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戦略づくりのヒントにしたい、オウンドメディアの成功事例6選

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すでに多くの企業がオウンドメディアを運用していますが、成功しているメディアの中には目的や運用体制、KPIなどを公開している場合があります。他社のオウンドメディアの情報は、自社のオウンドメディア戦略を考えるにあたって、大いに参考になります。

そこで今回は、オウンドメディアの運用について公開されている情報を整理し、その目的や運用方法などについて紹介していきます。なお、記事では公表時点の情報をもとに記載しています。

(以下、企業名50音順)

アマノ食堂(アサヒグループ食品株式会社)

amanoshokudo.jp

フリーズドライ食品のアマノフーズを販売するアサヒグループ食品では、オウンドメディア「アマノ食堂」を2015年より運営しています。アマノ食堂は、「おいしい食・人・暮らしのあれこれが集まる場所」をコンセプトとしており、食材や道具の豆知識、料理初心者向けのレシピ、料理研究家や各分野の著名人のコラムなど、食にまつわるコンテンツを公開しています。サイトを公開してから3年かけて月間PV100万を達成しました。

商品に限らず、レタスの水切り、いちご専門のスイーツ店など、ターゲットとする30代の女性が日々の生活の中で興味、関心を持ちやすい切り口でコンテンツを展開しています。

項目 詳細
開設 2015年7月
課題 30~40代の若年層(メイン顧客は60代)を取り込めていないこと (※1-1)
目的 ターゲットである30代女性を中心とした若年層に向けてメッセージを効率的に伝える (※1-1)
編集体制 社内2名+社外制作パートナー (※1-2)
編集方針 企業っぽさ、広告っぽさを感じられる企画を作らないこと (※1-2)
集客 SEO(季節のキーワード、複合ワードでの強み) (※1-2)
KPI PV、セッション数、検索順位 (※1-2)
成果 3年間で100万PV達成(※1-1)
関連施策 アマノ食堂公式Twitterで、新商品のツイートのRTをすると実店舗で商品がもらえるキャンペーンを実施。リアルとWebをつなげる施策として230件のRTを獲得し、広く認知を獲得 (※1-3)

以下記事を参考に一覧化
※1-1:100万PVを達成した「アマノ食堂」のオウンドメディア成功のポイント (1) ターゲットは30代の女性 | マイナビニュース (2019年3月7日)
※1-2:同上記事2ページ目
※1-3:同上記事3ページ目


北欧、暮らしの道具店(株式会社クラシコム)

hokuohkurashi.com
「北欧、暮らしの道具店」は、ECサイトとメディアが融合したオウンドメディアで2007年にオープンしました。同メディアでは商品紹介や購入機能があるECのページと、ライフスタイルを提案する読み物コンテンツを一つのメディアに混在させているのが特徴です。商品ページについても、商品の仕様や説明にとどまらず、それを生活に取り入れた時の具体的なシーンやお手入れ方法、収納方法まで、写真とテキストで丁寧に紹介されています。

ECサイトとしてだけでなく、メディアとしても影響力を持つようになったことで、タイアッププログラム「BRAND NOTE PROGRAM」を展開する広告媒体としても活用されています。

項目 詳細
開設 2007年9月
課題 需要過多、供給過少な商品の完売が頻発していた → 買える商品が少なくても来訪してくれたお客様に何かお返しをするためにコンテンツを更新(※2) / 粗利も購買頻度も低いインテリア雑貨だけを取り扱っていたので、売上の15%を使っていた広告出稿に依存しない集客施策が必要だった (※3)
目的 コンテンツによる集客とEC売上増・広告事業の展開
編集体制 社内に20人の編集者(全員が元読者)(※4)
編集方針 「自分が読みたいもの」をつくる(※3)
集客 リピート訪問、Instagramなどの各種SNS、メールマガジン、紙媒体の冊子 (※3)
KPI 過去20回以上サイトを訪問した人の割合が50%前後をキープしたまま、絶対数が毎月純増しているか (※5)
成果 売上35億円(2017年) (※6)、広告事業の拡大 (※7)
関連施策 青葉家のテーブル」やインターネットラジオなどマルチメディア展開

以下記事を参考に一覧化
※2:全然違う兄妹だからこそ生み出せた「北欧、暮らしの道具店」誕生ヒストリー__青木耕平×佐藤友子× 嶋浩一郎 B&Bイベントレポート【前編】 – クラシコムジャーナル (2018年11月1日)
※3:ECメディアが広告媒体になる、その強みとは──青木耕平×佐藤友子×嶋浩一郎 B&Bイベントレポート【後編】 – クラシコムジャーナル (2018年11月2日)
※4:96%がリピーター「北欧、暮らしの道具店」 ウェブで作る「らしさ」 (2020年7月15日)
※5:『MilK』『北欧、暮らしの道具店』が語る、成功するコンテンツ | VISUAL SHIFT|ビジュアルシフト (2017年8月2日)
※6:ネットショップからECメディア「北欧、暮らしの道具店」へ──代表×店長が振り返る、クラシコムの歩み(2) – クラシコムジャーナル (2019年12月18日)
※7:「北欧、暮らしの道具店」の広告事業が辿ってきた5年間を振り返る – クラシコムジャーナル(2020年8月12日)


サイボウズ式(サイボウズ株式会社)

cybozushiki.cybozu.co.jp

2012年から運営されている「サイボウズ式」。チームワークを軸に、会社や組織のあり方、多様な働き方や生き方について発信しており、時には議論を巻き起こすような他にはないオリジナリティのあるコンテンツを公開しています。

コンテンツは、サイボウズとしての価値観、ミッション、社風を社内外に伝える上でも非常に重要な役割を果たしています。会社としての認知度獲得、ブランディングだけではなく、人材採用、インナーブランディングなどにも効果を発揮しています。

項目 詳細
開設 2012年5月
課題 離職率の高さ / グループウェア製品の売上が頭打ちに (※8)
目的 認知向上・ブランディング
編集体制 編集部の正社員は5名(うち4名は複業) (※9)
編集方針 他メディアでも読めそうな企画はやらない・二次情報だけで記事にすることはしない・読者のためにならないコンテンツはつくらない、など(※10)
集客 読者経由のSNSシェアなど
KPI 設定しない(メンバーの自主性に任せて企画を立ててもらうことを重視) (※11)
成果 立ち上げて3年半で月平均20万PV(※12) / 離職率は、28%から4%に減少 (※13)
関連施策 「サイボウズ式ブックス」書籍の発行など (※14)

以下記事を参考に一覧化
※8:「ブランディング・プロモーション・リクルーティング」"三位一体"を実現するサイボウズ式オウンドメディア術 | オウンドメディアリクルーティング(2019年12月20日)
※9:自由だから成果が出る──サイボウズ式編集長に聞く、「楽しさ重視」のメディア運営術 | サイボウズ式(2018年8月23)
※10:「サイボウズ式」はいかにして“KPIなし”で成果を出したか - Content Hub(コンテンツハブ) | ナイル株式会社(2017年6月7日)
※11:熱量の高いチームを作るのに「社内メール」と「KPI」は要らないワケ | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン (2019年7月4日)
※12:サイボウズ式が、PVより重視する成果とは何か?-Six Apart ブログ|オウンドメディア運営者のための実践的情報とコミュニティ(2016年1月14日)
※13:離職率4%への道のりは、ビジョンを決め社会へ発信することで定まった。サイボウズのブランディング部長・大槻幸夫さんに聞いた、チームづくりの話 | greenz.jp グリーンズ(2018年2月15日)
※14:出版事業『サイボウズ式ブックス』を開始 第1作目として、11月7日に『マネジャーの教科書を、捨てよう。(仮)』を出版 | サイボウズ株式会社 (2019年9月2日)


健康美塾(第一三共ヘルスケア株式会社)

www.daiichisankyo-hc.co.jp


美と健康についての様々なお役立ち情報を発信する「健康美塾」は、健康・くすりの情報から、季節に応じたスキンケア、症状やお悩み別のレシピなどを公開しています。同社では、「くすりと健康の情報局」という別のオウンドメディアも運用しており、具体的な症状についての原因や対処方法の解説、商品の案内をしています。それに対し健康美塾では、予防の観点から知っておくとよい情報を提供しています。毎月、プレゼント企画を実施しているのも特徴です。

最近は、会員制コミュニティ「ちーむ健康美塾(仮)」を発足し展開。会員は、限定イベントへの参加、会員限定コンテンツへのアクセスができるほか、アンケート回答、投稿などの活動でポイントがたまるポイントプログラムも楽しめます。オウンドメディアのファンとさらに特別なコミュニケーションをとることで、ロイヤル顧客の育成につなげています。

項目 詳細
開設 2016年2月リニューアル
目的 読者の健康に対する関心を高め、クオリティ・オブ・ライフを高めること
編集方針 自社の薬や化粧品に関する情報だけでなく、商品に直接関係ない情報も積極的に盛り込む
集客 SEO
KPI ユーザーとのコミュニケーションを重視。健康美塾や商品のファンに向けて恩返しのできるようなメディアという立ち位置であるためKPIは明確に追いかけない方針
成果 商品名・ブランドと企業名の一致・信頼性の向上
関連施策 会員組織「ちーむ健康美塾(仮)」を軸にした情報交換やファンミーティングをはじめ、アンケート企画などユーザーとの接点を重視した施策を展開しエンゲージメントを構築している

以下記事を参考に一覧化
オウンドメディアは数より熱量!第一三共ヘルスケアが発信する解決法 - Content Hub(コンテンツハブ) | ナイル株式会社(2020年1月28日)


メルカン(株式会社メルカリ)

mercan.mercari.com

2016年に運用開始した「メルカン(mercan)」は、採用広報や採用ブランディングを主な目的に、メルカリグループ内で働く人や社内の出来事、カルチャー、制度などについて発信しているオウンドメディアで、社内ではコンテンツプラットフォームと位置づけています。月間PVは約30万PVとのことで(※18)、採用のオウンドメディアとして、かなり流入が多いサイトです。

メルカンは、自社内でコンテンツを制作しています。メルカン編集部には多様な部門の社員が参加しており、それぞれの視点からメルカリでの働き方や人材を取り上げて紹介しています。日本語だけではなく、英語サイトも用意しており、海外人材の獲得にも効果を発揮しています。メルカリに入社する人は、皆一度はメルカンを読んで、社内の雰囲気や活躍する人材の情報を確認しているという調査結果もあり、採用において重要なツールになっていることがわかります。また、社内制度の紹介はこれから応募する人だけでなく、社員の理解・浸透につながっています。

項目 詳細
開設 2016年5月
課題 メディアでの取材記事では伝えるべきメッセージのすべてがコントロールできず、記事がアーカイブされないこともある (※15)
目的 主な目的は採用広報や採用ブランディング (※16)
編集体制 HRやPR、カスタマーサービスなど、約5つのチームからメンバー10名 (※16)
編集方針 メルカリを知らない読者にとっても価値のあるコンテンツであること(※17)
KPI 採用候補者となりうる読者、興味を持ってくれた読者の体験にいかに寄与したか (※18)
成果 ①採用 ②認知・ブランディング ③ソース(情報蓄積) ④インナーコミュニケーション (※18)

以下記事を参考に一覧化
※16:採用オウンドメディアはやるべき?メルカリのコンテンツプラットフォーム「mercan(メルカン)」運営の裏側 | UNLEASH(2017年3月29日)
※16:創刊から変わらない、メルカン編集部が大切にするポリシーと実践 | mediba広報ブログ(2019年3月15日)
※17:メルカン歴代編集部員が集結。今までのすべてを明かすミートアップレポートを公開 | mercan (メルカン)(2018年11月9日)
※18:「読者は何を知りたいのか」を考え抜く。メルカリ採用ブランディングのメソッド | d's JOURNAL(dsj)- 採用で組織をデザインする | セミナーレポート(2019年2月26日)


ソレドコ(楽天株式会社)

srdk.rakuten.jp

2014年に始まった「ソレドコ」は楽天が運営するオウンドメディアで、趣味を極める人たちがその楽しみ方を紹介しています。ネットスラングでは、何かに夢中になることを「沼にハマる」と言いますが、「ソレドコ」は沼メディアを自称しています。

それぞれの趣味を楽しむためのアイテムをコンテンツ内で紹介しており、楽天市場に誘導しています。商品ドリブンではなく趣味や体験を中心に解説し、より便利に、より楽しめるようにするためのアイデアの一つとして商品が紹介されており、ハマり始めた人にとってはその道のプロのやり方をお手本として参考にできるようになっています。

なお、「ソレドコ」ははてなブログMediaを利用しており、はてな編集部も運営に協力しています。

項目 詳細
開設 2015年4月
課題 楽天市場の外にいるユーザーへのアプローチ
目的 楽天非会員・若年層ユーザーへのリーチとエンゲージメント
編集体制 社内で主担当1名(記事確認、効果測定、SNS運用など)とサブ担当2名、外部パートナー(はてな)から3名
集客 SEO、各種SNSからの流入
KPI 楽天市場への送客数、UU数
成果 読者数、楽天非会員の流入、若年層の流入、自然検索が増加・ブランドリフト

以下記事を参考に一覧化
【対談レポート】楽天市場「ソレドコ」から学ぶオウンドメディア戦略とブランディング | CONTENT MARKETING LAB(コンテンツマーケティングラボ)(2020年3月5日)
ブログ感覚でオウンドメディアを更新 CMS「はてなブログMedia」に広報が注目する理由 | AdverTimes(アドタイ) by 宣伝会議 (2019年4月2日) KPI箇所を引用

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今回は、数年間継続的に運営し品質の高いコンテンツを公開しているオウンドメディアをピックアップし、その公開情報をまとめました。

事業内容やターゲット層、目的によって、メディア戦略が大きく変わり、コンテンツの方向性も異なることがわかりました。KPIについては、意外にも設定していないという企業もあり、数字にとらわれず目的にあわせたコンテンツの発信に力を入れていることがうかがえます。また、コンテンツ発信にとどまらず、マルチメディア展開、ファンコミュニティの形成などにも発展させている事例もありました。

すでに運用している場合は自社の方針を改めて振り返ることに、これから運用する場合は戦略策定の参考にしてみてください。



注釈)掲載内容は、公開されている情報をもとに整理したものです。内容は参考記事の公開時点のものとなります。

著者名:深谷歩
株式会社 深谷歩事務所 代表取締役。 ソーシャルメディアやブロクを活用したコンテンツマーケティング支援を行う。Webメディア、雑誌の執筆に加え、オウンドメディア制作、運用支援も行う。
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