他社のオウンドメディアの成功事例を、自社にも取り入れたい方は多いと思います。
ただ、企業によって運営・編集に割けるリソースは様々です。
事例は、実際にどれだけのコストをかけて、どんな体制で運営されているかもセットで見るからこそ価値を持ちます。
そこで今回は、オウンドメディアの運用について公開されている情報を整理し、成果だけでなく、それぞれの目的やKPI,運用体制・運用方法などについて紹介していきます。
自社の状況と比較しながら参考にしてみてください。
※記事では公表時点の情報をもとに記載しています。
(以下、掲載順)
株式会社クラシコム/ネスレ日本株式会社/楽天株式会社/株式会社カインズ/アサヒグループ食品株式会社/第一三共ヘルスケア株式会社/店舗流通ネット株式会社/株式会社メルカリ/サイボウズ株式会社/株式会社AIRDO/オリックス株式会社
- オウンドメディアにおける「成功」の定義
- 事例紹介
- 売上の増加に貢献「北欧、暮らしの道具店」(株式会社クラシコム)
- ユーザーの購入金額増加「ネスレアミューズ」(ネスレ日本株式会社)
- 楽天市場への送客数増加「ソレドコ」(楽天株式会社)/はてなブログMedia使用
- 実店舗への送客「となりのカインズさん」(株式会社カインズ)使用
- 広い認知獲得へ「アマノ食堂」(アサヒグループ食品株式会社)
- 商品名・ブランドと企業名の一致に貢献「健康美塾」(第一三共ヘルスケア株式会社)
- ブランディングに貢献、採用にも寄与「店通」(店舗流通ネット株式会社)/はてなブログMedia使用
- 採用とインナーコミュニケーションに好影響「メルカン」(株式会社メルカリ)
- 離職率の低下「サイボウズ式」(サイボウズ株式会社)
- ステークホルダーとのコミュニケーション促進「Yorimichi AIRDO」(株式会社AIRDO)/はてなブログMedia使用
- 株主や個人投資家との接点増「MOVE ON!」(オリックス株式会社)/はてなブログMedia使用
オウンドメディアにおける「成功」の定義
いくつかの成功事例を紹介する前に、オウンドメディアの「成功」の定義について解説します。
オウンドメディアの成功と聞くと、つい「PV数」「売上拡大」などを想像しがちですが、実は他にも成功の指標はたくさんあります。
例えば「企業のイメージアップ」「ブランド認知の拡大」「採用強化」「実店舗の来客数増加」「口コミでの拡散」「社内のコミュニケーション活発化」「サイトへのリピート率向上」「会員数の増大」「離職率の低下」などです。数値として見えにくいところで、効果が表れるケースも少なくありません(とはいえ大抵の場合は数値化し、効果測定できます)。
成功の指標はオウンドメディアの「目的」によって変わります。目的は企業ごとに異なるものです。自社のオウンドメディアを成功に導くためには、目的をはっきり確認し、目的からずれることなく様々な切り口でアプローチし続けることが欠かせません。
これから、成功をおさめているオウンドメディアをいくつかご紹介します。各オウンドメディアの「目的」「成果」に注目しながら、それぞれの事例を確認していきましょう。
事例紹介
ここからは各オウンドメディアの事例をご紹介します。
売上の増加に貢献「北欧、暮らしの道具店」(株式会社クラシコム)
「北欧、暮らしの道具店」は、ECサイトとメディアが融合したオウンドメディアです。2007年にオープンした同メディアの特徴は、商品紹介や購入機能があるECのページと、ライフスタイルを提案する読み物コンテンツを一つのメディアに混在させている点です。商品ページについても、商品の仕様や説明にとどまらず、商品を生活に取り入れた時の具体的なシーンやお手入れ方法、収納方法まで、写真とテキストで丁寧に紹介しています。(ページを見る)
ECサイトとしてだけでなく、今やメディアとしても影響力を持つようになりました。結果、タイアッププログラム「BRAND NOTE PROGRAM」を展開する広告媒体としても活用されています。
項目 | 詳細 |
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開設 | 2007年9月 |
課題 | 需要過多、供給過少な商品の完売が頻発していた → 買える商品が少なくても来訪してくれたお客様に何かお返しをするためにコンテンツを更新 (※1)/ 粗利も購買頻度も低いインテリア雑貨だけを取り扱っていたので、売上の15%を使っていた広告出稿に依存しない集客施策が必要だった (※2) |
目的 | コンテンツによる集客とEC売上増・広告事業の展開 |
編集体制 | 社内に20人の編集者(全員が元読者) (※3) |
編集方針 | 「自分が読みたいもの」をつくる(※2) |
集客 | リピート訪問、Instagramなどの各種SNS、メールマガジン、紙媒体の冊子 (※3) |
KPI | 過去20回以上サイトを訪問した人の割合が50%前後をキープしたまま、絶対数が毎月純増しているか (※4) |
成果 | 売上35億円(2017年)(※5)、広告事業の拡大(※6) |
関連施策 | オリジナル映画「青葉家のテーブル」やインターネットラジオなどマルチメディア展開 |
以下記事を参考に一覧化
※1:全然違う兄妹だからこそ生み出せた「北欧、暮らしの道具店」誕生ヒストリー__青木耕平×佐藤友子× 嶋浩一郎 B&Bイベントレポート【前編】 – クラシコムジャーナル (2018年11月1日)
※2: ECメディアが広告媒体になる、その強みとは──青木耕平×佐藤友子×嶋浩一郎 B&Bイベントレポート【後編】 – クラシコムジャーナル (2018年11月2日)
※3: 96%がリピーター「北欧、暮らしの道具店」 ウェブで作る「らしさ」 (2020年7月15日)
※4: 『MilK』『北欧、暮らしの道具店』が語る、成功するコンテンツ | VISUAL SHIFT|ビジュアルシフト (2017年8月2日)
※5: ネットショップからECメディア「北欧、暮らしの道具店」へ──代表×店長が振り返る、クラシコムの歩み(2) – クラシコムジャーナル (2019年12月18日)
※6: 「北欧、暮らしの道具店」の広告事業が辿ってきた5年間を振り返る – クラシコムジャーナル(2020年8月12日)
ユーザーの購入金額増加「ネスレアミューズ」(ネスレ日本株式会社)
「ネスレアミューズ」はコーヒーやチョコレート、調理食品など、様々な製品を取り扱う「ネスレ日本」が2010年に開設したオウンドメディアです。ブランドを紹介する「ブランドページ」、商品が購入できる「ECサイト」、ユーザー向けの情報発信を行う「コミュニケーションページ」から成ります。コミュニケーションページは、ネスレの商品に関連したウェブマガジン、連載漫画、動画、オリジナルレシピなど多様なコンテンツを発信しています。
コンテンツはECサイトやブランドページへ送客することを目的としており、商品への興味が増加することを狙った内容となっています。(ページを見る)
「ネスレアミューズ」の規模はオープン以来年々拡大傾向にあり、2019年時点で会員数は600万人を超えているとのことです。
項目 | 詳細 |
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開設 | 2010年 |
課題 | オフライン上だけだった顧客とのコミュニケーションを、オンラインでも行いたい。ブランドごとの会員データを管理し、プロモーションに取り組んでいたが、今後は「ネスレ日本」として横断的にマーケティング、プロモーションを進めたい (※8) |
目的 | コンテンツを通してユーザーに様々なブランドのことを知ってもらい、ネスレのファンになってもらうこと (※7) |
編集方針 | 消費者の生活興味に近いコンテンツの発信 (※8) |
集客 | 会員への定期的なメール送信、ブラウザ上でのプッシュツール、Twitter、YouTubeなどの各種SNSでの告知 (※7) |
KPI | 立ち上げ時は会員数やセッション数をKPIとしていたが、近年は継続的な訪問や頻度といった質を重視するKPIに重きを置いている (※7) |
成果 | 「ネスレアミューズ」に来訪経験のある消費者と、そうでない消費者を比較すると、来訪経験のある消費者の方が購入金額が高いことが明らかになっている (※7) |
関連施策 | Twitterでは投票機能の活用、フォロー&リツイートのキャンペーンに取り組むなど効果的に活用。未会員を取り込むための接点として効果を発揮している (※8) |
以下記事を参考に一覧化
※7:「ネスレアミューズ」に学ぶ、継続的に成長するオウンドメディア運営の秘訣|MarkeZine(2019/12/18)
※8: 【顧客のインサイトに寄り添ったコンテンツを】ネスレに聞く、これからのマーケティングで大切なマインドとは|SMMLab(2021/11/26)
楽天市場への送客数増加「ソレドコ」(楽天株式会社)/はてなブログMedia使用
2014年に始まった「ソレドコ」は楽天が運営するオウンドメディアです。趣味を極める人たちが、その楽しみ方を紹介しています。ネットスラングでは、何かに夢中になることを「沼にハマる」と言いますが、「ソレドコ」は沼メディアを自称しています。
それぞれの趣味を楽しむためのアイテムをコンテンツ内で紹介しており、楽天市場に誘導しています。コンテンツでは商品ドリブンではなく、趣味や体験を中心に解説。より便利に、より楽しめるようにするためのアイデアの一つとして、商品を紹介しています。その道のプロのやり方を、趣味にハマり始めた人がお手本として参考できる内容といえます。(ページを見る)
なお、「ソレドコ」ははてなブログMediaを利用しており、はてな編集部も運営に協力しています。
項目 | 詳細 |
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開設 | 2015年4月 |
課題 | 楽天市場の外にいるユーザーへのアプローチ |
目的 | 楽天非会員・若年層ユーザーへのリーチとエンゲージメント |
編集体制 | 社内で主担当1名(記事確認、効果測定、SNS運用など)とサブ担当2名、外部パートナー(はてな)から3名 |
集客 | SEO、各種SNSからの流入 |
KPI | 楽天市場への送客数、UU数 |
成果 | 読者数、楽天非会員の流入、若年層の流入、自然検索が増加・ブランドリフト |
実店舗への送客「となりのカインズさん」(株式会社カインズ)使用
ホームセンターチェーン「カインズ」のオウンドメディア「となりのカインズさん」
は2020年にオープンしました。運営開始から約1年で月間400万PV以上を獲得し、急成長しているオウンドメディアです。
「ホームセンターを遊び倒すメディア」というコンセプト通り、DIYに造詣の深い著名人のインタビュー、料理研究家によるレシピ、知識豊富なカインズメンバーによる知識やノウハウの紹介など、ホームセンターを様々な方向から捉えたコンテンツを発信しています。(ページを見る)
コンテンツのテイストも多様で記事数も豊富です。多種多様な商品を取り扱うホームセンターの売り場を想起させます。
項目 | 詳細 |
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開設 | 2020年6月 |
課題 | 出店拡大、製造小売の施策を行なってきた。今後はIT小売の必要性を感じている (※10) |
目的 | デジタル戦略のコンセプトは「煩わしさを解消すること」「新たな顧客体験を提供すること」「ニーズに沿った提案を行うこと」「お客様とつながること」 (※10)。また、店舗への送客やPVだけを狙うのが目的ではなく、「全社改革」が目的 (※12) |
編集体制 | デジタルマーケティング部(4人)編集長1名、社員編集者2名、エンジニア1名。取材・企画立案は社内だけでなく、外部の制作会社やライターに依頼 (※9) |
編集方針 | ホームセンターに行くと「洗剤を買って、ペットフードも買って、竹竿も買う」といった一貫性のない「ついで買い」をすることがある。オウンドメディアも「ついで買い」を意識。一見すると脈絡がないコンテンツが横に並んでいる面白さを追求している (※12) |
KPI | 「PV数」「遷移率」「読了率」を計測。商品紹介記事アップ後は、売り場検索アプリの検索動向もチェックしている (※9) そのほか、実店舗やECサイトへの送客数、商品購入数 (※11) |
成果 | 「となりのカインズさん」で紹介した商品は売上が伸びている (※10) |
関連施策 | Youtube上で動画配信を行なっており、オリジナルキャラクターによるアニメ、記事連動動画などを公開している |
以下記事を参考に一覧化
※9: 開設から半年で月間150万PV達成! ホームセンターの『雑多感』を演出|広報会議(2021/05)
※10: カインズのデジタル戦略「となりのカインズさん」について創刊編集長に聞く|さくマガ(2021/03/31)
※11: "自由すぎる記事"でバズ連発!「となりのカインズさん」がオープン半年で急成長したワケ|TECH+(2021/01/20)
※12: 担うミッションはCVだけじゃない オウンドメディア「となりのカインズさん」の秘密|MarkeZine(2021/09/06
広い認知獲得へ「アマノ食堂」(アサヒグループ食品株式会社)
フリーズドライ食品のアマノフーズを展開するアサヒグループ食品では、オウンドメディア「アマノ食堂」を2015年より運営しています。アマノ食堂のコンセプトは「おいしい食・人・暮らしのあれこれが集まる場所」。同メディアでは食材や道具の豆知識、料理初心者向けのレシピ、料理研究家や各分野の著名人のコラムなど、食にまつわるコンテンツを公開しています。サイト公開から3年かけて月間PV100万を達成しました。
商品に限らず、レタスの水切り、いちご専門のスイーツ店など、ターゲットとする30代の女性が日々の生活の中で興味、関心を持ちやすい切り口でコンテンツを展開しています。(ページを見る)
項目 | 詳細 |
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開設 | 2015年7月 |
課題 | 30~40代の若年層(メイン顧客は60代)を取り込めていないこと (※13) |
目的 | ターゲットである30代女性を中心とした若年層に向けてメッセージを効率的に伝える (※13) |
編集体制 | 社内2名+社外制作パートナー (※14) |
編集方針 | 企業っぽさ、広告っぽさが感じられる企画を作らないこと (※14) |
集客 | SEO(季節のキーワード、複合ワードでの強み) (※14) |
KPI | PV、セッション数、検索順位 (※14) |
成果 | 3年間で100万PV達成 (※13) |
関連施策 | アマノ食堂公式Twitterで、新商品のツイートのRTをすると実店舗で商品がもらえるキャンペーンを実施。リアルとWebをつなげる施策として230件のRTを獲得し、広く認知を得た (※15) |
以下記事を参考に一覧化
※13: 100万PVを達成した「アマノ食堂」のオウンドメディア成功のポイント (1) ターゲットは30代の女性 | マイナビニュース (2019年3月7日)
※14: 同上記事2ページ目
※15: 同上記事3ページ目
商品名・ブランドと企業名の一致に貢献「健康美塾」(第一三共ヘルスケア株式会社)
美と健康についての様々なお役立ち情報を発信する「健康美塾」は、健康・くすりの情報から、季節に応じたスキンケア、症状やお悩み別のレシピなどを公開しています。同社では、「くすりと健康の情報局」という別のオウンドメディアも運用しており、具体的な症状についての原因や対処方法の解説、商品の案内をしています。対して健康美塾では、予防の観点から知っておきたい情報を提供。毎月プレゼント企画を実施しているのも特徴です。(ページを見る)
最近は、会員制コミュニティー「ちーむ健康美塾(仮)」を展開。会員は、限定イベントへの参加、会員限定コンテンツへのアクセスができるほか、アンケート回答、投稿などの活動でポイントがたまるポイントプログラムも楽しめます。オウンドメディアのファンとさらに特別なコミュニケーションをとることで、ロイヤル顧客の育成につなげています。
項目 | 詳細 |
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開設 | 2016年2月リニューアル |
目的 | 読者の健康に対する関心を高め、クオリティ・オブ・ライフを高めること |
編集方針 | 自社の薬や化粧品に関する情報だけでなく、商品に直接関係ない情報も積極的に盛り込む |
集客 | SEO |
KPI | ユーザーとのコミュニケーションを重視。「健康美塾や商品のファンに向けて恩返しのできるようなメディア」という立ち位置であるため、KPIは追いかけない方針 |
成果 | 商品名・ブランドと企業名の一致・信頼性の向上 |
関連施策 | 会員組織「ちーむ健康美塾(仮)」を軸にした情報交換やファンミーティングをはじめ、アンケート企画などユーザーとの接点を重視した施策を展開しエンゲージメントを高めている |
以下記事を参考に一覧化
オウンドメディアは数より熱量!第一三共ヘルスケアが発信する解決法 - Content Hub(コンテンツハブ) | ナイル株式会社(2020年1月28日)
ブランディングに貢献、採用にも寄与「店通」(店舗流通ネット株式会社)/はてなブログMedia使用
「店通」は、飲食店の出店から退店までをサポートする店舗流通ネット株式会社が運営するオウンドメディア。「飲食業界で生きる人」に向けて、飲食店経営のノウハウや食レポ、健康や暮らしに関する豆知識など様々なコンテンツを発信しています。(ページを見る)
飲食店経営者を読者層としていますが、そうでない人も楽しめる記事になっているのが特徴。社員全員がライターとなって記事を執筆しており、それぞれ自分の得意なテーマで執筆しているため記事の内容にも幅があります。
「店通」は、はてなブログMediaを利用し、運営されています。
項目 | 詳細 |
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開設 | 2016年1月6日 |
課題 | 店舗の出退店をサポートしているが、店舗がオープンしても自社の名前は表に出ないため、新規業界参入者や業界外からの知名度が低い |
目的 | 店舗流通ネット株式会社のブランド確立 |
編集体制 | プロモーション課の4名(WEBコンサルタント1名、サイトデザイン1名、記事構成・進行管理1名、外部連携担当1名)+全社員100名弱がライターとして参加 |
編集方針 | ブランディングするにはまず、社員が良い会社だと思っている必要がある。そのため、全社員がオウンドメディアのライターとして関わり、会社のブランディングに貢献する |
KPI | 立ち上げ時はPV・UU・セッションなどをKPIとしていた |
成果 | (採用面の成果)オウンドメディアを通して事業内容や社内の雰囲気を伝えやすくなったため、「店通」の記事内容を元に志望理由を書く人が増えた |
以下記事を参考に一覧化
「手間をかけて自力でブランディング」 全社員100名弱がライターのオウンドメディア「店通」の裏側を聞いた|はてなビジネスブログ(2016/04/12)
採用とインナーコミュニケーションに好影響「メルカン」(株式会社メルカリ)
2016年に運用開始した「メルカン(mercan)」は、採用広報や採用ブランディングを主な目的に、メルカリグループ内で働く人や社内の出来事、カルチャー、制度などについて発信しているオウンドメディアです。社内では、コンテンツプラットフォームと位置づけています。月間PVは約30万PVとのことで (※18)、採用のオウンドメディアとして、かなり流入が多いサイトです。(ページを見る)
メルカンのコンテンツは、自社内で制作しています。メルカン編集部には多様な部門の社員が参加しており、それぞれの視点からメルカリでの働き方や人材を取り上げて紹介。日本語だけではなく英語サイトも用意しており、海外人材の獲得にも効果を発揮しています。メルカリに入社する人は、皆一度はメルカンを読んで、社内の雰囲気や活躍する人材の情報を確認しているという調査結果もあることから、採用において重要なツールになっているといえるでしょう。また、社内制度の紹介はこれから応募する人だけでなく、社員の理解・浸透につながっています。
項目 | 詳細 |
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開設 | 2016年5月 |
課題 | メディアでの取材記事では伝えるべきメッセージのすべてがコントロールできず、記事がアーカイブされないこともある (※16) |
目的 | 主な目的は採用広報や採用ブランディング (※17) |
編集体制 | HRやPR、カスタマーサービスなど、約5つのチームからメンバー10名 (※17) |
編集方針 | メルカリを知らない読者にとっても価値のあるコンテンツであること (※18) |
KPI | 採用候補者となりうる読者、興味を持ってくれた読者の体験にいかに寄与したか (※19) |
成果 | ①採用 ②認知・ブランディング ③ソース(情報蓄積) ④インナーコミュニケーション (※19) |
以下記事を参考に一覧化
※16: 採用オウンドメディアはやるべき?メルカリのコンテンツプラットフォーム「mercan(メルカン)」運営の裏側 | UNLEASH(2017年3月29日)
※17: 創刊から変わらない、メルカン編集部が大切にするポリシーと実践 | medibaブログ(2019年3月15日)
※18: メルカン歴代編集部員が集結。今までのすべてを明かすミートアップレポートを公開 | mercan (メルカン)(2018年11月9日)
※19: 「読者は何を知りたいのか」を考え抜く。メルカリ採用ブランディングのメソッド | d's JOURNAL(dsj)- 採用で組織をデザインする | セミナーレポート(2019年2月26日)
離職率の低下「サイボウズ式」(サイボウズ株式会社)
2012年から運営されている「サイボウズ式」。チームワークを軸に、会社や組織のあり方、多様な働き方や生き方について発信しています。時には、議論を巻き起こすような他にはないオリジナリティーのあるコンテンツを公開しています。(ページを見る)
コンテンツは、サイボウズとしての価値観、ミッション、社風を社内外に伝える上でも非常に重要な役割を果たしています。会社としての認知度獲得、ブランディングだけではなく、人材採用、インナーブランディングなどにも効果を発揮しています。
項目 | 詳細 |
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開設 | 2012年5月 |
課題 | 離職率の高さ / グループウェア製品の売上が頭打ちに (※20) |
目的 | 認知向上・ブランディング |
編集体制 | 編集部の正社員は5名(うち4名は複業) (※21) |
編集方針 | 他メディアでも読めそうな企画はやらない・二次情報だけで記事にすることはしない・読者のためにならないコンテンツはつくらない、など (※22) |
集客 | 読者経由のSNSシェアなど |
KPI | 設定しない(メンバーの自主性に任せて企画を立ててもらうことを重視) (※23) |
成果 | 立ち上げて3年半で月平均20万PV (※24) / 離職率は、28%から4%に減少 (※25) |
集客 | 「サイボウズ式ブックス」書籍の発行など (※26) |
以下記事を参考に一覧化
※20: 「ブランディング・プロモーション・リクルーティング」"三位一体"を実現するサイボウズ式オウンドメディア術 | オウンドメディアリクルーティング(2019年12月20日)
※21: 自由だから成果が出る──サイボウズ式編集長に聞く、「楽しさ重視」のメディア運営術 | サイボウズ式(2018年8月23)
※22: 「サイボウズ式」はいかにして“KPIなし”で成果を出したか - Content Hub(コンテンツハブ) | ナイル株式会社(2017年6月7日)
※23: 熱量の高いチームを作るのに「社内メール」と「KPI」は要らないワケ | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン (2019年7月4日)
※24: サイボウズ式が、PVより重視する成果とは何か?-Six Apart ブログ|オウンドメディア運営者のための実践的情報とコミュニティ(2016年1月14日)
※25: 離職率4%への道のりは、ビジョンを決め社会へ発信することで定まった。サイボウズのブランディング部長・大槻幸夫さんに聞いた、チームづくりの話 | greenz.jp グリーンズ(2018年2月15日)
※26: 出版事業『サイボウズ式ブックス』を開始 第1作目として、11月7日に『マネジャーの教科書を、捨てよう。(仮)』を出版 | サイボウズ株式会社 (2019年9月2日)
ステークホルダーとのコミュニケーション促進「Yorimichi AIRDO」(株式会社AIRDO)/はてなブログMedia使用
2016年にオープンした「Yorimichi AIRDO」は、北海道と日本各地をつなぐ航空会社「株式会社AIRDO」が運営するオウンドメディアです。「旅」「航空」「北海道」をテーマに記事を発信しています。
読者が思わず寄り道したくなるような北海道の楽しみ方の紹介、ローカルフード特集、客室乗務員に関する記事など、独自性の高いコンテンツが特徴です。ライターも顔出しで登場するため、信頼しやすい記事となっています。北海道以外にもAIRDOの就航地である仙台や名古屋の記事も掲載しています。(ページを見る)
項目 | 詳細 |
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開設 | 2016年12月 |
課題 | 公式サイト内でブログを更新していたが、地域の取材を進める中でブログの枠に収まりきらない要素があることに気づく。公式サイトでは捉えきれない見込み客が訪れるサイトを作る必要が出てきた (※27) |
目的 | 「北海道の魅力を伝えつつ、間接的にAIRDOの認知度を高める」「地域社会への貢献」「格安航空会社や大手航空会社との差別化」の3つ。目的を元に情報発信を行い、公式サイトへの流入増加を目指す (※27) |
編集体制 | 営業部 販売促進グループ2名と外部ライター数名 |
編集方針 | コンセプトは「旅のよりみちをお手伝い」。「想定外によりみちした場所での発見が人生をより豊かにする」という想いを元に、読者のよりみち先を案内している (※27) |
KPI | PV数、公式サイトへの流入数 (※28) |
成果 | リリースして1本目に掲載したローカルコンビニエンスストアに関する記事は話題を呼び、2万以上のFacebookシェアを集めた (※27) |
以下記事を参考に一覧化
※27: 地域と一緒に北海道の魅力を伝えたい 「Yorimichi AIRDO」が挑戦する自社、ライター、地域を巻き込んだメディア作りとは|はてなビジネスブログ(2017/03/15)
※28: 一時休止から再開へこぎつけた「Yorimichi AIRDO」、会社を動かしたのは更新を望む周囲の声|はてなコンテンツマーケティング コンテンツマーケティング事例
株主や個人投資家との接点増「MOVE ON!」(オリックス株式会社)/はてなブログMedia使用
「MOVE ON!」は法人金融・産業、ICT機器、環境エネルギー、事業投資、銀行、生命保険など、多角的に事業を展開しているオリックス株式会社のコーポレートサイトの中に埋め込まれたオウンドメディアです。オリックスの事業に関連する「ニュースコンテンツ」と、オリックスグループの特徴を深掘りする「オリジナルコンテンツ」を発信しています。(ページを見る)
項目 | 詳細 |
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開設 | 2016年12月 |
課題 | プロ野球チームや生命保険関連の事業の印象が強いが、事業内容は多岐に渡っている。しかし、その実態が正しく理解されていないことが多い |
目的 | オリックスグループの実態を正しく理解してもらうこと |
編集体制 | 2名で企画、制作管理、更新作業を行なっている |
編集方針 | コンテンツ閲覧者がコーポレートサイトにある関連コンテンツを能動的に見たくなるように各コンテンツを企画している |
KPI | アクセス数と流入経路、一定時間以上ページに滞在したユーザーの割合、コンテンツ閲覧後どこのページに遷移したか |
成果 | コーポレートサイトへの流入源が増え、サイト全体のトラフィックが上がった |
以下記事を参考に一覧化
オウンドメディアはコーポレートコミュニケーションのハブになる、オリックス「MOVE ON!」の運用で見えてきた可能性|はてなコンテンツマーケティング コンテンツマーケティング事例
* *
今回は、数年間継続的に運営し品質の高いコンテンツを公開しているオウンドメディアをピックアップし、その公開情報をまとめました。
事業内容やターゲット層、目的によって、メディア戦略が大きく変わり、コンテンツの方向性も異なることがわかりました。KPIについては、意外にも設定していないという企業もあり、数字にとらわれず目的にあわせたコンテンツの発信に力を入れていることがうかがえます。また、コンテンツ発信にとどまらず、マルチメディア展開、ファンコミュニティの形成などにも発展させている事例もありました。
すでに運用している場合は自社の方針を改めて振り返ることに、これから運用する場合は戦略策定の参考にしてみてください。
注釈)掲載内容は、公開されている情報をもとに整理したものです。内容は参考記事の公開時点のものとなります。
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