株式会社メルカリ様が運営されているコンテンツプラットフォーム「mercan(メルカン)」。イベントレポートや社員インタビュー、会社の日常風景など多彩な記事をほぼ毎日更新されています。
ユニークなのは、メルカンの目的が"採用と社内外のコミュニケーションの促進"であること。なぜ採用のための自社メディアを開設されたのでしょうか。また、面白い記事を毎日更新できる秘訣はどこにあるのでしょうか。メルカン誕生秘話と運用体制、コンテンツの作り方や運用の成果などについて、HRグループの松尾彰大様、鈴木綾香様、広報の中澤理香様に語っていただきました。
■メルカンを立ち上げたのは自社の魅力を自分たちで伝えたかったから
左から中澤様、松尾様、鈴木様
__まずは皆さんのお仕事について教えていただけますか。
松尾 私と鈴木は人事を担当しております。
中澤 広報を担当しています。
__松尾さん、鈴木さん、中澤さんの3名でメルカンの運営を担当されているということですが、編集長は?
鈴木 編集長(仮)は松尾ですね。
松尾 (仮)ですね。メルカンを引っ張っていくメンバーを大募集しています!
__本日は皆さんにメルカン開設のきっかけや成果について伺っていきたいと思います。そもそもメルカンは一般的なオウンドメディアと違って、採用を目的にした珍しいコンセプトのオウンドメディアですよね。なぜ採用のためのメディアが必要だったのでしょう。
松尾 弊社では、エージェントからの紹介も一部ありますが、Wantedlyや自社の採用HPからのオーガニック応募やリファラル採用(社員の個人的なつながりを活用する採用手法)が大きなウエイトを占めているのです。
自社メディアを通して情報を自社発信することにより、そうしたリファラル採用を促進していきたいという思いがありました。
__そう考えるようになったきっかけは?
松尾 メルカリ自体がありがたいことに外部のメディアに取り上げられやすい会社であるということがあります。せっかく注目していただく機会が多いのであれば、自社の魅力を自分たちで伝えていくこともできるのではないかと考えたのです。
もう一つの理由は、ブランディングです。メルカリに関するコンテンツがあちこちに散らばってしまうよりも、メルカリのドメイン内で一つに集中したほうが将来の財産になりますから。
■社員紹介の記事で仕事内容の理解が進んだ
__実際にリファラル採用は増えているのでしょうか。
鈴木 絶対数はかなり増えています。またリファラル採用と直接応募を合わせた割合は、創業以来継続して8割以上を占めています。
__それはかなり多いですね!
松尾 リファラル採用でお会いする方々は最初から会社やプロダクトのことをよく理解していただけているので、お互いにマッチする確率が高い特徴もあります。
鈴木 候補者の中には、「メルカンを読んでいる」と言ってくださる方も多いんですよ。
__しかし、メルカンがなくても、メルカリさんでしたらリファラル採用に困ることもないのでは?
松尾 たしかに、メルカリには社員紹介からの採用を促す仕組みやカルチャーがあります。
しかし、どうしても紹介者と同じ職種の人に偏りがちですし、メルカリではその方にあったポジションを用意できないということも起こりはじめました。
そういうとき、たとえばメルカンで社員紹介の記事があれば、あらかじめ仕事内容やプロダクト、会社の理解にもつながります。
鈴木 メルカンは社内報のような役割も果たしています。入社やその手前の入口としてのきっかけにとどまらず、入社してからの理解という意味でも、いい情報の共有サイクルができていると思います。
__メルカンが更新されたことを社内に伝える仕組みも?
中澤 弊社はSlackを使っているのですが、全社員がいるチャンネルがあるので、そこで「本日のメルカン」として、更新情報を流しているんですよ。
松尾 ただ、記事を最初から社内向けに作ることはありません。それはあまりクールではないと思っていて、つねに外に発信することを意識しています。面白いものなら社内外関係なく誰でも見てくれますから。
■連載記事を作ることで高い更新ペースを維持
__たしかにメルカンは採用のためのメディアでありながら、誰が読んでも面白い記事がそろっていますよね。そのコンテンツについてもお聞きしたいと思います。毎日1~2記事がアップされていて、その更新頻度の高さには驚かされるのですが、大変ではないですか?
松尾 メルカンの企画段階から更新頻度は特に大切だと考えていたので、そこには力をいれています。無理なく、しかし閑散感のないメディアを作るためには連載を作ることが重要で、連載が更新頻度を担保してくれるのです。
中澤 毎日更新のため、私は「#メルカリな日々」という連載を毎日書いています。
__「#メルカリな日々」のゆるい空気感がいいですよね。
中澤 ありがとうございます。実はメルカンをはじめる前からトレタさんの「トレタブログ」が好きで、特に「毎日ひとし」という連載がよかったので参考にしています。
松尾 僕も大好きです!
中澤 で、あれいいよね、ああいうのやりたいよねって話になって……。トレタさんに勉強させてもらいに伺って、「毎日ひとし」を書かれているPRの田さんに「毎日ひとしってよく本当に毎日更新できますよね。どうやって書いてるんですか?」と聞いたら、「数分でサッと書いてる」とおっしゃられて(笑)。あ、そういう風にしてるんだって。
松尾 だから「#メルカリな日々」に関してはノーチェックで掲載しています。
中澤 無理なく続けるために、忙しいときははてなブログのスマートフォンのアプリだけでササッと書いたりとかもしていますよ。
松尾 そういう書き方ができるのも、はてなブログMediaならではですね。
■記事公開のタイミングをコントロールして効果を最大化
__運用体制について伺います。基本的には松尾さん、鈴木さん、中澤さんの3名で運営されているのでしょうか。
鈴木 そうですね。といってもかっちり決まっているわけではなく、唯一ちゃんとやっているのは週1回の企画会議です。私たち3人と総務のメンバー1名、それからグループ会社のソウゾウのメンバー1名の5名集まって、今週はどんな記事を更新するか考えています。
中澤 基本的には、運用メンバーだけじゃなく、社員が各自書くような体制を作っていきたいと思っています。
松尾 運用メンバーしか書かない状態だと限界がくることはわかっているので、いろんな人に書いてもらいたいですね。社員のアウトプットの場としても活用しはじめています。
鈴木 「メルカンに記事を書きたいです」とか、「このネタ、メルカンにどうですか?」って言ってくれる社員も多いんですよ。
中澤 誰でも書いていいメディアとして、社内のメルカン認知度も上がっていると感じています。
__企画会議ではどんなことを話し合われるのですか?
鈴木 企画出しのフォーマットをもとにして、この曜日にこういうのを出したいよねとか、プレスリリースに合わせてこういう記事を出そうとかですね。
__記事のタイミングも計算されているのですか?
鈴木 そうですね。タイミングとテーマは意識していますね。会社や業界の動きに合わせてコンテンツや関連する求人の募集ページなどを公開するようにしています。
中澤 たとえばメルカリからmerci boxという人事制度に関するプレスリリースを出したときは、同時に産休や育休をとった社員のインタビュー記事をメルカンで公開しました。
松尾 メルカンをリリースしたときもそうでしたね。実はローンチが予定よりもちょっと遅れたのですが、ちょうどそのタイミングで弊社の取締役がイベントに登壇する機会があったんです。
なので、そのタイミングに合わせてメルカンをリリースしたところ、スピーチでメルカンを話題を出してもらえて、それがメディアにニュースとして掲載されました。そういうコントロールができるのも自分たちのメディアだからこそですね。
■社員が自主的に記事を書くために運用メンバーがサポート
__先ほど社員の皆さんが自主的に記事を書いてくれるようになったというお話がありましたが、そうした雰囲気はどのように作っているのでしょう。
松尾 継続して言い続けることと、ネックになっていることを把握して適切にケアすることですね。何を書けばいいかわからないという人もいるので、記事のテーマなどは私たちがサポートしてあげれば自走してくれると思います。
中澤 一回書いてみると読まれる達成感があるので、またやろうと思ってもらえることが多いです。
鈴木 弊社の経営陣もメンバーも、積極的にソーシャルメディアでシェアしてくれるんですよ。
__それは心強いですね! 社員が書いた記事は松尾さんがチェックされるのですか?
松尾 そうですね。数字や戦略に関わる部分があれば、確認を経て公開します。NG表現や記事の方向性自体を変えるようなときも私が見ています。
ただ、メルカンっぽく書いてねということはありません。その人らしさを残して、きれいに書き過ぎないことが大事なんです。
■はてなブログMediaを選んだ理由はインターネット業界との親和性の高さ
__メルカンにはてなブログMediaを選んでいただいたのはなぜでしょう。
松尾 メルカンは優秀なメンバーを採用する目的ではじまりました。その点では、はてなという会社がインターネット業界と親和性が高いことが大きかったです。業界で働いている方からの信頼があるんですよね。
それから、人的コストと運用コストをなるべくかけたくなかったので、SaaS型のCMSが望ましかったこともあります。いろいろ検討した結果、はてなブログMediaがベストな選択肢でした。
__導入するポイントとしてどんなことを重視されたのですか?
松尾 更新のしやすさや、改修や保守の手間、安定性、SEO、話題性、ドメインをメルカリにできるかなどを総合的に検討しました。はてなブログMediaでメルカリのような使い方をしているオウンドメディアって当時はまだ少なく、面白いと言ってもらえたのが大きかったですね。
中澤 SoundCloudなどの外部メディアをきれいに埋め込められたのもよかったです。
__既存のCMSとくらべてよかった点などはありますか?
松尾 運用する上で、非常に使いやすく、メンバーの誰でも簡単に使えるというメリットは大きいと感じています。
開発中や運用を開始してからも、新しい機能が随時追加され、その点は期待していた通りでしたね。
__メルカンがスタートして2ヶ月、すでに記事が人気エントリーに入るなど人気になっています。
中澤 最近だと「広報未経験者がメルカリ入社6ヶ月でMVPをもらった話」に、はてなブックマークが集まりましたね。社員から感想のメッセージが届いて嬉しかったですね。
松尾 ああいった記事があることで、潜在的な候補者に見てもらえる可能性がグッと上がるんですよ。すぐに効果を出そうとするのではなく、長い目で見ていきたいですね。
■拠点・部署・職種をまたいだ理解が進んだ
__すでに多くの方に読まれているメディアになっていると思いますが、周囲からの反響はいかがですか?
松尾 拠点・部署・職種をまたいだ理解が進んでいると思います。もともとメルカリは社内のプロジェクトや数字の透明性が高い組織なのですが、一方で会社規模が大きくなってくるとわかりにくくなる可能性も出てきます。メルカンを通じて、そこがフォローできたと感じています。
鈴木 採用においても候補者の方から「見ました」と言われることが増えています。メルカンに社員が出ているからか、「今日は○○という者とお会いいただこうと思います」とお伝えすると、「ああ、知ってます」という反応が返ってくるんです。
先に顔を知っていたり、人となりを知っていると、候補者の方も親しみを持ってくれますし、自分を出しやすくなりますよね。
松尾 私はmercan.fmというポッドキャストをやっているのですが、内定者が会社にきたときに話しかけると「あっ、その声は!」って言われるんです(笑)。そこからコミュニケーションが生まれて一気に距離が縮まることも多いです。
■今後は他社とのコラボやゲストの登場も。コンテンツの拡充を目指す
__今後の展望についてはいかがでしょうか。
松尾 まずはコンテンツの安定的な拡充を目指します。今は月に40本弱のペースですが、それを安定稼働させたいですね。
コンテンツの幅も広げていきたいです。メルカリのメディアではありますが、他社とコラボしたり、ゲストを呼んだり。そして、社員の採用、定着、活躍につながる実績を着実に積み重ねていきたいと思います。
中澤 メルカンには専任のメンバーはいなくて、みんな他の業務をしつつメルカンもやっているので、いかに効率よく質の高いコンテンツを作れるかというのも今後の目標になると思います。
__ありがとうございました!
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ゆるい空気感と高い更新頻度が魅力のメルカン。開設3ヶ月にしてIT業界内外から注目を集める理由は、しっかりとした運用体制と一貫したビジョンにあると感じました。
はてなブログMediaを利用したオウンドメディア構築をお考えの企業様は、以下よりお気軽にお問い合わせください。
企画・制作:はてな
執筆・写真:山田井ユウキ