態を見ながら記事の企画や改善に活用していきます。この事例では、認知や興味を目的としたものについてはKPIをUU数やポジティブな定性コメント、SNSシェア数などに設定し、理解を目的としたものに関してはLPへの送客を設定しました。

オウンドメディアの計画では、このKGIやKPIをどのように設計するかが重要です。フェーズに分けたKPIや定期的な改善を行うことで、長期的なマーケティング施策であるオウンドメディアの成果を正しく認識していくことができます。

※ セミナーで使用したスライドとは一部変更しています。また、スライドでは実際のペルソナやカスタマージャーニーを公開用に簡略化して表現しています。


セミナーでお話したオウンドメディアの戦略設計の基本的な考え方については、はてなビジネスブログでもご紹介しています。ぜひ以下の記事もご覧ください。

2部:コンテンツ企画・制作事例(デイリーポータルZ)

デイリーポータルZ 編集長 林さんからは、運営メディア「デイリーポータルZ」の記事だけでなく、広告企画・オウンドメディア記事制作支援の際の企画の考え方や事例をご紹介いただきました。

「運営元や広告主が伝えたいことを伝えながら、どうやって読んでもらうか」を考える際のデイリーポータルZの戦術として

  1. 両立させない
  2. 伝え方で気を引く
  3. 組み合わせで気を引く

という3つのポイントを紹介いただきました。

1. メッセージとコンテンツを両立させない

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メッセージとコンテンツを両立させずに、面白いコンテンツを制作して読んでもらうことで、「あんなメディア(コンテンツ)を認めるなんて度量の大きい会社だ」という印象を与える効果があると言います。

また、そうしたファンによる「小さい熱狂」を企業が応援することは、企業へのポジティブな印象になるとのことです。

2. 伝え方で気を引く

メッセージとコンテンツを両立させない分、デイリーポータルZでは、伝え方で工夫することを大事にしているそうです。

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具体的な伝え方の手法としては以下の4つをご紹介いただきました。

  1. 拡大解釈して画を派手にする
  2. 驚く人、楽しそうな人を登場させる
  3. 家族、社長を出す(社長の場合は雑に出す)
  4. 伝え方のフォーマットをずらす

2つめの「驚く人、楽しそうな人を登場させる」ことによって、その人のリアクションを描くことで自然にその商品やメッセージが伝えたいことが伝えやすくなる効果があるそうです。また「インターネットは家族と社長が大好き」であり「社長はなるべくひどいめに合わせる」と効果があるとのことでした。

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3. 伝え方で気を引く

記事が読まれる工夫として、伝えたいことと「人気のパターン」を組み合わせるというテクニックをご紹介いただきました。

具体的には「高カロリーにする」「高級にする」「懐かしい」「コンプリートする」「(鶏肉か芋を入れる)」というのがデイリーポータルZの人気パターンとのことです。

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デイリーポータルZの作るオウンドメディアコンテンツの効果

デイリーポータルZらしい切り口で企画させれた記事による効果についてもご紹介いただきました。定量的な数字だけでなく、記事末のアンケートやSNSでの発言内容などの定性的な反響もレポーティングすることで記事によるポジティブな影響が可視化されたり、企業の好意度向上の結果として採用に貢献したり、社内が盛り上がるなどの副次的効果などが挙げられました。

その他、セミナーでは実際にデイリーポータルZが手掛けたオウンドメディアの記事事例などをご紹介いただきました。

座談会:はてな MediaSuite Zのご紹介や特徴・フィットするオウンドメディアについて

デイリーポータルZ 林さん・安藤さん、はてな 大久保が座談会形式で「はてな MediaSuite Z」に関するテーマでお話しました。

「はてな MediaSuite Z」に限らず、オウンドメディアによるコンテンツマーケティングは効果が出るまでに一定の時間がかかると言われているマーケティング手法であることに触れ、その前提で長い時間をかけた関係構築を目指せるオウンドメディアと一緒にチャレンジしたいという方針を確認しました。

座談会の中で出た質問(登壇者同士の質問に加えて参加者の方からのご質問を含みます)と回答をいくつかご紹介します。

Q. デイリーポータルZさんのように読者に愛されるメディアになるために意識していることがあれば教えてください

DPZ林さん:こういう風に質問いただくと答えるのが照れくさいのですが.... 担当者と名前を出している点は大きいと思います。人って実際に会うとたいてい相手にいい印象を持って好きになると思うので、「会う」ということは好かれるための魔法のような方法なんですよね。顔が見えていると、直接会ったときのような関係に近づくと思うので、オウンドメディアでも担当者や社内の人が顔と名前を出すことは効果があると思います。

Q. (はてなの事例に出てきた某社オウンドメディアの記事に関連して)記事の企画はどう進めていますか?キーワードプランナーなどで得られる情報からでは企画できないと思うのですが、やはり企画担当の方の属人的な関心や知識によるものが大きいのでしょうか。

はてな大久保:設定したペルソナのインサイトと、そこから作ったカスタマージャーニーに沿って企画していきます。ペルソナが興味を持つポイントを深ぼっていく中で、その周辺の話題から発想を拡げていくという方法が多いです。もちろん企画者の発想力や知識も影響はしますが、あくまでペルソナのインサイトから考えています。

Q. 長年の疑問なのですが、デイリーポータルZさんはどうやって会社から予算を取っているのでしょうか? 特に初期の頃の収益がまだ安定していない時期の予算確保の事情をお伺いできれば幸いです。

DPZ林さん:初期のころは、稟議書を書かずに済むような範囲内でごまかしてやってました。お金の話にお金で返しても仕方ないので、収益性の高い事業のプロモーションをしたりとか、会社のブランディングに貢献するように広報の人と協力したりとか、そういうところに乗っかっていくことで継続できるようにしてました。

DPZ安藤さん:短期的な成果を求めるのであれば、運用にコストのかかるメディアという手法は合わないと思います。アーカイブ性とか、ブランドリフトとか、長期的な目線でやっているという点が理解されるといいですよね。

DPZ林さん:そういう意味ではKPIの設計が重要なので、今回の取り組みとかだとそのあたりをはてなさんが設計してくれるので、フェーズごとのKPIでしっかり効果を可視化していけるように準備できるかなと思います。

Q&A

セミナーではたくさんのご質問をいただきありがとうございました。お時間の都合上、お答えできなかったご質問に関して、本レポート記事でいくつか回答させていただきます。

Q. Xクレジットカードのオウンドメディア事例ですが、これは潜在層~顕在層までカバーされている認識でOKでしょうか?顕在層はキーワードなどである程度明確なところもあると思いますが、潜在層の範囲はどう設定されていますか?

はてな大久保:潜在層に関して、範囲を同設定しているのかという質問かと思います。前提として、最初にターゲットを決めていますので、そこに当てはまる層は潜在層と捉えています。その上で、ペルソナのニーズが顕在化していない状態からカスタマージャーニーを設計しています。パターンによっていくつかのペルソナを用意することもありますが、今回の事例では、1つのペルソナで認識を合わせ、ペルソナの興味関心やインサイトを深掘りしながらコンテンツを企画していきます。

Q. これからオウンドメディアを検討される企業によっては、運営3年分の予算は十分にとれるとしても最終的な費用対効果や成果につながるかどうかは気になるところだと思います。オウンドメディアの戦略や目的設定、価値創出面ではどう設定されることが多いですか?

はてな大久保:オウンドメディアの目的や「成果」の定義はクライアントによってさまざまです。前提としてオウンドメディアは成果が出るまで時間のかかるマーケティング手法になりますので、それぞれのフェーズに分けて、KPIの設計と達成状況を見ていくことをおすすめしています。また、KPIもオウンドメディアの目的によってさまざまです。例えば、固有名詞の検索数、検索流入の割合、SNS言及数・シェア率・SNS言及のポジティブ/ネガティブ分析結果、記事から事業サイトへの送客数、オウンドメディアの購読者数(サブスクリプション登録含む)、リピート訪問率/数(UU)、記事更新数、オウンドメディア滞在時間、広告効果など、さまざまなKPIでオウンドメディアの貢献度を見ていくことができるので、適切なKPIの設計と見直しが重要だと考えています。

Q. PV以外の記事の評価をDPZ編集部ではどう行っていますか?(定性評価)

DPZ林さん:「興奮しているか」「わかりやすく書いているか」どうかを編集部で週3でミーティングがあるので話してます。イベントなどで読者に直接面白かった記事を聞いたりもします。意外な記事が挙がってくることが多いですね。

※ 座談会でいただいた質問のうち、具体的な事例(レポートでは非公開)についてやメニューに関するものは、ここでは割愛させていただきました。ご参加いただいた皆様にはセミナー終了後にはてなよりセミナー資料をお送りしておりますので、ご質問やお問い合わせについては、そちらのメールに返信する形でご連絡いただければ回答させていただきます。

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はてなとデイリーポータルZでは、「はてな MediaSuite Z」でのオウンドメディア立ち上げを希望するご担当者様からのご連絡をお待ちしております。