オウンドメディアの運用において、分析・評価をどうしていいのか悩むことも多いと思います。各月、各週のPV、UU、直帰率、流入元などを確認するだけでいいのか?もっと別の指標で評価するべきなのか?など考え始めるとさまざまな疑問や不安が浮かぶかもしれません。
そこで、今回はWebアクセス解析のプロフェッショナルである、Option合同会社マーケティングテクノロジスト 柳井隆道氏に、オウンドメディアのためのアクセス解析についてお話をうかがいました。
Option合同会社 マーケティングテクノロジスト 柳井隆道
東京大学卒業後、マーケティングやサービス企画、システム開発などに従事。事業会社、広告代理店を経て2014年に独立。テクノロジーやデータの力を使って企業のマーケティング活動を強化する支援をしている。データ計測の設計、実装から分析、時にはマーケティングオートメーションや広告運用などの施策との連携まで扱う。フリーランスで活動していたが、2017年から法人化。
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なお、初心者向けの基本的なGoogle アナリティクスの活用については、以下の記事にまとめています。こちらで紹介しているような数値はすでに見ている、物足りない!という方はぜひ柳井氏のおすすめ分析方法を参考にしてください。
オウンドメディアの分析をしよう!GoogleAnalyticsを活用したアクセス解析のやり方を解説 - はてなビジネスブログ
オウンドメディアのエンゲージメント指標は再訪回数
ー柳井さんは、オウンドメディアの目標設定などについてはどのようにお考えでしょうか。
柳井氏:本サイトでコンバージョンがあるなら、コンバージョンへの誘導を目標にするのが理想ですよね。しかし、現実的にはオウンドメディアから本サイトへの流入、コンバージョンは難しいことが多いです。そもそもコンバージョンを目的にするなら、専用のLPを作成したほうが効果が高いですから、オウンドメディアは長期的なエンゲージメントを高めることを目標に指標を決めるといいと思います。
もう一つは、広いリーチの獲得、集客のためのベースを作ることを目標にすることもできると思います。SEOの観点では、こちらを目指すほうが多く、サイト集客を通してのブランディング、ユーザーとの信頼構築などを重視していることが多いですね。
ーエンゲージメントに関する指標としてはどのような数値がありますか?
柳井氏:再訪回数です。あるページを見た人が、一定の期間内に何回訪問したか、ということを検証するといいと思います。
しかし、訪問回数はGoogle アナリティクスでは、正確に計測できないので、傾向値として参考になる程度です。セグメント設定をしても、特定のページを見た人が、その後何回サイトを訪問したか、コンバージョンしたかは、厳密には見られません。
ですから私は、直接Webサーバーのログを見て分析する方法をおすすめしています。Webサーバーのログを見れば、特定のページを起点に、ユーザーの再訪やコンバージョンの有無を正確に把握できます。
サーバーのログでアトリビューションを見るのが難しい場合は、「Trendemon」などのツールを活用してもよいと思います。
Webサーバーのアクセスログを見るには
ーWebサーバーのアクセスログから分析するのは、オウンドメディア運用担当者には少しハードルが高いように思いますが、柳井さんはどのような形で分析しているのでしょうか。
柳井氏:Webサーバーログについては、最初に分析用のクエリを作っておき、あとはGoogleの無料で使えるダッシュボードである「Google データポータル」にテンプレートを作成して、データが自動的に更新されるようにしておけばいいので、それほど難しくはありませんよ。ローデータを毎回解析するわけではなく、ローデータから必要な情報を引き出して、可視化したもので分析するイメージです。
特定のページを閲覧したあとに、どのくらいコンバージョンしたか、何日後に再訪問したかなど、自分が見たいデータを最初に設定しておくことをおすすめします。
こちらの画面は柳井さんが普段利用されている、Googleデータポータルの画面。Webサイトへのアクセスログを元に、URLごとにどんなキーワードで流入したか、PV、UU、CVRがわかるようになっており、ページのスクロール位置ごとのCVRも比較できるようになっています。
タグを設定すればサーバーログを取得できるツールもあります。私が使っているのは、「Ingestly」というツールで、タグを入れればページのスクロールや動画再生などユーザーのアクションも含めて収集できるので、とても便利です。
Ingestly の使い方はこちら(Ingestly / リアルタイムウェブ解析 - Qiita)を参考にしてください。
また、Google アナリティクス 4 プロパティにアップグレードすると、Big Queryエクスポートが使えるので、それを使っても良いと思います。
ユーザーの動きを把握できるGoogleアナリティクスのユーザーエクスプローラー
ーGoogle アナリティクスの「ユーザーエクスプローラー」では、セッション単位で個別のユーザーの行動を追跡できますが、この機能でユーザー行動を把握したり、コンバージョンするユーザーが接触するコンテンツなどを分析できると思います。こちらの機能はいかがでしょうか?
柳井氏:ユーザーの動きをデータとして知るのに、ユーザーエクスプローラーは有効です。特に、コンバージョンに近い部分のユーザーの動きを見てヒントを得るには、ユーザーエクスプローラーは使い勝手が良いと思います。
ただ、先入観を持ってデータを見てしまうと、自分の期待どおりに動くユーザーを探してしまいかねないので、ユーザーの行動をフラットにみるようにすると良いと思います。ユーザーエクスプローラーでセグメント設定できるので、コンバージョンしたユーザー、SNSシェアからのユーザー、直帰したユーザーなど分けてデータを比較して見てもいいと思います。
コンテンツの価値を検証するには2PV目以降のコンテンツに着目しよう
ーもう一つ、オウンドメディアの指標としてリーチ、集客があるということでしたが、PV、UUなど基本的な指標以外で着目すべきものはありますか?
柳井氏:基本はPV、UUでよいと思いますが、PVはダイレクトよりも流入が多いことがほとんどだと思います。Googleアナリティクスでは、「行動」の「サイトコンテンツ」の「ランディングページ」を見るとよいと思います。セカンダリディメンションでチャネルを指定して、自然検索が多いのか、SNSなのか、参照サイトなのか、流入元ソースを確認するとよいでしょう。これにより、どこから集客できているのかがわかります。集客チャネルによっては、直帰しやすいものもあります。特にSNSなどはその傾向がありますね。
ーオウンドメディアのコンテンツを評価するのに、参考になる指標はありますか?
柳井氏:Google アナリティクスでは、コンテンツの評価そのものができる指標やフレームワークはありませんから、自分でどのようにすれば評価できるか考える必要があります。直帰が多いコンテンツよりも、他のページへの回遊につながるコンテンツのほうがよいコンテンツと言えますので、ページがどのくらい他のページに遷移させたかをチェックしてみるといいと思います。
ただしランディングページの場合は、SNSで話題になって特定のページにアクセス集中することがあります。流入数の増減が多いと、どうしても評価がぶれてしまいますので、2PV目以降のページに限定して、どのくらいページに遷移しているかを評価すると、数値が比較的安定すると思います。
私は、次のような計算式を評価に使っています。
※exitは、ユーザーが離脱した回数で離脱ページで確認できます。
2ページ目以降に限定することで、ある程度興味を持った人に、さらに次のページに進んでもらえるような「中継ぎ」の仕事をしてくれたかどうかを確認できます。この数字を改善していくことで、来訪者をキープできるコンテンツの傾向を把握できますし、関心の高いユーザーを増やしていくことになります。
定性的な評価を含めた記事コンテンツの改修にはヒートマップが有効
ーヒートマップツールなどおすすめのアクセス解析ツールはありますか?
柳井氏:ヒートマップツールでは、「Mouseflow」がおすすめです。ヒートマップだけでなく、レコーディング機能もあるので、ユーザーがどのように動いているのか見られ、定性的な分析をするのに向いています。おすすめの理由は、機能が豊富で安価なことです。
ーオウンドメディアのアクセス解析は、どのくらいの頻度でみればよいのでしょうか。数字が気になり過ぎて頻繁にチェックしてしまう方もいます。
柳井氏:オウンドメディアは中長期的な施策ですから、数字に一喜一憂しないほうがいいのではないかと思いますね。1日に複数本アップするようなニュースサイトは別にして、チェックするのはせいぜい1週間に一度程度で十分だと思います。
ーデータから記事コンテンツの改善を行うときに気をつけるべきことや、既存コンテンツのチューニングのコツはありますか?
柳井氏:オウンドメディアや記事の目的によって、改善方法が変わります。集客のための記事なのか、コンバージョンのための記事なのかによって、期待するユーザーの遷移先やアクションが変わります。実際にユーザーがどう動いているのかを知るには、数値だけではなく、ヒートマップツールを使って、どこをクリックしているか、どこに注目しているかを分析して、記事構成を変えていくのが良いと思います。ヒートマップツールを見て、ボトルネックになっているコンテンツやボタンがあれば、そこを改善していく必要がありますが、それはコンテンツの企画力に関わる問題だと思います。
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柳井さんありがとうございました。オウンドメディアのアクセス解析の参考にしてみてください。
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