オウンドメディアのコンテンツ(記事)制作を行う際、社内リソース不足やクオリティ担保のため社外のパートナーに発注するケースもあります。オウンドメディアの記事制作を円滑に進めるためにも、制作パートナーとの適切なコミュニケーションは欠かせません。
本記事では、主に編集プロダクションなどのコンテンツ制作パートナーとの適切な付き合い方について、はてなで公開中の「オウンドメディア制作パートナーとの付き合い方マニュアル」の内容を一部抜粋・編集し紹介します。
外部に記事制作を発注している担当者はもちろん、コンテンツを内製だけで行うのが大変でパートナー開拓を進めている方もぜひ参考にしてみてください。
※本記事は前編/後編で公開しています。記事制作の具体的な進め方を「企画」「構成案」「本制作」「公開」の4つのフェーズにわけ、フェーズ毎に解説します。「企画〜構成案作成」までのポイントは、前編記事をご確認ください。
▼前編はこちら
記事の本制作〜公開時、オウンドメディア担当者が意識すべきこと
パートナーに制作してもらう記事の企画が決まり、おおよその内容イメージが把握できる構成案提出・確認が完了したら、制作パートナーは本制作に入ります。
成果物(原稿)チェック時、迷ったらメディアの運用目的に立ち返ろう
本制作が始まったら、メディア運営担当者がチェックする成果物は大きく以下の2種です。
- 初稿
- パートナーによる編集作業が完了した原稿。基本的に構成案に準拠しているが、制作していく中で構成案通りにならなかった部分、あるいはより良くするための調整など、構成案から変化している場合もある
- メディア運営担当者は初稿を確認し、修正要望やフィードバックを制作パートナーに伝える必要がある
- 再校(2稿、修正稿)
- 初稿への修正要望やフィードバックを反映した原稿。著者や取材対象者による修正要望なども合わせて反映されている場合が多い
- メディア運営担当者は初稿への修正要望やフィードバックが反映されているかを確認する。必ずしも要望通りの修正がされていないケースもあるが、改めて俯瞰的に原稿に目を通し、再度内容を確認する
なお、上記はエディター(編集者)のいる制作会社がパートナーとして入っているケースを想定していますが、記事制作の一部を外注するケースもあるのではないでしょうか。
企画立案〜構成案作成、社外スタッフのアサイン(執筆するライター、企画によっては取材対象者、カメラマンなど)までは自社で行い、執筆作業を外部のライターに依頼するパターンも多いです。ライターから提出された原稿を直接チェックする(編集する)際にも、おさえておきたいポイントは同様となりますので、ぜひ参考にしてみてください。
初稿を確認するとき、意識しておきたいポイント
はてなでオウンドメディア支援を行っている企業様と接する中でも「どうやって原稿を確認すればいいか分からない」という声をよく耳にします。制作パートナーから原稿が提供され、確認、フィードバックを行うためには以下のポイントを意識すると、「確認どころ」が見えてくるでしょう。
1. 原稿の変更可能性を意識する
原稿を確認する前に意識しておきたいのは「手元にある初稿がまだ完成形ではない可能性がある」という点です。
たとえば、初稿がまだ「パートナーによる編集が完了した」という段階であれば、その後の著者や取材対象による内容確認を経て変化する可能性があります。そのため制作パートナーに「初稿がどの段階にあるか」を確認し、変更の可能性があればその前提で確認するようにしましょう。初稿を社内で回覧する必要がある場合も、この前提を忘れずに申し送りしておくと、後の工程で齟齬が生まれにくくなり、スムーズに進んでいくはずです。
2. 初稿の確認は構成案とのつけ合わせではない
原稿チェック時、ついつい「構成案通りの原稿になっているか」という視点になりがちです。しかし、コンテンツは往々にして構成案通りにはなりません。書き手が手を動かす中で、あるいは編集作業をするなかで、「こうした方がもっと良くなる」という気づきに基づき調整を行うからです。
こうした「コンテンツをより良く効果的なものに磨いていくための変化」ならばそれを許容した上で、原稿を確認する意識を持っておくことが大切です。ただし、なぜ構成案から変更したのか、その意図は制作パートナーに申し送りしてもらい、変更の可否を評価するための情報は得ておくようにしましょう。
3. ときに個人的な感覚も活用し、確認する
企画や構成案を確認する場合とは異なり、初稿を確認するときは、ときに個人的な感覚が大事になる場合があります。なぜなら、「初めて初稿に目を通す」視点とは、ユーザー(読者)に非常に近いものだからです。
ユーザーに近い視点で初稿を読み「なんだか読みにくい / 分かりにくい」と感じた部分は、積極的にフィードバックすることで、よりユーザービリティの高いコンテンツへと磨いていけるはずです。
ただし、一見すると読みにくく感じる原稿でも、それが著者特有の書き方(いわゆる味)として良い個性になっている場合もあります。こうした個性を平準的なものに調整するのか、あるいは残すのかに関しても、制作パートナーにフィードバックし議論を重ねることが、より魅力あるコンテンツにするために重要です。
4. 迷ったら「そのコンテンツはターゲットに益をもたらすか」に立ち返る
原稿を確認する中で、「この表現でいいのか?」と悩み、パートナーへどうフィードバックするか迷うこともあるはずです。悩んだときは、つねにメディアやコンテンツがターゲットとしているユーザーが楽しめるか、メリットを感じてくれるか、という視点や、自社とユーザーの接点になり得るか、といった原点である「メディアの運用目的」に立ち返ることが大事です。
原点に立ち返ることで、「ユーザーはこのトピックに関してビギナーなので、もっと分かりやすくしてほしい」などの、ジャッジの基準が生まれます。コンテンツを読むユーザーへの配慮を、常に心がけるようにしましょう。
確認した原稿を制作パートナーに戻す際、意識しておきたいポイント
内容をおおよそ確認し、制作パートナーに戻すときにもいくつか意識しておきたいポイントがあります。いずれもつい後回しにしたり、見落としたりしがちな要素ですが、はじめの段階から意識しておくことで、その後の制作進行がグッとスムーズになるはずです。
1. 初稿が社内のレギュレーションに対応できているか
制作パートナーはあくまで社外の存在であり、ガイドラインを共有していたとしてもレギュレーションやメディア運用企業内のマーケティングやPRの文脈を完全に把握するのは困難です。
そのため初稿確認の段階で、原稿が表現・表記に関するレギュレーションにそぐうものになっているかはこのタイミングでしっかりチェックし、修正すべき箇所があればパートナーに伝えつつ戻しましょう。
2. 「さみだれ戻し」を避け、制作コストを抑える
コンテンツを制作パートナーに戻す際は、できるだけ戻す回数を少なくするのが、制作をスムーズにするポイントになってきます。
特に、メディア運用担当者以外(上長、広報や法務など)の部署の原稿確認が必要な場合は、注意が必要です。各部署のフィーバックをぱらぱらとパートナーに伝える、いわゆる「さみだれ戻し」になってしまうと、その都度、連絡〜修正〜確認というプロセスが増え、制作に必要なコストが上昇していってしまいますし、制作パートナー側も混乱してしまいます。
社内で複数人の確認、フィードバックが必要な場合、関係者のフィードバックを集約した上で制作パートナーに戻すようにすると効率的です。
再校(2稿、修正稿)の確認は原則的に初稿への「修正箇所の確認」と考える
修正された原稿を確認するときは、基本的に依頼した修正やフィードバックがコンテンツに反映されているかをチェックするもの、と考えておきましょう。この段階で内容に関わる修正・変更をリクエストすると、修正作業〜著者や取材対象への確認〜修正内容の再度の確認というプロセスが再び発生し、さらに制作コストが上昇してしまいます。
ただし、コンテンツにクリティカルな問題が発見された場合は、もちろんこのかぎりではありません。早々にパートナーに共有し、問題を解決する手段を模索してもらいましょう。
また、「思っていた修正と違う・直っていない」ということもあり得ます。こうした場合、パートナーはなんらかの意図をもって、フィードバックとは異なる修正を実施しているはずです。WordやGoogleドキュメントでやりとりをしている場合は、該当箇所にコメントで修正意図を記載してもらい、修正点を改めてジャッジするといいでしょう。
公開に向け、パートナーと細かな点をすり合わせよう
コンテンツ制作はいよいよ大詰めです。この段階では、校了した原稿のCMS入稿、最終版の確認といった作業が発生しますが、細かい確認事項がいくつかあるので、注意が必要です。
以下が仕上げの段階でのポイントです。
CMS入稿をパートナーに依頼する場合、適切な自社リンク先を提示する
オウンドメディアに掲載する記事コンテンツでは、記事内に自社紹介ページやLPへのリンクなど、なんらかの導線を設置することは多いでしょう。CMS入稿もパートナーに依頼している場合、入稿作業の前に、適切なリンク先を提示しておくのが望ましいです。また、特定ページへのリンクが企画の目的になっている場合は、企画段階で提示しましょう。
自社のオンラインコンテンツを最も詳細に把握しているのは、メディア運用者です。「この記事は、このページにリンクしてください」と、適切なリンク先を提示できると、より効果的なマーケティング施策になるでしょう。
自社でCMS入稿を行う場合、記事の見栄えに配慮した原稿・画像を納品してもらう
セキュリティの都合などで、CMSの入稿権限をパートナーに開放できず、入稿作業をメディア運営者側が担う場合もあるでしょう。この場合、記事の見映えやリンク先を示した原稿ファイルをパートナーからもらうようにしておくと、仕上がりのイメージに齟齬が生まれにくくなり、また入稿作業もラクになります。
原稿と一緒に画像を納品してもらう場合、画像のファイル名やサイズ、容量なども自社のレギュレーションに沿った形に調整したものを送付してもらうようにしましょう。
はてなの場合、以下サンプルのような「納品版原稿」を提出しています。
記事公開を自社で行う場合、公開日時の共有を忘れないように
多くの場合、記事の公開日時はあらかじめ決まっています。しかし、メディア運用者が任意のタイミングで公開する場合、忘れずにパートナーに公開日時を共有しておくようにしましょう。
パートナーは著者や取材対象と「いつ頃公開です」と話している場合がほとんどです。関係者間で公開日時に齟齬がないように、認識を合わせておきましょう。
制作パートナーとのやりとりがあまりうまくいっていない、噛み合わないと感じているメディア運用担当者の中には「適切なフィードバックができていない」「構成案通りの原稿になっているかを重視してしまっている」というケースもあるかもしれません。今回紹介したポイントを実践できているか、一度振り返ってみることをおすすめします。
記事制作をしていく中で、社外のパートナーと適切なコミュニケーションが取れていると制作が円滑に進むだけでなく、フィードバックの内容がパートナー側にも蓄積され、コンテンツのクオリティ向上にも寄与していくはずです。
記事で紹介した内容は、冒頭でお伝えした通りはてなで公開中の無料資料「オウンドメディア制作パートナーとの付き合い方マニュアル」をもとに構成しています。こちらの資料では、より詳細に具体例を提示しながらフェーズ毎に解説しているので、合わせてぜひチェックしてみてください。
また、優れたパートナーが見つかり良質なコンテンツの制作フローが整備されても、なんだかコンテンツマーケティングが上手くいかないと感じるのであれば、もしかするとメディアコンセプトなど根幹に課題があるかもしれません。
はてなでは、コンテンツ制作だけでなく、メディアコンセプト設計、カスタマージャーニー作成などオウンドメディアの計画段階からの支援を行っています。ぜひお気軽にご相談ください。
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