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セミナーレポート:サッポロビール / TRENDEMON / はてなが登壇「コンテンツマーケティングの最新トレンドと情報資産活用」を開催しました

はてな営業部とコンテンツのアトリビューション分析ツールを提供するTRENDEMON JAPANは、2020年6月24日(水)に、オンラインセミナー「コンテンツマーケティングの最新トレンドと情報資産活用」を開催しました。

本記事ではサッポロビールが取り組むコンテンツマーケティングと情報資産活用をテーマにした座談会パート第1部のレポートをお届けします。

TRENDEMON JAPANによる「コンテンツマーケティングの最新トレンドとROIの可視化」、座談会パート第2部「オウンドメディア担当者の課題・悩みについて」は、TRENDEMON JAPAN公式ブログのレポートをご覧ください。

登壇者

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  • サッポロビール株式会社 マーケティング開発部 メディア統括グループ シニア メディアプランニング マネージャー 福吉敬氏
  • TRENDEMON Marketing Director 栗田宏美氏
  • TRENDEMON JAPAN 株式会社 セールス/マーケティング統括ディレクター 嶋添心悟氏
  • モデレーター:株式会社はてな サービス・システム開発本部 プロデューサー 磯和太郎

第1部:サッポロビールが取り組むコンテンツマーケティングと情報資産活用

「関心/検討」を促進するポータルメディア「CHEER UP!」

まずはサッポロビール福吉さんが取り組むコンテンツマーケティングについて伺いました。

「シニア メディアプランニング マネージャー」という肩書でサッポロビールのWebマーケティングに取り組む福吉さんですが、その担当領域はデジタルに閉じず「コミュニケーション全般の組み立て」とのこと。そのなかでもデジタルを主軸にしている理由は「データが見えるから」だそうです。

ビール会社がコンテンツマーケティングに取り組む理由については、以下のように紹介しました。

「これまでは、テレビCMを大規模に展開して認知を取っていけば、棚に並んだ数種類のビールから選んでいただいて、ちゃんと商品が動いていました。しかし、いまは数えきれないほどたくさんのビール商品があり、しかも多様化しています。そのなかで選んでいただくには認知を獲得するだけでは足りず、ブランド・商品について理解していただく必要があります。」(サッポロビール 福吉氏)

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サッポロビールでは、デジタルコミュニケーションを「関心・検討」のための「ミドルファネル」の施策として位置付けています。そして、マス広告での認知獲得施策を実行したうえで、商品やブランドへの理解を深め、関心を持ってもらうためにコンテンツを活用しているそうです。コンテンツ制作についても以下のように語りました。

「ブランドのファンは、指名検索でサイトに訪問してくれますが、それだけだとさらに広げたい層にはリーチできなかったんです。そこで、コンテンツに興味を持ってくださった方々を分析した結果、ビール以外に音楽やアウトドアなどへの関心も高いということがわかったんです。それをブランドマネージャーに共有して、ブランドの中に、ターゲットが関心を持つような ビール以外のテーマのコンテンツを作りました。そのなかに商品の情報を置いてくるような作り方のコンテンツを増やしていったんです。」(サッポロビール 福吉氏)

こうした分析によってさまざまなコンテンツを制作したものの、集約した場所が存在しないという課題感から生まれたのがポータルメディア「CHEER UP!」です。過去のコンテンツだけでなく、オリジナルコンテンツも順次更新するなかで、現在は「コンテンツがきちんとブランドに貢献しているか」を検証するフェーズに入っているそうです。

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https://blog.sapporobeer.jp/

コンテンツの価値の可視化はなぜ必要?

株式会社クレディセゾンのオウンドメディア「SAISON CHIENOWA」で編集長を経験後、CVCであるセゾン・ベンチャーズを兼務し、TRENDEMONへの投資を推進。その後、イスラエルに移住しTRENDEMONにジョインされた栗田さんは、オウンドメディア編集長時代を振り返り「コンテンツ価値の可視化」の重要性について以下のように語りました。

「編集長時代は、コンテンツの価値が可視化が難しく、オウンドメディアの効果の定量的な証明ができないという悩みがありました。」(TRENDEMON 栗田氏)

はてな磯和も「Webメディアは広告モデルで成り立ってきた背景により、その成功はPVで語られがちです。同じようにオウンドメディアのKPIにそのまま設定すると、PVが達成できたけど、これってブランドやサービスにどういう貢献があったんだっけ?となりがち」と言います。

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https://corporate.saisoncard.co.jp/diversity/chienowa/

「PVやUUを目標に設定したものの、コアメンバーには、読んでくださる方とのエンゲージメントを高めたり、ブランドへの好意度を高めるためにやるんだから、PVやUUなどの数字に振り回されないようにしよう、と話していたんです。ただ、結局エンゲージメントを見える化できなかったので、迷いを払拭できずに苦労しました。」(TRENDEMON 栗田氏)と当時を振り返りました。

サッポロビールでは、コンテンツをきっかけにブランドサイトに訪問したかどうかを成果指標にしているそうです。「この図のように集客・育成・ブランド接触に分け、流入元はどこで、どんなコンテンツを経て、ブランドサイトに訪問したのかのアトリビューションを細かく可視化し、確認できるようにしています。」(サッポロビール 福吉氏)

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栗田氏は「軸としてブレない指標を持てなかったことが編集長時代の反省。指標がブレるとゴールではなく運用そのものが目的になりがち」と振り返ります。また、可視化できない効果については「読者や他部署の方からの反響を人力で集めてレポート資料化するなど、効果の証明に関して多くのリソースを費やしていたので、計画時に指標と計測についての準備を整えるべきだった」と語りました。

どんなデータを確認して、どう活用するか。必要なのは「オリエン力」

次に「CHEER UP!」の分析で見えたデータや情報をサッポロビールではどのように活用しているかを伺いました。

「先ほど共有した集客・育成・ブランド接触に関する数字を、細かく人力で集めて確認しています。同時にSearch Consoleを見て、ブランドサイト遷移までの貢献度が高い『勝ち筋のクエリ』を探していくんです。それをすぐにCHEER UP!のコンテンツや編成に反映しています。」(サッポロビール 福吉氏)

現在は人力での実施ですが、プライベードDMPに一定量のデータがたまったら自動に切り替える予定だそうです。福吉氏はデータ活用によって「来訪してくれた方にとって、欲しいコンテンツや興味のあるコンテンツに触れることができる気持ちの良いメディアにしていきたい」と語りました。

これからコンテンツマーケティングに取り組む担当者に向けては「福吉さんのお話を聞いていると情報の整理力と仕組み化力が非常に高いなと感じます。人力でやられているとおっしゃってましたが、そもそも必要な情報が何か・どこを見ればそれがわかるかが整理されていて、効率的に確認できるように仕組み化されている。そのうえで、人力でしか見えないことをやられているんだなと思うので、整理して仕組み化しておくことが成功のポイントなのかなと思いました。」と栗田氏。

福吉氏も「コンテンツマーケティングはやるべきことが多いので、むだな作業をやっていると追いつかないんですよね。見るべきデータを整理することはとても大事なこと」としたうえで、見るべきデータをどう決めるかについては「オリエン力が重要」だと言います。

「ゴールが描けて、誰に・どんなメッセージを、どんな文脈で伝えるかが明確になっている。つまりきちんとしたオリエンテーションができる人は、見るべき指標も明確にできるはずです。指標がわかっていれば、データを見たときも、何が出来ていて何が足りてないかも見えていきます。そして、どう変えればいいかもわかってくる。」(サッポロビール 福吉氏)

また、データを見ていく作業は重いものなので、整理したうえで優先度を決めることや、ひとりのノウハウとして閉じずに社内勉強会などで他のメンバーに共有していくことを大切にしているそうです。

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セミナーでは、効果の可視化に貢献するアトリビューション分析ツール「TRENDEMON」を使って、実際に福吉氏が日々見ている管理画面を映しながら、ランディング、ナーチャリング、コンバージョンそれぞれにどのコンテンツが貢献しているかを確認していきました。(※ その他詳細はセミナーを視聴いただいた方限定で特別に公開したものになるので、レポートでは非公開とさせていただきます。)

「黒ラベル」のブランドサイトへの来訪をゴールに設定した管理画面では、成果に貢献しているコンテンツがフェーズ別で大きく異なることがわかりました。福吉氏も「ヱビスビールのコンテンツに触れた人が、黒ラベルのブランドサイトに来ていることはあまり考えていなかったので、目からうろこでした。」と、TRENDEMONによって可視化される情報の価値の高さを評価しました。

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サッポロビールの取り組みを軸に、コンテンツマーケティング、効果の可視化、データの活用、KPIなどについて幅広くお話しました。当日のグラフィックレコーディングもぜひご覧ください。

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@_okinawaaによるグラフィックレコーディング

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はてなでは、オウンドメディアのよくある失敗例として以下のものを挙げています。

  • 目的があいまい
    • オウンドメディをやる目的がきちんと定まっておらず、立ち返る場所がなく迷子になりがち
  • 不適切なKPI
    • 理由なくPVなどを目標に設定してしまうことで、KPIは達成しても効果が実感できないなどの罠にハマる
  • 社内のコンセンサスが取れていない
    • オウンドメディアをやる目的を社内でしっかり認識合わせできておらず、長期の取り組みのなかで価値を理解されない
  • 短期的な目線
    • 短期間で効果が出ることを期待するあまり、長期施策での効果が出るまえに更新停止などの判断に至る

TRENDEMONなどのツールを使って、KPI/KGIがきちんと達成できているかを確認・可視化することは、社内のコンセンサスにも大変重要だと考えています。

こうした失敗に陥らないためにも、オウンドメディアは計画が重要です。戦略設計と運営のポイントについては、以下記事でも紹介していますのでぜひご覧ください。
business.hatenastaff.com

また、はてなでは、クライアントの課題を解決するため、効果の可視化や効果向上のための改善ポイントの把握が可能な「TRENDEMON」との連携により、オウンドメディアCMS「はてなブログMedia」の導入クライアント様に「TRENDEMON」の導入サポートをしています。詳細は以下よりご確認ください。
hatenacorp.jp

当社では引き続き、オウンドメディア担当者のみなさまの課題解決のヒントになるようなセミナーを企画・開催してまいります。ご注目ください。

はてなのコンテンツマーケティング支援

www.hatena.ne.jp